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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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240/917

その239 再会

「は?」

「えぇ、なのでこちらで勇者の剣をお預かり致します」

「いや、私が請け負った依頼はエメリー殿に直接勇者の剣を渡す事です。あなたに渡す事は出来ません」


 リプトゥア城の門番に話を通し、城内からやって来たのは爽やかな男――ホネスティ。

 とは言うものの、この男は仮面を被っているようにしか見えないのだ。


「そうは言われましても……ははは」


 ホネスティは、俺の顔から足までジロジロと見る。

 顔は笑っていても冒険者姿である俺に対し、まるで汚物を見るかのようだ。

 冒険者として来ている以上、貴族の名は使えないし、ここは大人しく引き下がる他ないか。


「……かしこまりました。それではギルドにホネスティ殿に渡す(むね)相談の上、改めてお伺い致します」


 するとホネスティの眉がピクリと動いた。


「……それには及びません。(わたくし)共でギルドへ報告致しますので」

「有り難い申し出ですが、それは出来ない規則です。それでは失礼します」

「あ、ちょっ――」


 ホネスティの制止を聞く理由もない俺は、そのまま冒険者ギルドへ向かったのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「という訳なんですよ、ラスター(、、、、)さん」

「うわぁ……」


 以前、武闘大会でレミリアを治療した時に同席した、人の良さそうな男――冒険者ギルドの職員ラスター。

 受付越しに事の顛末を話した俺を見て、あんぐりと口を開けるラスターは、とても困っている。どう見ても困っている。


「そ、それ……よくお断り出来ましたね」

「あれ? 断らなかった方がよかったです?」

「いえ、確かに第三者がギルドの仕事に介入する事は禁じられていますが、普通は断らないかなーと……ははは」

「この場合、どうしたらいいですかね?」

「うーん、肝心のエメリーさんは最近冒険者ギルドへいらっしゃってませんし、直接手渡すのは非常に難しいかと」

「勇者の剣って世界の有事ですよね? リプトゥア城に忍び込んで渡しちゃまずいですか?」

「何故笑顔でそんな恐ろしい事が言えるのか私にはわかりません……が、冒険者ギルドとしては問題ないとだけ明言しておきます」


 へぇ、それは意外だな。


「そのための交際費ですからね」

「あー、冒険者が領土に侵入する事もあるからって事で、冒険者ギルドが国や領主にお金を払ってるってアレですね」

「そのアレです」

「リプトゥア城内も対象内だと?」

「領土の総本山では?」

「いや、まぁ確かにそうですけどね?」

「ご安心を。冒険者ギルドは王や領主に危害を加えるような依頼を請け負わない規則がありますから」


 ふふんと胸を張ったラスター。

 危害……ねぇ。勇者に勇者の剣を渡す事自体を「危害」と受け取る国っぽいけどなぁ、このリプトゥア国は。


「ただ、ミケラルドさんは貴族でもいらっしゃいますので、その点に関してはオススメ出来ないのも実情です」

「冒険者として城内に忍び込んでも、貴族としての枷がある……か」


 今、忍び込んだりすれば、それこそリーガル国とリプトゥア国の戦争の引き金になりかねない。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「という訳で、リプトゥア城へ忍び込んで来ます♪」

「支離滅裂だな」


 冒険者ギルドの宿の一室で、ジェイルが真顔で突っ込む。


「バレなきゃいいんですよ、バレなきゃね」

「どうやって忍び込むのだ? かなりの警戒度だぞ、あの城は」

「こうやります」


 言いながら俺は、【フェイクスルー】、【隠形】、【擬態】、【擬態(あらた)】、【静音】、【気配遮断】を発動して見せた。


「「っ!?」」


 二人は目を見開き、俺の変化に驚いているようだった。

 そういえばこの変化を二人に見せたのは初めてかもしれないな。


「驚いたな……」

「私の知覚をもってしても、目の前にいるのに一瞬ミックを見失ったぞ」

「お、リィたんがそう言うなら大丈夫そうだね。それじゃあ行って来まーす!」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 夜になり、人通りが少なくなったリプトゥア城前。

 路地裏から能力を発動し、一瞬で外壁を登り切る。

【探知】でエメリーの反応は確認済みである。【超聴覚】、【超嗅覚】を使い、場所の特定を済ませた俺は、透過能力を使いエメリーがいるであろう部屋を目指した。


「コンコン、こんばんは」


 とは言いつつも、透過能力をエメリーに見られる訳にもいかず、俺は部屋の窓から声を掛けた。


『……誰?』


 窓越しに聞こえた勇者エメリーの声は、気のせいか少しだけ元気がないように思えた。


「あなたを倒した男と言えばいいでしょうか」

「っ!」


 直後、窓が勢いよく開いた。

 窓から顔を出したエメリーは上にいた俺を見つけ(しばら)く固まり……微笑んだ。


「何でそんなところにいるんですか?」

「バレるとまずいので、中へ入っても?」

「えぇ、どうぞ」


 夜中、年頃の女子の部屋に入るという青春男子が羨むこの状況。

 なのに、こちらは仕事というジレンマは一体誰に向ければいいものか。

 エメリーの部屋に入った俺は、早速闇空間を発動し中から勇者の剣を取り出して見せた。


「これは……!」


 勇者の剣を持ち、刀身を見た瞬間……彼女は緊張を解いた。


「……なんだか安心しました」


 俺は口元に人差し指をもっていき、エメリーに口を閉じさせた。

 これは……使うしかないか。


『失礼、扉の外で聞き耳を立てている(やから)がいましたので』

『これは……テレパシーッ?』

『出来れば詮索は無用に願います』

『…………わかりました。けれど聞き耳ってどういう事です? 確かに外には護衛の騎士たちがいますけど……』

『この反応は……ホネスティ殿でしょうね』

『……一体何があったんですか?』


 神妙な面持ちの勇者エメリー。

 この国は、こんな健気な若者を軟禁しているのか。

 更にリプトゥア国が嫌いになった俺だった。

次回:「その240 図画工作」

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