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その26 人妻デート?

「へぇ~、ここがシェンドの町か!」

「まぁまぁミックさん。そんなにはしゃいでると目立ってしまいますよ」

「いや、あれほどじゃないですけどね……」


 俺たち三人はシェンドの町に来た。

 メンバーは、人間であるナタリーの母親エメラ。俺……そして、あそこで家屋や店を見ながら爛々と目を光らせている大海獣――リバイアタン。

 出来ればあの速度で移動しないで欲しいのだが、俺が止められる訳もない。

 リィたんの服と靴はエメラからもらったものだ。濃い小麦肌に合う白いシャツとピンクに近い色のベスト。そして黒いパンツと茶色いブーツ。テンガロンハットかなんか被れば女性カウボーイ風といったところか。

 というか、落ち着いた印象のエメラがこんな服を持っているとは……ギャップが最高にイイじゃないか。


「っと、一応確認しますけど、冒険者ギルドに登録料は一切かからないって事でいいんですね?」

「えぇ。ただ、登録の際にギルドカードに身体の一部を入れなければいけません」

「身体の……一部?」

「一般には髪の毛か血ですね」


 むしろそれ以外は何なのだろう。

 やっぱり汗とか涎とかなのだろうか? そんな事やれば、ナタリー並みに俺がドン引きすると思う。

 しかし、髪の毛でいいんじゃないか? ……あぁ、髪の毛が無い人もいるからか。納得だ。


「ん? もしかしてエメラさんも冒険者なんですか?」

「えぇ、よくわかりましたね。ランクはEですが、ギルドカードは持っておいて損はないので」

「ランク制度……ですか。最低ランクはGとかですかね?」

「ふふ、当たりです。最高はSSS(トリプルS)ランクでここら辺ではAランクの冒険者でもいれば騒がれてしまいますよ」


 なるほど、ランクの幅が結構広いのは、おそらくそれだけ多様なモンスターがいるからだろう。当然、魔族も討伐対象に該当するんだろうな。

 さて、問題は一つだ。

 リィたんが文字の読み書きを出来るって話だったからそれは問題ないのだが、受付の際、俺が冒険者になれるかどうか――俺の髪の毛は悪い方向に反応しないだろうか? 魔族だとバレたらそれはそれで問題なんだよな。まぁ、リィたんもそれは同じなんだけどな。


 その場合はリィたんにおぶさってとんずらしよう。俺たちの身体能力であれば、逃げきるのはそこまで難しい事ではないはず。最悪、チェンジを使って俺とリィたんの顔を変えればいい。


「では、私は必要な食材を買って帰りますので、ここで一旦お別れです。もし何かあればテレパシーで連絡ください」


 エメラは深々と頭を下げ、通りを歩いて行った。

 うーむ、本当に出来た女性だ。

 あそこで屋根に登ろうとしているリィたんとは大違いだ。


「おいリィたん。こっちだぞー!」

「ちょっとだけ! ちょっとだけ登らせてくれ!」


 まぁ誰も見てないだろうし、いいんだけど、いざって時は呪縛使うしかないよな。力ずくでリィたんを制御出来ればいいんだが、それはしばらく無理そうだし、仕方ない。


「ほぉ、ここが冒険者ギルドか」


 美しい屋敷のような場所だった。

 これが冒険者ギルドか。


「リィたん、さっき言った事忘れないようにね」

「我々の正体がバレた時の話だろう。安心しろ、ミックは私が必ず守るっ」


 そうじゃねぇよ、逃げるって言ってんだろう。

 いや、守ってくれるのは嬉しいんだけどね。

 受付嬢はとても綺麗な女性だった。茶髪がすらっと伸びた整った顔立ち。やっぱり受付嬢ってのは綺麗じゃないとな。

 顔がイイというだけで集客率が違ったりするだろうし、それ目当てで来る人も頑張る人もいるだろう。


「いらっしゃいませ。依頼ですか? それとも報告でしょうか?」

「すみません、冒険者の登録をお願いします」

「かしこまりました。只今準備致しますので、お待ちください。……二名という事でよろしいですか?」

「はい」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ミケラルド様、リィたん様、今後とも冒険者ギルドを宜しくお願い致します。ランクGの依頼はあちらのボードを確認してください」


 危惧してた事は一切起きなかった。

 何だか拍子抜けではあるが、冒険者ギルドといえど万能じゃないって事だろうな。

 規約も色々聞いたが、普通に依頼をこなしていれば抵触する事もないだろう。

 うーむ、出来れば冒険者ギルドの「新人いびり」みたいなイベントを期待したんだが、そんな事もなかった。

 リーガル国は平和なのかもしれないな。


「ミックミック! さぁ! 早く依頼とやらを片付けようじゃないか!」


 すっげぇ楽しそうだな、この大海獣。

 嘆きの渓谷にいた時では考えられないような生活だろうから、仕方ないけどな。

 リーガル国は平和――そう思ってはいたが、いざクエストボードを見ると、そうでもない様子だった。


「意外にモンスターの被害が多いみたいだね」

「ミ、ミックゥ……」

「どうしたリィたん?」

「ランクGではモンスター討伐がほとんどないぞ……? この薬草採取というのがいいのだろうか?」

「まぁ、戦闘力に不安のある者に、早々任せられないだろうからね」

「むぅ、我々が道中倒したモンスターたちはもっと強力だったはずだが……!」


 剥れるリィたんまじ可愛い。

 確かに、リーガル国に来るまでに様々なモンスターを倒した。それこそゴブリンやオーク、オーガなんてのもいた。

 しかし、リバイアタンを見た後じゃ、どの存在も霞んで見えてしまうものだ。


「お、これよさそうじゃん」

「ふむ、コボルト掃除か。四匹でいいのか? 簡単だな」

「いや、最低討伐数が四匹だよ。討伐箇所は耳。多ければ報酬も上乗せだ」

「なるほど。コボルトを絶滅させればいい訳か」


 なんて恐ろしい事を言うんだ、この子。

 確かにリィたんなら種を滅ぼすくらいはやりそうだ。

 まぁ、この辺のコボルトを狩ればある程度は稼げるだろう。


「これ、お願いします」

「かしこまりました」


 とりあえず冒険者デビューって事で。

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