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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その25 第二計画発動

「この度は、娘のナタリーを救って頂き、本当にありがとうございました!!」


 かつて俺がジェイルにしたような、頭下げ過ぎお辞儀をかましてくれたナタリーの父親エルフ。

 それに倣うように、隣の母親も頭を下げた。

 そしてナタリーは、「あ、これ私も頭下げるやつだ」と気付いたように慌てて頭を下げた。

 俺はリィたんと見合ってくすりと笑った。

 ジェイル? ジェイルなら、さっきの俺の第三勢力の話からずっと固まってるぞ。


「いえ、とんでもない。魔族が犯した罪、代表してお詫びします。どうか頭を上げてください」


 俺がそう言うと、ナタリー一家は揃って頭を上げた。

 目元は真っ赤になり、感動の余韻もある中、俺たちのところまで来てくれたのだ。今日に関しては出来るだけ早めに切り上げさせたいしな。


「申し遅れました。私はナタリーの父クロード。妻のエメラです」


 先程とは違った目礼をするクロードとエメラ。

 クロードは短い緑髪のエルフだ。ナタリーより耳が尖っており、端正……は端正なのだが、少し童顔な印象だ。

 エメラはとても美人である。独身で子供も産んでないと言われても納得出来るような若々しさと美貌。長い金髪と森にマッチしている白いワンピースがとてもよく似合う。

 ふむ、こりゃナタリーはとんでもない美女になるだろう。


「私はミック。吸血鬼の一族ですが、どうか怖がらないでください」

「め、滅相もない! あなた方はナタリーの恩人。たとえここで殺されたとしても恨みません!」


 その返しはどうかとも思うが、クロードなりの誠意なのだろう。


「水龍リバイアタンのリィたん。そして彼がリザードマンのジェイルです」


 俺がそう言った時、ジェイルはようやく石化から解けたようだった。

 リィたんの態度こそ変わらなかったが、ジェイルは一応目礼をして挨拶した。へぇ、意外……でもないか。


「ここではなんです。是非我が家にてお(くつろ)ぎください」

「いえ、今日はナタリーさんが戻った大事な日です。お構いなく」


 俺は手を前に出してクロードに言った。

 ナタリーがちょっと怖い目でこっちを見てくるが、今はナタリーの気持ちより両親の気持ちだ。


「明日、よろしければ招待して頂けませんか?」

「そ、それは勿論構いませんが……」

「では明日! お昼頃伺いますね!」


 俺史上最高の爽やかスマイルを送り、俺たち三人は踵を返した。

 そして、ジェイルとリィたんが「頑張ったご褒美」という事で、見張りを二交代にしてくれたのだ。

 俺はその日、夕方にも拘わらずぐっすりと寝た。


 翌日、簡単な食事を済ませ、ジェイルとひと訓練した後、クロードの家を訪ねた。

 家のドアを開けた時、まだ俺たちの顔、そして存在に慣れていないのか、クロードは一瞬ビクついたが、妻であるエメラの方は笑顔で迎えてくれた。

 何故かナタリーにはつねられた。あぁ、昨日の勝手な決定が原因だろう。まぁ、一日経ったしもう大丈夫だろう。

 その後、俺たちの境遇や、魔界での出来事を掻い摘んで話し、クロードたちに俺たちの現状を把握してもらったのだ。


「そういう事でしたか。では私に出来る事があれば何でも言ってください」

「その言葉を待ってました」

「へ?」

「いや、別に難しい事じゃないんですよ。ただ私に…………クロードさんの服を一着恵んでいただけませんか?」


 先程より間の抜けた返事を返したクロード。

 これには、ジェイルもナタリーも首を傾げていた。


「こ、こちらでよろしいでしょうか?」


 俺はクロードの部屋に通され、そこでクロードに服を一着もらった。


「それを一体どうするおつもりですか?」

「勿論、着るんです」

「いや、しかし……ミックさんは?」

「まぁまぁ、ちょっと後ろを向いててください」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほぉ、ミックか」


 部屋を出てすぐにリィたんに気付かれた。

 そしてナタリーは顔を赤くし、エメラもそれは同様だった。


「まさかミックさんにこんな事が出来るとは……」


 クロードが驚くのも無理はない。

 先程まで三歳児だった俺の体躯が、成人化しているのだから。


「ほぁ~~」


 とかナタリーが言ってるが、変なのだろうか?

 黒銀の髪はそのままに、肌の色も少々色白という感じだ。目は赤から金へ。人間の血を吸ったおかげか、とび出た犬歯もしっかりと揃っている。

 見た目は二十代中盤というところだ。

 自分で言うのもなんだけど、中々カッコイイのではないかと思う。


「そうか、チェンジを使ったのか。だからクロード殿の服を貰ったのだな」

「その通りです。どうです? これなら人界も歩けるでしょう?」


 俺がそう言うと、ナタリーが椅子をガタッと鳴らして立ち上がる。


「ミックもしかしてシェンドの町に!?」

「そういう事。これにはクロードさんの協力が必要不可欠だったんだ」


 町に入れる衣服なんて、持ってなかったしな。あ、因みに靴も一足貰ったぞ。


「ほぉ、それは面白そうだな。私も行くぞミック!」

「え……リィたん来るの?」

「なっ!? 何だその顔は! ミック! 私が行くと不都合でもあるのか!?」

「いやぁ……」


 俺はリィたんのつま先から頭のてっぺんまでじっと見る。

 うん、どう見ても痴女なお姉さんだ。ビキニかと思うような衣服だし仕方ないんだけどな。


「そ、それでしたら私の服をリィたんさんに使って頂くのはどうでしょう?」

「おぉ、それですエメラさん!」


 確かにリィたんとエメラさんの服はサイズが合いそうだ。胸とか特にな。うーむ、クロードめ……羨ましい。


「しかしミック? 人界の町で一体何をするつもりだ?」

「ゆくゆくは商売……ですかね? やれる事は何でもやるつもりです。拠点を構えるにも何かと入り用ですし。ジェイルさんだって人界の色々な調味料とか知りたいでしょう?」


 そう返すと、ジェイルはとても嬉しそうな反応を示した。

 なるほど、微細な変化だが、慣れてみればしっかりとわかるものだな。


「あの、お金でしたら私たちが何とかしますよ。商売をするにも元手が必要でしょう」

「いや、クロードさんにそこまでしてもらう訳にはいきません。それに、元手がなくても我々にはこの強靭な身体があります」


 胸に手を当て、俺は言った。

 すると、ナタリーは少しだけ顔をヒクつかせて聞いてきた。


「ま、まさかミック……?」

「そう、なるんだよ。冒険者に」


 あ、ドン引きされた。

ひと段落しました。

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