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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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241/931

その240 図画工作

『――という訳です』


 事と次第を説明し終えた俺は、勇者エメリーからの反応を待った。

 彼女は、俯き、か細い声で呟くように言った。


「信じられない……」


 目の前にいる俺でもギリギリ聞き取れる音量。

 ドアの外に漏れているという心配はないが、この話は彼女にそこまでさせてしまうだけのものだったようだ。

 暫くの沈黙の後、エメリーは顔を上げて()った。


『しかし、この剣を私に渡してしまったら、ミケラルドさんが渡したとバレてしまうのではありませんか?』


 意外に冷静……いや、冷静でないと正気を保てないのかもしれない。


『えぇ、なのでエメリーさんの剣を見せてくれませんか?』

『私の……?』


 エメリーは立て掛けていた剣を持ち、俺に手渡す。


『ふんふん……なるほど、ここがアクセントになってるんですね』

『もう古くて、買い換えようかと思ってました』

『じゃあ、これはもらっちゃいますね』

『へ?』

『あぁ、勇者の剣を貸してください』

『え? え?』

『ほーら、ここをこうして、最後にこのアクセントをつけて……はい、完成』

『嘘……?』


 勇者の剣を、エメリーの手持ちの剣を模してその場で造りかえる荒業。


『はい、中身は勇者の剣なのでそのままお使いください』

『凄いです……そうか、これでミケラルドさんは私に勇者の剣を届けたけど、対外的に届けていない事になる……』

『で、こっちのエメリーさんの剣をこねくりまわして……こうして、こう』

『勇者の剣になっちゃった……』

『ただのレプリカですよ。ま、バレないように工夫はしてます』

『それをどうするんですか?』

『勿論、エメリーさんにお届けします』

『……へ?』

『今日のように、城門でホネスティ殿に会い、手渡します』

『それは……何か変わるんですか?』


 流石にそこまでは警戒していないのか……。

 まぁ、そうだろうな。そういう国だからな、ここは。


『明日、私は確実にこのレプリカをホネスティ殿にお渡しします。その日……いえ、近日中にエメリーさんの下にこれが届かなかったら……部屋でこれをお使いください』

『……綺麗』


 エメリーに渡したのは小指の先程の小さなオリハルコンの首飾り。

 ナタリーちゃんに渡したものより小さいが、付与(エンチャント)する分には十分な大きさである。


『これを使ってどうしろと……?』

『時が来ない事を願います』

『…………わかりました』


 言いながらエメリーは首飾りを装着し、胸元へしまった。


『それでは……――』

『――あの、ミケラルドさん』

『何です?』

『アナタは……もしかして――』


 直後、ドアのノック音が響く。


『エメリー殿、ホネスティです。少々よろしいでしょうか?』

「はい、今すぐ――っ!」


 そんなエメリーの言葉を背に、俺は再び闇夜に紛れたのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「一日がかりで申し訳ありませんでした。こちらが勇者の剣です。必ずエメリー殿にお渡しください。ギルドより報告は無用との事でした」

「おぉ! これが勇者の剣ですか! かしこまりました! このホネスティ、必ずエメリー殿にお渡ししますぞ!」


 さて、鬼が出るか(じゃ)が出るか……。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ところでミック?」

「何、リィたん?」

「勇者の剣のレプリカは絶対にバレないのか?」

「うん、絶対にバレない」

「その自信は何だ?」

「だって勇者の剣だから」

「……ん?」

「エメリーさんにバレないよう、その場でポイして、オリハルコンから新しい勇者の剣を造ったんだよ。勿論、微量の【聖加護】入り。つまり、レプリカといっても性能は全く同じ。外見も同じだからバレようがない……で、何? その目は?」

「感心半分、呆れが半分だ」

「是非その呆れの部分が知りたいね」

「いや何、人間の世界でもこれ程難儀な生き方をしている者も少ないだろうと思っただけだ」


 肩を竦めたリィたんが、すんと鼻息を吐いて言う。


「同感だな」

「ジェイルさんまで……」

「何にせよ、これで依頼は達せられた。ミナジリに帰ろうではないか」

「ですね」


 オリハルコンの護衛、皇后アイビスの警護、ガンドフでの戦争、そしてエメリーへのミケラルド便……色んな事が重なった今回の冒険は、今後俺にどんな影響を及ぼすのだろうか。

 楽しさ半分、怖さ半分の気持ちを抱え、俺たちはミナジリ領へと転移したのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「あ、ミック! お帰りなさーい!」


 屋敷でいち早く出迎えてくれたのはナタリー。


「ん? どうしたその怪我?」


 よく見るとナタリーの頬に小さな切り傷があった。


「あ、え? ど、どこかで切っちゃったかな?」

「ほい、ヒール」

「ありがとう、ミック! あ、それと、お祝いのご飯出来てるからね!」

「お祝い?」

「駆けっこでジェイルに勝ったんでしょ? その、お祝い!」


 ナタリー、可愛すぎでは?

 深夜のテンションであしらわれたと思っていたが、しっかりちゃっかりお祝いしてくれるのはナタリーらしいっちゃらしい。


「あ、でも、まずはお客さんからね」

「お客?」

「うん、応接室に来てるよ?」


 嫌な予感はした。

 俺、リィたん、ジェイルは三人見合いながら応接室へ走った。

 そして、応接室の前で中の様子を伺う二人の冒険者を発見したのだった。


「押すでないレミリア! よく見えんじゃろうが!」

「何をグラムス殿! 先に私が見ていたのだ!」


 押しのけ合う剣聖レミリアと魔帝グラムス。


「何で二人が(うち)にいるんですか……」

「む、坊主か! 儂ぁ案内を頼まれただけじゃ! ヤツにな!」

「私は気になっただけだ! あの方がな!」


 総じてレミリアは無関係だという事がわかった。

 だが、剣聖と称されるレミリアが「あの方」というのだ。

 覗く前に中にいる人物が誰なのかわかってしまう気がする。

 レミリアとグラムスを押し分け、応接室に入る。

 視界に入ったのは――、


「戻ったか、ボン。確かに鍵は開いてたな」


 屋敷の鍵じゃないよ、イヅナ爺ちゃん。

次回:「その241 恨み辛み」

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