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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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305/930

その304 ご招待

2020/07/21 本日一話目の投稿です。ご注意ください。

「ホーリーキャッスルに?」

「……えぇ」


 何でこんなに元気がないんだ、アリス(この子)は?


「何でまた?」

「それは私の台詞ですぅ……うぅ……」


 凄い、本気で泣いてる。

 しかし、気になる。皇后アイビスが聖女に俺の呼び出しを言いつけたという事は、俺を冒険者ミケラルドとして呼んでいるという事だ。アイビスに何等かの狙いがあるというのだろうか。

 まぁ、あの人の前だと冒険者も元首もあまり変わらない気がするな。そもそも、以前もあの人の前で、冒険者と貴族を使い分けたしな。


「それでそれはいつなんです?」


 俺が聞くと、アリスは真剣な表情で言った。


「ミケラルドさん、今日は忙しいですよね?」

「いえ? 聖女無双計画が終われば特には?」

「そのネーミングを伏せるという手段が何故ないんですかね?」

「既に伏せてますけど?」

「一体、本来はどんな計画何ですか!?」


 聖女ゴリラ計画とは口が裂けても言えないだろう。

 しかし、この(はてな)の応酬は気になるな。まぁ、冒頭だけだけど。


「うーん、もしかして私の都合さえ良ければ呼べとか言われてます?」

「ぎくり」


 この子はまだ様式美としてこの言葉を理解していないようだ。

 素で言う人も中々いないけどな。


「じゃあ忙しいです」

「えっ!? 本当ですか!?」

「だって呼びたくないんでしょう?」

「そ、そんな事ないでひゅよっ?」

「そうでひゅか」

「ホッ……」


 なるほど、俺のボケを拾えないくらいには心配してたのか。

 とても失敬ではあるが、わかってしまう自分もいる。

 自分がアリスの立場だったら、こんな胡散臭い男をホーリーキャッスルに連れて行くなんて……正気とは思えないからな。

 どうやらアリスは正常のようだ。そんな判断が出来るなんて正直凄いと思う。

 俺が十三、四の頃には出来なかっただろう。きっとこの悪い大人に騙されて……ん?


「どうしたんですか、ミケラルドさん?」

「『ひょっとして私って悪い大人の代表なのでは?』と思いまして」

「何を今更」

「悪い大人に付いて行っちゃ駄目なのでは?」

「私もこの世界に長い事いますから、良い人か悪い人かくらいの判断は出来ます」

「……あ、はい」


 何だ、この子は? 可愛いじゃないか。


「んー、どうして宝箱が空ばかりなんでしょう?」


 ここはダンジョンの二階層。

 俺たちは初日に一階層、二日目は二階層まで。今日は三階層に行く予定である。この中で、俺たちは既に三回宝箱の出現を確認した。

 モンスターを一定数倒す事によって出現する宝箱出現の法則は当然だが、その中身の出現確率も最近わかってきた。

 まぁ、聖女になら教えてもいいか。


「宝箱の中身欲しいですか?」

「ここには各属性の魔法威力を高められる指輪が出るので、欲しいと言えば欲しいですね。後、いいお金になりますっ」


 なるほど、着実にお金を愛し始めているな。


「あ、だからと言って愛してないですからね!」


 着実に俺の性格も読んできている。


「アリスさんが欲しいのは【光の指輪】って事ですね」

「えぇ、各属性の市場価格は、一つ当たり法王白金貨三枚です!」


 最早(もはや)愛してるのでは?


「光と闇の指輪は出現頻度が低いせいか、白金貨五枚で取引されてますね」


 魔導書(グリモワール)一冊分か。

 一般階層から手に入るアクセサリーと考えれば中々の価格だ。


「じゃあ三階層は中身を狙ってみますか」

「え?」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ほらアリスさーん、そっちにマスターゴブリンが向かいましたよー」

「今の絶対わざとですよね!?」

「右から壁を蹴って跳びそうですね」

「ご忠告どうも! 【キューブプロテクション】!」


 へぇ、面白い魔法だ。

 防御魔法を立方体状にして敵を囲むのか。こんな魔法の使い方……あぁ、元聖女(アイビス)直伝って事か。しかし参考になる。これはある意味結界魔法とも言えるからな。


「ギィッ!?」


【キューブプロテクション】に閉じ込められたマスターゴブリンは、パントマイムでもしているかのように、周囲の見えない壁に触り困惑の表情を浮かべている。


「えいっ!」

「ギャッ!?」


 おっ? これはびっくり。

【キューブプロテクション】を透り抜けて、打撃が決まったのは何でだ?


「面白い攻撃法ですね」

「そうですか? アイビス様に教わったんですけど、一人で戦う時、困ったらこれですね」

「自分の魔法を透り抜けるプロセスは、【キューブプロテクション】に? それとも杖ですか?」

「【キューブプロテクション】側に予め……そうですね、埋め込む感じです。アイビス様とかヒルダ様はこれを個人指定で行ってたりするんですよ」

「ではアリスさんは?」

「私は自分の指定が限界です」

「つまり、自分以外は透過出来ないと」

「結構難しいんですよ、これ」

「では後程の戦略(ストラテジー)ゲームに魔力精密操作の強化項目も加えましょう」

「……はぁ。どうせ断れないんでしょうね……」


 何とも幸薄そうな聖女だこと。


「お、火の指輪ですね」

「嘘!? 出た! どうしてですかっ?」

「宝箱の出現に関しては、モンスターの討伐数で決まります。でも、中身まではそうもいかない。宝箱が出現する最低討伐数ではどうしても中身がランダムになってしまう。このダンジョンの場合は、空になる確率が高いみたいですね」

「何それ、初めて知りました」

「冒険をした分だけ対価を得られるって事ですよ。で、いつもは一階層あたりに一時間かけてますけど、さて今回は?」

「あー、確かに三階層には二時間近くいましたね」

「まぁそれだけ多くのモンスターを狩ったって事ですよ。討伐数も記録しておきますので、今後は効率よく宝を回収していきましょう」

「私の思い描いてた冒険とちょっと違う気がします」

「効率至上主義者と罵ってくださっても結構ですよ」

「結果が出てる以上、否定のしようがないんですけど……何だかなぁと」

「それには同意しますけどね、まぁ仕方ないですよ」


 そう言ってから、俺たち二人は苦笑し合うのだった。

本日(7/21)中、もう一話更新予定です。


次回:「その305 レベル7」

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[一言] 擬音を素で言ってしまう聖女様かわいい、ぜひうちのマスコットになってください
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