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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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282/930

その281 リプトゥア国の法

2020/6/28 本日一話目の更新です。ご注意ください。

「へぇ、奴隷は財産扱いされてるんですね」

「えぇ、なので、当然ながら人の所有物に手を出せば、手を出した側が罪に問われます」


 エメラの説明にうんうんと頷く俺だが……ん? 手を出す?


「手を出すような事するんです……?」


 カミナもエメラも黙って笑ったままである。

 何この二人、超怖い。


「次に奴隷の定義づけですね」


 強い意思すら感じさせる淡々としたカミナの段取り。


「奴隷は奴隷契約した段階、もしくは国家資格を持った奴隷商人の手元に置かれた段階で奴隷扱いとなってますね」


 奴隷と口にする度、その口をすすぐかのように口にお茶を運ぶエメラ。

 どうやら嫌いな単語らしい。

 それにしても奴隷商人ってリプトゥアの国家資格だったんだ。

 という事は、定期的に買っているあのドルルンドの商人たちもそういう資格を持っているのだろう。確かに、知恵は回りそうだし、あくまで商人扱いだ。

 そして、ここまで聞いてしまうと二人の狙いが薄々ながらわかってきてしまう。


「あらあら? ミケラルドさん、何かお気付きです?」

「あ、流石ミケラルド様です!」

「ざらっと読んだ感じ、他者の奴隷の奴隷契約を勝手に解除しても罪に問われないみたいですね」

「うふふふ、その通りです」

「当然、奴隷という立場を願っている者は皆無に等しいはずです」

「なるほど、解除は私が担当と?」

「「出来ますかっ!?」」


 ばっと立ち上がるエメラとカミナ。

 おいおい、肝心要のポイントは人任せか。

 というか、それが出来なきゃ成り立たないんだけどな。

 いや、だけどミケラルド商店を預かる立場の二人の事だ。打算の中で、「俺なら出来る」という確信の下、この考えに及んだ。

 ならば、俺が「出来ない」と答えるのは違うだろう。


「長い歴史の中で、奴隷契約を強制解除した者がいないからこその法律。だけど、出来る者が現れたとしたら……なるほど、面白いかもしれないですね。わかりました、お二人からの【新魔法】の開発依頼、確かに承りました」


 俺がそう言うと、二人は互いの手を合わせ、「いぇい」と微笑み合った。

 是非俺も交ざりたいところだが、それはナタリーに怒られそうだからやめよう。たとえこの場にいなくても聞きつけるのがナタリーだから。


「でも、これって結構危ない橋ですよね? 最終的に……」


 これ以上は流石にまずいと思い、俺は二人にテレパシーを発動した。


『最初はバレないにしても、最終的にリプトゥア国に喧嘩売るって事ですよね?』

『大丈夫ですよ、ミナジリ共和国はおそらく近い内にリプトゥア国から敵国とみなされますから』


 カミナの言う「大丈夫」は、何が「大丈夫」なのかわからないが、なるほど、きっと二人はアレを見越しているのか。


『エメリーの所在が割れた段階の事ですかね?』


 俺の言葉に二人が静かに頷く。

 それを見た時、俺はエメラとカミナの逞しさに感動を覚えた。

 彼女たちは、戦争が起こる前段階すら商売に結びつけ、更なるミナジリ共和国の発展に繋げようとしている。確かに、もしリプトゥア国がミナジリ共和国に戦争を仕掛けて来た場合、それを陰で支えるのはリプトゥア国の奴隷である。

 その労働力を根こそぎ奪う事が出来たとしたら、ミナジリ共和国に敗北はないと言えるだろう。

 それ程までに、このリプトゥア国の奴隷依存は進んでしまっているのだから。


「うーん、だとしたらまだしばらくここにお店は出さない方がいいですねぇ」

「えぇ、せっかく連れて来てもらったのに残念ですけど」


 カミナが頬をポリポリと掻きながら苦笑し、エメラがちょこんと謝罪する。


「いや、いいんじゃないですか? 私は気に入りましたよ。こちらで今の段階で打てる手は打っておきます。ありがとうございました」


 俺が礼を言うと、カミナはエメラに向かって親指を立て、エメラはほんの少し首を傾けながらカミナに微笑んだ。

 何だ、この絵画は? 一体いくら払えば続きを見られるのか?

 窓口がどこにあるのかわからないが、白金貨百枚くらいなら出すと明言しておこう。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 そんな話の後、俺たちは雑談をしながらリプトゥア城へ向かった。

 リプトゥア城の門番たちは、笑顔で俺の書状を受け取り、笑顔のまま城内へ入った。

 そして笑顔で受領書を渡し、笑顔で見送ってもらい、全てが終わった。


「……まぁ、あれが普通なんですよね」


 俺の問いともとれる独り言に、エメラが答える。


「普通……ではないかもしれないです。今、リプトゥア城内は普通ではない状態でしょうから」


 当然、それも勇者エメリーの消息不明が原因だろう。

 ミナジリ共和国に多くの間者が入り込んではいるだろうが、まだ特定には至っていない。

 だが、それも時間の問題。


「ミケラルドさん、この後の予定は?」

「今日中に法王国に入ってしまおうと思ってます」

「わかりました、道中気を付けてくださいね。今晩の料理は私が腕によりをかけますから」

「私もいますから!」


 カミナの発言は気になるところだが、朝食のような焦げパンでないなら、俺も安心して法王国に向かえるというものだ。

 さぁ、いよいよ最後の配達だ。出来れば今回の依頼達成を以て、SS(ダブル)に昇格したいところだ。


次回:「その282 法王国で」


昨日二話更新できなかったので、本日二話更新予定です。

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