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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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312/917

◆その311 ナジリの動向

 ミケラルドと聖女アリスが【オリハルコンズ】を結成した頃。

 薄暗い空を駆ける二人、リィたんとジェイル。

 そして一頭の馬に跨り走る少女ナタリーがいた。


「見えた、デモンズツリー(、、、、、、、)!」


 シェルフ産の馬――フェアリーホースの馬上からナタリーが指差しながら叫ぶ。

 歪な闇の木――デモンズツリーの前でホッと一息吐くナタリー。


「まさか自分から来る事になるなんてね」


 そう、ここはミナジリ共和国から離れた遠い魔界の地。


「ミックのためだ、仕方ない」


 リィたんが淡々と言い、ナタリーに手を貸し馬から降ろす。


「ホントに、困った人だね~」


 言いながらナタリーは、フェアリーホースを労うように撫でる。


「ナタリー、本当にこれ以上先に進む気か?」


 ジェイルが聞く。


「進む気じゃなかったら、そもそも付いて来ないよ」


 真剣な顔つきでナタリーが返しながら、テレポートポイントを使いフェアリーホースを転移させる。

 すると、ジェイルの肩にリィたんが手を置いた。


「ナタリーも覚悟の上ここまで来ているのだ。これ以上は無粋だ」

「……わかった。我々が全力で守ればいいだけの話だ」


 ジェイルがそう言うも、リィたんはハルバードを肩にトンと置き、静かに言った。


「何、吸血鬼の跳ねっ返り如き、私の敵ではない」


 ニヤリと笑うリィたんを見た二人は、互いに見合ってから再度リィたんの背中を見た。


「いつも以上にやる気いっぱいだね」

「何たってミックのためだからな」

「それもそうか」


 ジェイルの補足にナタリーが納得し、二人は歩き始める。

 目指すは魔族四天王スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエルの屋敷。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「何とも……没落した名家という感じだな」

「私がここにいた頃とは大違いだよね」


 ジェイルと、ナタリーが屋敷を見上げ零す。

【歪曲の変化】を使い未だスパニッシュとの付き合いがある魔獣種のドッグウォーリアを装っていた三人だが、ここまでの道中他の魔族と会う事はなかった。


「全体的に……寂れてる?」


 ナタリーの言葉は(もっと)もで、二人が廃墟と見紛う屋敷からは、かつての威光を目にする事は出来なかったのだ。


「行くぞ」


 リィたんがさも平然としながら屋敷の門を開ける。

 広い庭を堂々と歩くリィたん。その後ろにピタリと付くナタリー。そして、周囲を警戒しながら歩くジェイル。


「魔族が一人もいないとはな」


 警備の者も、門番もいない。

 庭を通り過ぎ、あっという間に屋敷の扉へ着き、リィたんが気合いを込める。


「ふん」


 屋敷の中に吹き飛んでいった扉はエントランスを超え正面にある階段にぶつかり、けたたましい音を立てた。

 すると、リィたんがピタリと止まる。

 ジェイルはそれに過敏に反応し、剣へ手を伸ばすも、周囲からは魔力を感知する事は出来なかった。


「何? 何なの?」


 小声でナタリーがリィたんに聞くと、


「ふむ……」


 リィたんは歩き、階段の前に転がった扉を抱え、戻って来た。


「別に吹き飛ばす必要はなかったな」


 強引に扉を元あった場所に戻したリィたんを見て、ナタリーとジェイルが肩を落とす。


「「はぁ……」」


 直後、リィたんの視線が鋭くなる。

 それを見たナタリーが、今度はと緊張に染まる。


「一人……いや、二人か?」


 リィたんが感じ取った魔力は二つ。

 魔族四天王の屋敷にいる人数としては明らかに少ない数ではあったが、それならばとリィたんはズカズカと奥へ向かった。


「……ここだな」


 リィたんが見上げる物々しい扉。


「ここは?」


 振り返りリィたんが聞くと、ジェイルは目を伏せて首を横に振った。

 すると、ナタリーが言ったのだ。


「パーティー会場……」


 そう、そこはナタリーが、ダークマーダラーのアンドゥの手によって、ミケラルドへ献上された場所だった。微かに見覚えのあるその扉を見ながら、ナタリーの拳が強く握られた。


「行くよ」


 指揮をとったのは、意外にもナタリーだった。

 ガチャリという金属音伴う開閉音と共に、扉が開く。

 大広間というべき場所には何もなかった。

 ただ一つ、中央で三人を見据える男を除いて。


「スパニッシュ……」


 ジェイルの言葉通り、中央に置かれた椅子には、魔族四天王スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエルが座っていた。

 頬はこけ、圧力があるも魔力が安定していない。


「これはこれは、とんでもない客人もいたものだな」


 スパニッシュの言葉は、三人に対して言ったものだった。


「ハーフエルフの献上品と、出来損ないの料理人、そして人の身に化けた龍族か。なるほど、ミケラルドの仲間にはお似合いな半端者たちだ」

「そのような安い挑発にのる我々ではない。事実そうなのだからな」


 リィたんが目を細め言うと、スパニッシュは足を組んで椅子の背もたれに背中を預けた。

 これを見たジェイルが、怪訝な顔つきで聞く。


「随分と余裕だな」

「余裕? 何を言う。こちらはこの場にいるだけで精一杯だ。龍族を前にした我らが足掻けるのは古の時代のみ。殺すならば勝手にそうしろ」


 スパニッシュが言うと、今度はリィたんが答えた。


「それは、お前の返答次第だ」

「なるほど、ただ我を殺しに来た訳ではないと。道理で、その膨大な魔力を隠さぬ訳だ」


 すると、ナタリーが一歩前に出た。


「あなたは……あなたはどうやってミックをこの世界に呼んだの?」


 それは、全てミケラルドを想ってが故。

次回:「◆その312 ミケラルド誕生秘話」

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