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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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313/917

◆その312 ミケラルド誕生秘話

「ミック? あぁ、ミケラルドの愛称か。くだらんな」


 スパニッシュがすんと鼻息を吐き、頬に拳を当てる。


「いいから答えて」


 毅然(きぜん)とした態度でナタリーが言い返すと、スパニッシュはじっとナタリーを見返した。


「あの時、泣きながら震えていた者とは思えぬ態度だ。とはいえ、屈強な龍族に守られているのであれば気も大きくなろう」


 すると、リィたんが目を鋭くさせ言った。


見縊(みくび)るな。私がいなくともナタリーはそんな事はしない」


 固く口を結んだナタリーが再度言う。


「答えて。ミックは一体どうやって生まれたの?」


 スパニッシュは足を組み替え、少し考えた素振(そぶ)りを見せた後、静かに話し始めた。


「……寄生転生とは、魔力と肉体を融合させ、そこへ魂を呼び寄せる秘術だ」

「では、肉体は吸血鬼のものか?」


 ジェイルが聞く。


「違う。肉体は別のモノだ。種族の割り当てにはその種の血を使う。奴の寄生転生には我が血を使っている。従って、ミケラルドは(まご)うことなき我が息子、という事になる」

「魂がミックのものなら、原因は魔力及び肉体にあるという事か……」

「原因?」


 リィたんの言葉に反応したスパニッシュの片眉が上がる。


「こちらの話だ」


 対してリィたんがその情報を明かす事はなかった。


「それで、魔力は何を使った?」


 再びジェイルが聞く。


「我が魔力……と言いたいところだが、それでは(いささ)か心もとない。他の種族を従えるために必要なのは、何より強大な魔力。当然、それだけの力を持った遺物(レリック)を使った」

遺物(レリック)?」


 リィたんが眉を(ひそ)める。


「知らぬか? 魔族四天王には、その長たる(あるじ)から、秘宝(アーティファクト)を賜っている事を」


 それを聞くや否や、ジェイルが目を見開く。


「【不死王リッチ】が持つと言われる【黄昏の霊玉】、【魔女ラティーファ】が持つ【地獄の水鏡】、【牙王(がおう)レオ】が持つ【冥府の鎌】、そして【吸血公爵スパニッシュ】が持つ――――」

「――――【闇の勾玉(まがたま)】」


 ジェイルに続けたスパニッシュの言葉は、ジェイルを沈黙へと追い込んだ。

 口を手で覆うジェイルにナタリーが聞く。


「ど、どういう事……?」


 ジェイルは答えない。顔を歪ませながら答える事が出来ない様子だ。

 ナタリーがリィたんに顔を向ける。


「……秘宝(アーティファクト)とは、人や魔族の手によって作られた強力な人工物の事。私の持っているハルバードやナタリーの首飾りも秘宝(アーティファクト)と言える。そして、その秘宝(アーティファクト)の製作者が死ぬと、それは遺物(レリック)となる」

「何が変わるの……?」

秘宝(アーティファクト)としての枠から外れる。能力が向上したり、内包する魔力が増大する。平たく言えば、秘宝(アーティファクト)の能力が一段階上がるという事だ。そして、その秘宝(アーティファクト)を作ったのは、【魔王(、、)】」

「え? え? 何で? 魔王は今、休眠期なんじゃ……?」


 ナタリーの疑問は(もっと)もだった。

 すると、ジェイルがようやく口を開いた。


「魔王の言う休眠期とは転生の事。【勇者】の死と共に【魔王】は眠りにつく。だが、それは文字通り生まれ変わるという意味なのだ」

「つまり……魔王が一回死んだ事になるって事……?」


 ナタリーの疑問にスパニッシュが答える。


「左様。だから魔王陛下は休眠期に入る直前、我々にそれらを託した」

「狡猾さは正に魔王だな」


 リィたんがスパニッシュを睨みながら言った。


「あの方の深淵は誰も覗けはしない」

「じゃ、じゃあミックの寄生召喚に使われた魔力って……」


 ナタリーが自身の肩を抱く。


「【闇の勾玉】を使ったという事か。なるほど、吸血公爵スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエルならではの考えだな」


 リィたんの言葉を受け、スパニッシュが天井を見上げ言う。


「出来たのは確かに優秀な子供だった。生まれて一年も経たない内に、我と互角に戦える実力。そう、優秀過ぎるくらいだ」


 そんなスパニッシュの反応をよそに、ジェイルとナタリーが見合う。


(では、ミックの中にいたアレは魔王の残留思念?)

(馬鹿な、魔力に思念が宿る事などある訳がない)

(では一体?)


 ジェイルの視線の後、リィたんがスパニッシュに聞く。


「では肉体は? 魔王は休眠期に入る際、魔力の糸で紡がれた(まゆ)に閉じ籠ると聞いた。その肉体を使う事は出来ないだろう」


 するとスパニッシュの視線がジェイルへと移る。


「【リザードマン】……今でこそ【牙王(がおう)レオ】の指揮下に入っているが、先の時代では我が陣営にいた種族だったな」

「それがどうした」


 ジェイルが身構えながら聞く。


「【勇者殺し(、、、、)】の異名を持つお前が、これだけ言ってまだわからぬか?」

「「っ!?」」


 直後、ジェイルとリィたんが気付く。

 遅れるナタリーが慌てて二人に聞く。


「ちょっと! どういう事!?」

「知っているかナタリー? 勇者レックスの墓はな、存在しないのだ」


 リィたんが、


「魔族として最大の戦果。当然、この私が魔界へ持ち帰った」


 ジェイルが言う。

 そして、スパニッシュがニヤリと笑う。


「リザードマンであるジェイルが倒した勇者レックスの遺体は、魔王陛下へ献上された。が、それを見、満足した魔王陛下がその遺体を下賜(かし)くださったのは当然、リザードマンを抱えていた我が陣営……ハーフエルフの小娘、わかるか? 奴の希少価値が。優秀な血統、最強の魔力……そして、神が与えた究極の肉体」


 ナタリーがゴクリと唾を呑み、掠れた声で言う。


「勇者……!」

次回:「◆その313 魔王×勇者×おっさん=?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王×勇者はよくわかるライバルだったり恋人になったり色んな作品で使われる技法だね。 魔王×勇者×おっさん!?先生異物が混じってます(笑)
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