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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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339/917

◆その338 ミケラルドの怒り

 あっという間にエメリーを(かば)うようにサブロウの前に立ったミケラルドが、サブロウに鋭い視線を向ける。


「酷い事するじゃないですか」

「ふん、見てわからぬか? 幾分(いくぶん)手心(てごころ)を加えておる」


 それを聞き、ミケラルドは横目に映る勇者エメリーの無残な姿を今一度見る。

 顔は変形し、手や腕は(いびつ)に曲がり、全身に無数の切傷。

 目を(そむ)けたくなるような事実が眼下に広がり、それを振り払いながらサブロウに視線を戻す。


(酷い……が、まだ死んでいない。だからこその不可解。闇ギルドが勇者(エメリー)にここまでする理由は何だ? 戦時下にあってこれだけ手間暇かけてるんだ。殺そうと思えばいつでも出来たはず。だが、それをしなかった理由は一体? ……いや、答えを出すのは後だ。今は目の前のサブロウに対処する事だけを考えろ)

「おぉ怖い怖い。何という目だ。がしかし、お主が勇者に肩入れしている事は間違いではなさそうじゃのう」

「目的は何だ?」

「お得意の催眠術(、、、)でも使って聞き出せばよかろう。まぁ、ワシはここで消えさせてもらうがの」

「出来ると思っているのか?」


 ミケラルドの魔力が静かに、しかし確かに膨れ上がる。

 その魔力が気付けとなったか、剣聖レミリアが目を覚ます。


「ミ、ミケラルドさん……」

「動けますか?」

「は、はい……!」


 よろよろと立ち上がるレミリアが、ゆっくりとエメリーに下まで歩く。


「出来ればエメリーさんを連れてオードの町へ」


 悔しそうな表情をしながら、レミリアがエメリーを担ぐ。

 持っていたテレポートポイントを使い、消えて行く二人を見て目を丸くするサブロウ。


「転移魔法……やはり法王国であげられた情報は正しかったか。ぬかったわ」

「エメリーさんを痛めつける前に探しておけばよかったと?」

「ちと急ぎじゃったが、余裕はあったからのう」

「だが、今はない」


 言い切ったミケラルドの言葉は正しかった。

 事実、サブロウはミケラルドの【威嚇】によって拘束されていたと言っても過言ではない。


(絶対強者が使う【威嚇】がここまでとはのう。気を抜けば腰すら抜かしてしまうじゃろうに。まったく、こんな化け物がいるならばワシもそろそろ引退かのう……)


 ミケラルドがこれ以上の情報収集は難しいと見た時、攻撃に移ろうとした。

 だが、超高速で迫る魔力がそれをさせなかった。


「っ! くっ!」


 咄嗟に腕を交差させ、防御の姿勢をとったミケラルド。

 大地が(えぐ)れ、土煙が舞い上がる。それを機と見たサブロウが後方へと駆け始める。


「逃がすかっ!」


 ミケラルドが動くも、新たに飛んで来た魔力弾がそれをさせなかった。


「くそ、どこからっ!?」

「ワハハハハハハッ! ワシが消えると言ったら手段があるという事じゃ! 覚えとくんじゃな! 化け物めっ!」


 土煙の隙間から、豆粒のように見えていたサブロウが、姿と魔力を消す。

 追跡を断念するしかなかったミケラルドは、腕を振り払って土煙を吹き飛ばす。

 サブロウが逃走を終えた瞬間、ミケラルドへの攻撃も止んだからだ。

 ミケラルドが周囲を見渡すも、それを見つける事は出来なかった。


(【探知】に反応しないって事は地下か上空か。だが何だ? リィたんに近づく強い反応がある。リィたんも気付いてるはず。これは一体?)


 ミケラルドを狙ったのではない、明らかに別の反応。警戒こそするものの、当該人物を見つけられない。

 すんと鼻息を吐いたミケラルドが、肩を落とし騎士団の下へ戻ろうとした瞬間、それはまたやって来た。


どーん(、、、)♪」


 かつてない勢いで向かってくる魔力。

 背に迫るソレは、いかにミケラルドと言えどただでは済まない威力を有していた。

 だが、ミケラルドはこれを予期していた。

 即座に振り返り、ソレを蹴り上がると共に、魔法の使用者を特定したのだ。

 睨むべき敵は空にいた。

 不敵な笑みをし、眼下のミケラルドを見下すように見るのは、かつて会った男。


「出たな、ガキんちょ……!」


 上空からゆっくりと降下して来る男の名は【パーシバル】。

 冒険者ギルドを離れ、闇ギルドに渡ると予想されていた男である。

 剣神イヅナと同じくSSS(トリプル)の称号を持つ、若き鋭才(えいさい)


「あれれ? 気付かれちゃったかー」


 無邪気な笑みに染められた表情は、奇襲が失敗したところで変わる事はない。


「降りて来いよ」

「久しぶりだね、ミケラルドさん♪」

「降りて来いって」

「この魔法凄いでしょ? 【エアリアルフェザー】っていうんだ」

「なぁ、降りて来いよパーシバル」

「で、さっきのがアサルトマジックっていってね。魔法じゃなく魔力だけで撃てるロングレンジの技術なんだ♪」

「仕方ない、じゃあおじさんがそっちに行こう……」

「っ!?」


 一向に会話が成立しなかった二人だったが、パーシバルの口を閉じさせたのはミケラルドだった。そう、ミケラルドは(いか)っていた。

 大事な仲間であるエメリーとレミリアが傷つき、重傷である。

 そうしたはずのサブロウは逃げ、それを手伝ったのがパーシバル。戦争に死は付き物だが、ミケラルドは今回の戦争で身内を失う予定はなかった。だからこそ、サブロウに怒り、死に瀕するまで追い込まれたエメリーに申し訳がなく、何より自分の浅はかさに怒っていたのだ。

 大地が(きし)み、ミケラルドが立っていた一帯が宙に浮かぶ。

 不愉快そうな顔を見せたパーシバルは、向かい合ったミケラルドを睨みながら言った。


「凄いね、【サイコキネシス】で地面ごと浮かぶなんて」

「闇ギルドに入って知らなかったんだろ。最近大流行してるんだよ、この技」

「頭だけは相変わらずハッピーみたいだね」

「何故サブロウを逃がした? 実力を考えればお前が足止めを買って出る程じゃないだろう?」

「あのお爺ちゃんは何だかんだでギルドに長いらしくてね。加減や調整が上手くて重宝されてるんだよ。あそこの拳神(おばあちゃん)とかだと、何でもかんでも壊しちゃうらしいし」

「なるほどね」

「それに……僕が足止めなんかするはずないだろう?」


 パーシバルがニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべた瞬間、ミケラルドの後方で轟音(ごうおん)が響いた。


「援軍は僕だけじゃない」


 全ての種明かしをするかのように言うパーシバル。

 要塞の壁を突き破り土煙があがる。

 中から出て来たのは……ミナジリ共和国最強の矛――リィたんだった。


(リィたんが、吹き飛ばされた!?)


 血の交じった唾を吐いたリィたんが見据えるは……新たなる強者。

次回:「◆その339 詰めの一手」

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[一言] ここで実行犯たたかないとか展開の作り方下手でしょ
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