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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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242/917

その241 恨み辛み

 俺の両隣には最強の護衛二人。

 そして眼前には冒険者最強の男と言っても過言ではない剣神イヅナ。

 穏やかな顔つきでナタリーに出された紅茶を(すす)っている。


「……旨い」

「それで、どのようなご用件でしょう……?」


 伺うように聞き、イヅナの反応を待つ。


「これは異な事を。そこのジェイルが言ってたではないか」

「あー……そう言えばそんな事を……」


 言いながら俺はジェイルを見る。


 ――――イヅナよ、我が剣の秘密を知りたくばミナジリ領へ来い。


 つまり、イヅナがミナジリ領に来てしまったのであれば、ジェイルは説明しなければならない。そう思っていたのは俺がまだ甘ちゃん(、、、、)だからかもしれない。


「イヅナよ」


 ジェイルが言う。


「あの話には続きがあってな」

「ふむ?」

「我が剣の秘密を知りたくばミナジリ領へ来い……――そして共に生き、偽りなき(まなこ)をもって真実を知れ」


 出た、ジェイルお得意の倒置法。

 ソーサーにカタンと置かれる紅茶のカップ。


「そのような()れ言で……誤魔化せるとでも?」

「思っているのだから仕方ない。教えるとも言っていない戯れ言を鵜呑みにしたのはそちらだ」


 煽りよる煽りよる。

 イヅナは帯剣していない。

 何故ならここは貴族の屋敷。入口でシュバイツに預けているはずだ。

 しかし、この殺気は人を殺せるのではないか、と錯覚してしまう程だ。


「やめいやめい! そんな危ねぇ殺気を撒き散らすなイヅナ!」


 と、横から口を出してきたのは魔帝グラムス。


「黙れグラムス。私は今大事な話をしている」

「こっちも仕事じゃ! 引くに引けんのよ! ガハハハハ!」


 なるほど、彼は雇用契約によってミナジリ領の守護を任されている。当然、ビクつきながらも天井裏ではラジーンも控えているのだ。それにしてもこれは……相手が悪すぎるよな。


「……ジェイルさん、申し訳ありませんが下がってもらえますか?」


 ちらりと俺を見たジェイル。

 そんな怖い顔でこっち見ないでくれ。大丈夫、仲間外れにはしないから。

 というアイコンタクトが通じたのか、ジェイルはイヅナを警戒しながらも部屋から去って行く。


「……動じませんね?」

「ジェイルを下がらせてどうするつもりだ、ボン?」

「別に? 話を進めたいだけですよ」

「話とは?」

「勿論、ジェイルさんの秘密についての話です」

「ボンが知っていると?」

「いいえ?」

「また異な事を……だが、ボンの話は捉えようがないのも事実。話を聞こう」


 流石物わかりがよくて助かる。


「まず、イヅナさんの要望をお伺いしたいところです」

「ジェイルの剣は勇者レックスを殺した剣と同じだった」


 その真実を聞き、魔帝グラムスも、剣聖レミリアも目の色を変える。


「何故彼奴(きゃつ)がそれを使えるのか……私はそれが知りたいだけだ」

「で、肝心のジェイルさんは真実を語るのではなく、自分で知れと言った」


 静かに頷くイヅナ。


「強引に聞くおつもりで?」

「必要とあらば」

「ジェイルさんはミナジリ領の優秀な人材です。同時に私の師であり、友人でもある。そんなジェイルさんに刃を向けるとあれば、私も看過(かんか)出来ません」

「然り。しかしそれはボンの事情だ」

「いえ、これはミナジリ領の問題です。だから敢えて申し上げましょう。私はイヅナさんをここから排除する事も辞さない、と」


 そう言うと、イヅナがちらりとリィたんを見た。

 だが、当のリィたんは久しぶりの屋敷のせいか、うとうとしていたのだった。


「「…………」」


 互いにリィたんから視線を戻した俺とイヅナ。


「つまり、ミナジリ領は私の滞在を断る事も出来る……そう言いたいのだな、ボン?」

「そういう事です」

「この私にどうしろと言うのだ?」

「別にそこまで難しい話ではありません。私が滞在許可を出す代わりに、イヅナさんはルールを守ってくれればいいだけの話です」

「ルール?」

「一つ、ジェイルさんは現在、優秀な人材を育成するため、多くの方への指導があります。これを邪魔しない事」

「なるほど」

「二つ、ジェイルさんと立ち会う際は周囲に被害が及ばない場所で行う事。当然、これにはジェイルさんの承諾が必要です」

「安全の配慮か。当然とも言える」

「三つ、私がジェイルさんに仕事を与えた時は、イヅナさんのどんな要望にも応えられません」


 三つの指を立てたところでイヅナを見て、俺は更に付け加える。


「もし、仮に……ただの切り傷一つでも我が領民に被害が及んだ場合、私はあなたを全力で叩き潰します……」

「……っ!」


 おっといけない。ちょっと魔力が溢れてしまった。


「……ボン」

「はい?」

「いや、何でもない。わかった、そのルールを守ると約束しよう」

「それは何よりです♪ あ、これからナタリーが食事を振る舞ってくれるそうなんですが、ご一緒にいかがです?」

「くっ……ふふふふ。折角の招待だ、是非ご相伴にあずかろう」


 恨み辛みはあろうとも、それは当人同士の問題である。

 だが、避けられぬ障害は今後必ず起こり得る。

 だからこそ俺は、もっともっと強くならなくちゃいけないのだ。


次回:「その242 冒険者の食卓」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ナタリーの傷……。偶然??
2023/12/18 00:37 退会済み
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