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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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338/917

◆その337 闇ギルドの脅威

今回は、少々表現がえぐいかもしれません。控えめにしたつもりですが、予めご了承くださいませ。

「ぬぅん!」

「くっ! 流石は表の世界でSS(ダブル)になるだけはある!」


 鬼剣で拳鬼の身体を吹き飛ばした剣鬼オベイル。


「そりゃこっちの台詞だ。普通なら数十メートルは吹っ飛ぶのによ、完全に流されちまってる。かなり鍛えこんでるじゃねぇか。闇ギルドってのはお前みたいのばっかりなのか?」

「私など末席の一人に過ぎない」

「上から数えた方が早そうだが?」

「確かに、サブロウ殿とナガレ殿はそう言えるだろう」


 オベイルがサブロウと戦う勇者エメリーと剣聖レミリア、拳神ナガレと戦う剣神イヅナをちらりと見る。


(一人は前にミックが報告してたやつと風貌が一致するな。あっちはギリギリの戦闘をしている。しかしおかしい。あのサブロウって男、どこか手を抜いているようにも見える。対して爺の相手はまた化け物だな。拳に交ぜる虚実の数が尋常じゃねぇ。ま、それを受け切る爺も爺で十分化け物か)

「よそ見とはいただけないな! はっ!」


 一瞬で迫った拳鬼の攻撃は、オベイルの胸元へ決まる。

 しかし、オベイルはそれを待っていたかのようだった。


「何だこの鎧は……! まさかっ!?」

「おうよ、出来たばかりのオリハルコンの鎧、だ!」


 オベイルはあえて鎧の丈夫な箇所で受ける戦闘法を選んだ。

 隙を見せたのは拳鬼を誘い込むためだったのだ。

 拳鬼が両手で受けた攻撃は非常に重く、腕に鈍痛を残した。


「ぐっ! ……その鎧は情報になかったな」

「新情報だろ、くれてやる」

「残念、製作者の名が聞けると思ったのだが」

「誰が言うかよ」


 オベイルが鼻息をすんと吐く。


「まぁ、大方予想はつくが」

「なら探りを入れる必要はないだろうが」

「こちらは情報の正確性を重視しているのでな」

「そりゃ良い情報ありがとよ」

「サービスだ」

「……んだよ、回復したのかよ?」


 拳鬼の腕に震えが見えなくなり、オベイルはそれを指摘したのだ。


「ほぉ、よく気付いたな?」

「あからさまに時間を稼いでたからな。何だそりゃ? 魔法じゃねぇな?」

「言うと思ったか?」

「サービスはどうした?」

「もう終わった」


 ニヤリと笑い合う拳鬼と剣鬼。

 二人が激しくぶつかり合う攻撃の余波は、エメリーとレミリアの下まで届いていた。


「はっはっはー! 爆連打破(ばくれんだは)っ!」


 サブロウから無数の掌底(しょうてい)が放たれる。

 二人はそれを全てかわすしかなかった。一度(ひとたび)それを受ければ――、


「くっ!」

「レミリアさん!?」


 余りの衝撃により、一瞬くの字(、、、)になったレミリアが吹き飛ぶ。

 サブロウの実力は二人を優に凌駕していた。二人の内一人でも欠けてしまえば、残ったエメリーは多くの攻撃を受ける事となる。


(ここじゃ……!)


 サブロウがここぞとばかりに手数を増やす。


「だだだだだだっ!」


 サブロウによる正確無比な拳の嵐。その攻撃はエメリーの顔をかすめ、腹を打つ。当然その中にある虚実。エメリーの速度はサブロウに追いつけるものではない。エメリーは虚の拳を可能な限り切り捨て、実の拳だけを何とか受けた。


「っ! そりゃ!」


 殺意溢れる拳が狙うは、エメリーの二つの眼球。


「っ!?」


 身を(よじ)りかわすも、サブロウの攻撃が止まる事はない。

 エメリーの動きに合わせ、滑り込むようにエメリーの背中へ移動したサブロウの五指(ごし)が、頭部を打つ。五点の攻撃と中央の掌底が、エメリーの脳に大きなダメージを残す。


「……ぁ?」


 直後、エメリーの鼻から、目から。耳からどろりとした血液が流れる。

 小円で反転し、エメリーの正面へ回ったサブロウの肘鉄がエメリーの胸部を穿つ。


「……お……かっはっ!?」


 巻き散らす吐しゃ物と血液。エメリーはその場に倒れ、溺れているかのようにもがき苦しんだ。事実エメリーは溺れていた。自らの体液で喉を詰まらせ、呼吸する事が出来ないのだ。

 闇人(やみうど)サブロウは、顔色一つ変えずにエメリーに言う。


「ちと地獄をみてもらうぞ」


 サブロウはエメリーに近づき、まずは首元にあった右手を()け、それを折った。


「っ!? ~~~~~っっ!!!!」


 悶絶しビクンと跳ねるエメリーの勢いを利用し、肩を外す。

 次に左手へ。のたうちまわるエメリーの両手が使い物にならなくなった時、ようやくレミリアが戦線に復帰する。


「くっ! はぁあああっ!」


 斬撃を飛ばしたレミリアだったが、サブロウはそれをいとも簡単に()けてしまった。

 未だ騎士団を相手にするリィたんとジェイルは、ここへ助けには来られない。

 だからこそレミリアは決死の覚悟でサブロウへ挑んだ。


「だぁあっ!」


 上段からの変則の突き。


「まだ下方への力が残っている。雑だ」


 サブロウは上からそれを叩き落とし、レミリアの腹部を蹴り飛ばす。

 矢の如く勢いで飛んだレミリアは、朦朧とした意識の中で思った。


(やはり……私は弱い……!)


 腹部への痛み、それ以上の悔しさから涙を流すレミリア。

 大地へ剣を突き立てブレーキを掛けるも、その間、サブロウは次の行動を起こしていた。


「さて」


 まず行われたのは足の健の切断。


「芋虫の完成じゃな」


 淡々と言うサブロウがエメリーに跨る。

 マウントポジションをとったサブロウの拳が、エメリーの顔にめり込む。

 声も息も出来ぬ状態から、サブロウは何度もエメリーの顔を殴った。

 エメリーが意識を失えば――、


「寝ている場合ではないぞ」


 気付けの如く頭を叩きエメリーを叩き起こす。

 反射行動か痙攣(けいれん)か、それとも震えか。ピクピクと反応しか出来ないエメリーは、ただ次の衝撃を覚悟するしかなかった。そう、涙を流しながら。

 レミリアが救援に駆けつけるも、やはり先程と同様に簡単に(さば)かれ、大地に叩き伏せられる。


「続きだ」


 サブロウの強烈な殺意と威圧は、ついに勇者の心を折る。

 ガタガタと震えたエメリーは失禁し大地を濡らし、サブロウが一歩進む毎に小さく、掠れた悲鳴をあげた。

 その時、サブロウの足がピタリと止まったのだ。


「くっ!? もう来おったか、化け物めっ!」


 サブロウがバッと振り返ると、そこには怒りを露わにしたミケラルドが迫っていたのだ。

次回:「◆その338 ミケラルドの怒り」

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― 新着の感想 ―
[一言] ミケラルドをたたせる為とはいえやりすぎでは?逆効果としか思えないです
[良い点] 読みやすく面白い! [気になる点] 勇者、弱すぎません? ヘイトが(笑) [一言] 盛り上がってきた! 主人公の怒りに期待! 
[一言] いいから皆殺しでおわらせろよ
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