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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その32 はじめてのおかいもの

 現在俺たちの手持ち残額は、まとめると、金貨二十四枚、銀貨三枚、銅貨四枚だ。

 たった二日で二十四万円の稼ぎ、と考えれば良い商売だが、まだまだ稼ぐ余地はあると思う。

 そういえば、昨日ジェイルが寂しそうにしてたっけ。金貨四枚分くらいは調味料でも買ってってやるかな。

 因みに、俺たちを襲ってきた冒険者からいただいた武器に関しては、闇空間の中だ。

 何故なら、その武器に見覚えがある冒険者に出会うとまずいからだ。当人たちの記憶をいじったとしても、当人たちが使っていた武器に心当たりのある冒険者がいるかもしれない。これはジェイルのアドバイスだった。

 流石ジェイルだよな。人界での生活が長いだけある。


「いいかリィたん? 一人金貨十枚までだ」

「ふっ、任せるのだ」


 魔力が充実してそうな武具店に入ると、俺はリィたんに金貨十枚を渡した。するとリィたんは、ウキウキと顔を綻ばせながら店内を駆けて行ったのだ。

 確かに、買い物はこれが初めてだから仕方ないけどな。

 さて、俺は何を買うべきか。

 最低限買わなくちゃいけないのは武器なんだけど、見たところ目を引かれる武器がない。

 現在はまだ投資の段階だ。お金を稼ぐ面で、冒険者は中々に稼ぎがいい。ランクBかAくらいまでは冒険者で商売の元手を稼ぐのがいいだろう。

 だからこそ見栄えは重要になる。

 ただの町民と同じような服装をしていたら、当然舐められてしまう。有名冒険者が商いをする商店が理想だ。

 ネームバリューを使いつつ、資本金を増やす。これが当面の目標である。

 適当な短剣でも腰に下げようとか思っていると、日本人の俺が目に留まるような武器を見つけた。


「へぇ、打刀(うちがたな)だ。こっちにも刀の文化があるのか」


 鞘付きで金貨三枚って事は粗悪品なのだろうか?

 しかし気になる。もしかして俺の他に転生してきた人間がいるのかもしれない。

 まぁいい。どうせほとんど使う事はないのだ。腰に下げる分には目立つだろう。

 ベルト付きフットポーチもいいな。後は、鉄製の手甲と脛当てくらい買っておくか。

 打刀が金貨三枚。手甲が金貨三枚。脛当てが金貨三枚。ベルト付きフットポーチが金貨一枚で、丁度金貨十枚。


「うん、こんなもんかな」

「毎度ぉ」

「あ、すみません。この打刀って誰が打ったかわかります?」

「ん? あー、これね。ギャレット商会から流れてきたんだけど扱いにくくてね、処分に困ってたんだよ。流石に打った人はわかんねーな。詳しく知りたければ、ギャレット商会に問い合わせてくれ。といっても、あそこはリーガル国の首都にあるから、大変だろうけどな」

「わかりました。ありがとうございます」


 ふむ、という事は、やはりこの世界で刀は珍しい武器という認識で間違いないようだ。

 何の特徴もない俺がこの世界に来てしまったのだ。誰がこの世界に来ても、驚いてはいられない。

 店の外でリィたんを待っていると、ほっこりとした顔で、彼女は出て来た。


「お、おぉ……」


 その手に持つは身の丈以上の得物。

 驚いたのは、それ以外に何も買っていないという摩訶不思議な状況。


「リ、リィたん、何買った……の?」

「ふっ、これだ!」


 そそり立ち黒光りする中央の槍。

 刃物すら粉砕しそうな柄先の斧。その逆側にある鋭利なカギ爪。

 木材を一切使用していてない柄の金属色たるや、まさにファンタジー。


「ハルバードかぁ!」


 ハルベルト、ポールアックスとも呼ばれる長柄武器。

 突いて良し、斬って良し、引っ掛けて良し。柄の末端も尖っており、凶器としては一級品だ。


「ふふふ、どうだ! カッコいいぞ!」


 そんな豪快に言うリィたんの方がカッコいいのだが、言うと調子に乗ってハルバードを振り回しそうだからやめておこう。


「いくらしたんだ?」

「本当は金貨十二枚だったのだが、店主が値引きしてくれたぞ!」


 ほぉ、やっぱり美人ってのは得だな。いや、もしかしたら無邪気な部分に惹かれたのかもしれないな。

 まぁ俺には情報をくれたし、別に俺に値引きしてくれてなくても気にはならない。というか俺が店主でも、リィたんみたいな美人だったら値引きするしな。

 柄に頬ずりするリィたん超可愛い。

 その後、俺たちはジェイルのための調味料を買い、先程冒険者ギルドで受けたランクDの依頼を消化しつつ、ナタリーの家に戻った。

 ランクDの依頼四件はホブゴブリン討伐三匹、スライマウンテン討伐一匹、アサルトスネイク討伐一匹、バイコーン討伐一匹だ。

 狡賢い猿の異名を持つ黒毛のスライマウンテンから【交渉】。

 全長十五メートルはあり擬態能力を備えた緑色の蛇、アサルトスネイクからは【擬態】。

 巨大な二本角を持つ茶毛の大牛、バイコーンからは【突進力】。

 猿型のモンスターなだけあって、人間相手に使えそうな能力だ。もしかして商売にも使えるのかもしれない。

 今日の買い物の時に使いたかったが、未来が読める訳じゃないし、それは仕方ないだろう。


 ナタリーの家に戻ると、ジェイルがお茶をすすってた。

 相変わらず顔が怖い。


「戻ったか、ミック。ほぉ、武器を買ったのか」

「うん、まずは形からですね。武器も持ってないやつに、大口の指名依頼とか入らないだろうし」

「確かにそうだな。リィたんはハルバードか」

「そうだ。どうだ、似合うかっ?」

「とてもよく似合っている」

「そうかそうか!」

「それでジェイルさん、あっちの方(、、、、、)、上手くいってます?」

「うむ、ナタリーが沢山協力してくれてな。順調だ」


 テーブルを囲むナタリーの方を見る。

 見れば所々に擦り傷が見受けられる。


「ナタリー、ほら手を出して」

「え? こ、こう?」

「ヒール」


 ナタリーの傷がみるみるうちに回復していく。

 ナタリーはそれを気持ちよさそうに見守った。

 クロードとエメラは、俺の光魔法に驚いているようだった。


「えへへ~、ありがとうっ」

「どういたしまして。なら明日の早朝、それを見て、マッキリーに行こうか、リィたん」

「うむ、そうしよう」

「えーっ? ミック、マッキリーに行くのっ?」


 そんなナタリーの声に反応してか、エメラが聞く。


「まぁ、もしかしてもうランクDに?」

「はい」

「これは……驚きましたね」


 クロードも驚き、そして何故かナタリーはドヤ顔をしていた。

 これは、俺が信用されてるって事でいいんだよな? うん、そう思う事にしよう。

 さぁ、明日は初めてのダンジョン探索だ。

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