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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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254/917

その253 新たなる町

 粗方説明が終わった後、レミリアは複雑そうな表情をし、しかし何も言わずに一つ頷いてからその場を去った。

 個人としては応援したいのだろう。しかし、冒険者としては、この行動を褒められない。そう判断したのかもしれない。


「私……本当にここにいていいんでしょうか……」


 俯くエメリーに何と声を掛けていいのか。

 考えない訳にはいかない。だけど考えたところで答えが出る訳でもなかった。

 鼻息をすんと吐いた俺は、再び打刀(うちがたな)をとり、エメリーの首元に持って行く。


「はい、一本」

「ふぇ?」

「勝負の途中でしたよね。なので一本です」

「え? えっ? そ、それはずるいです!」

「何と言われようが一本です。細かい事気にしてるから負けるんですよ」


 俺はエメリーを(あお)るように言って、


「悔しかったら、さっさと強くなる事です。悩んでる暇はありません、よっ!」

「っ!」


 更に攻撃を仕掛け挑発した。

 打刀(うちがたな)を剣で受け止めたエメリーは、強い目を俺に見せ、一度(かぶり)を振ってから俺の打刀(うちがたな)を払いのけた。


「はぁ!」


 心なしか、先程より剣速が向上している。

 もしかして、俺の言葉でエメリーが成長した……?

 あんなくだらない締まりのないフォローで?


「やぁあああああああっ!!」


 いや、確かに成長している。

 何がキッカケなのかはわからないが、エメリーの強さは明らかに変わった。

 この剣は……レミリアに近い?

 ほんの少し前までランクAだったというのに、やはり潜在能力は世界一という事か。

 だが、この程度で負けてやる程、甘くはないのだ。

 エメリーの力を引き出しつつ、俺も彼女の剣を学ぶ。

 この余裕は、俺がほぼ毎日リィたんと訓練した結果でもある。

 やがてこの剣が俺に向くのだろうか。それが疑問でならない。

 エメリーにあぁ言ったが、正直、「細かい事」……どころではないのだ。これは俺にとって「非常に大事(おおごと)」なのだ。

 だからこそ俺は、エメリーに力を貸さなければならない。

 今後、俺が、俺たちが生き残るために。


「はい、お終い」

「はぁはぁはぁはぁ……!」


 屋敷の裏庭で仰向けになって倒れるエメリーは、汗だくになりながらもどこか満足気な表情をしていた。


「ひ、久しぶりにこんなに動きました……っ!」

「明日またこの時間ね。正体知ってる人なら、声掛けて相手してもらってもいいからね」

「ありがとうごじまふっ!」


 面白い噛み方をするものだ。


「あいちちち」


 舌を噛んでしまったであろうエメリーは、ぺろりと舌を出しながら苦笑して見せた。

 俺もそれを苦笑で返し、エメリーに【ヒール】を掛けその場を去ったのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 その後俺は、ミナジリとリーガル国を繋ぐ新たな町へ転移した。


「ミケラルド様っ!」


 俺の下に駆け寄って来る一人の男。


「…………誰だっけ?」

「ちょっとちょっと! ランドですよ! ラ・ン・ド!」

「……誰だっけ?」

「ほら! アルフレド様の別邸の! 地下で! 捕まってたシュバイツを見張ってた! あの! ランドです!」

「あー……あーあー! 思い出した! 話にだけ出てきたりしてたけど、久しぶりに見た気がするわ」

「も~、お人が悪いですなー、ミケラルド様は~」


 こんなほんわかボーイな性格をしていたのか、ランドは。

 そういや、シュバイツが言ってたな。ここの責任者はランドを任命したと。


「何か問題は?」

「は! 先程ドマーク商会の方から連絡がありました! これよりリーガルを発ち、この【オードの町】に向かうとの事です!」

「…………いつ町の名前がオードに?」

「えーっと……昨日ですね? 皆自然にそう呼んでましたよ? ミナジリの手前だからオードだろーって事で」


 ……なるほど、つまり俺の名前――ミケラルド・オード・ミナジリの名前を逆になぞったのか。確かに手前だが、隣国の公爵のミドルネームを町の名前にするとか、ちょっとまずいのでは?

 いや、あのランドルフ(おっさん)なら別に許してくれそうだな。というより、(むし)ろ喜びそうだ。


「はぁ、わかったよ。それで? ミケラルド商店六号(オード)店の準備は?」

「つつがなく、です! カミナさんが応援に来てくれて、一通り準備してくださいました!」


 なるほど、カミナに今度ボーナスを出そう。


「ミケラルド様、一つお願いが」

「何?」

「このオードの町にも冒険者ギルドを招致する事は出来ないのでしょうか」

「その内にって事で考えてたけど、何? 結構大変?」

「やはりリーガル国の首都リーガルに近い事もあり、モンスターの個体の強さはミナジリより強力です」


 確かに、依頼としてはシェンドの町よりリーガルの方が難度の高いものが多かった。外壁で国境を仕切ったとしても、その段階でミナジリ側にいた強力なモンスターは、この辺をうろつく事にはなる、か。


「わかった。話を通しておくよ。それと、聖水路もこちら側に通すようにしよう」

「おぉ! それは助かりますー!」


 この町は、国境こそ隔てているが、首都リーガルとマッキリーの間にある中間の町。

 ここを繁栄させれば、流通が潤い両国間でアクセスしやすい町となるだろう。

 俺は気合いを入れ、聖水路を造り始めるのだった。


「あ、その前にランドルフ殿に一応許可もらっておこう」


 テレパシーで新たる町――【オードの町】を説明したところ、ランドルフは当たり前かのように「自由にしてくだされ!」と言ってくれた。

 勿論、「今度遊びに行かせてくだされ!」とも言っていた。

 さて、明日はリーガル大使のギュスターブ子爵が来る予定だ。そういえば、シェルフからの大使は一体誰になったのだろう?

次回:「その254 新任大使」

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