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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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230/917

その229 父との対峙

「おらおらおらおらぁ! その程度じゃ席次すら上がんねぇぞ!」

「ほぉ、まだそんなくだらない順位にしがみつきたいのか?」

「はっ! 魔族にとっちゃ最高の栄誉(ステイタス)よ! アンタだってそうじゃねぇのか、リィたん!」

「この私が?」

「ついこの前、「武闘大会で一等とった!」って皆に自慢して回ってたのはどこの誰だったっけか!?」

「…………さて――」

「――さてじゃねぇよ! おい! ちゃっかり俺の方に敵を誘導すんじゃねぇ!?」

「これも訓練だ、ドゥムガ」

「これは仕返しっていうんだ!」

「わかってるならいい」

「くっ、開き直りやがった!」


 あっちは楽しそうだな。


「百八、百九……百十!」

「数を数える余裕があるなら手を動かせ、ラジーン」

「はい!」

「二百だ」

「あ! ジェイル殿も数えているのではありませんか!?」

「たまたまだ。それ、そっちに行ったぞ」

「くっ、グラビティコントロール!」

「魔法にばかり頼っていては困るな。竜剣、陽炎!」

「あ! それ火魔法使ってる剣技でしょう!? どの口で言われるのですか!」

「無論、この口だが?」

「くっ、開き直りましたね!」


 あちらも楽しそう。

 どうやらリィたんとドゥムガ、ジェイルとラジーンのチームは非常に相性がよく、上手く回転しているようだ。


「この人間風情がぁあああああああ!」


 と、魔族の一団から飛び出て来た一体のダイルレックス。

 それを見るなりドゥムガが叫ぶ。


「カイゼル! おい! そいつぁ魔族十魔士が一つ! ダイルレックス種第一席の――――」

「――――よし、倒しました!」

「おかしいだろうが! どう考えても俺様が戦って、カイゼルに成長を見せつけるところだろうが!」

「俺のところに来ちゃったからしょうがないの! 戦争中に戦いたい相手と戦えるなんて漫画の世界だけだろ!」

「漫画ってなんだよ!?」

「生きて帰ったら教えてあげますよ!」

「奴だけはリィたんとジェイルにやらせろよ、クソガキ!」

「いえ、あの人は……私の獲物です」

「……ったく、なんつぅ目ぇしてやがる」


 ドゥムガが見た俺の目は、遠くで騎乗するスパニッシュに向けられていた。

 このまま戦争が長引けば、スパニッシュ側魔族の軍は壊滅的な損害を受ける。

 そうなる前に、必ずあいつはここへやって来る。だが、それよりも早く叩く方法がある。

 それが、俺という特異な存在。

 俺たちが取りこぼしたモンスターたちは、後方でプレッシャーをかけているガンドフ軍によって袋だたきにされる。

 ミナジリ軍という嵐を前に、魔族たちの顔が曇っていく。


「お、俺は下りる!」

「見てるだけって話だったろ!?」


 と、ドッグウォーリアたちが戦場を放棄し始めれば――、最早(もはや)それは時間の問題だったのだ。


「ガハァ!?」


 仲間の腕を切り落とし、首を跳ねるのはワラキエル家のスパニッシュ。


「恐れをなした雑魚は要らぬ。死ねぃ!」


 相変わらず無茶をするおっさんだ。

 だが、恐怖だけではこの混乱を抑える事は出来ないぞ、スパニッシュ。


「ふん、我が見せてくれよう……魔族四天王の力をな」


 と、スパニッシュが語っている間に、俺はその眼前まで跳び上がっていた。


「こんにちは」

「くっ!」


 腕を大きく払い、スパニッシュは俺の打刀(うちがたな)を押し返した。


「ほぉ~、硬い硬い。生身でオリハルコンの刀身を受けるなんて流石魔族四天王」

「貴様! 何故ダイルレックス(、、、、、、、)が我を!?」


 そう、チェンジで顔を変えダイルレックスとなった俺が、魔族の懐に潜り込んだのだ。

 そして、潜り込めたのならこの顔はもういらない。


「なっ、顔が……っ? 闇? いや光魔法……? っ! これは! 【チェンジ】!?」

「おや、ようやくお気づきになりましたか、父上?」

「っ! ミ、ミケラルドッ……!」

「それが我が子を見る目付きですか、父上?」

「黙れ! 貴様のせいで我は! 我は……!!」

「聞いてますよ? 何でも他の魔族四天王から煙たがられているとか? アンドゥがいなくなり、ダークマーダラー種も手を引いたとか? 今回やって来たのはドッグウォーリアとダイルレックス……魔獣系の魔族が多いですね。付き合いがあると言っても信頼はないように見受けられますが?」

「黙れ! 黙れ黙れ黙れっ! 殺してやる! 今すぐ殺してやる!」

「の割には、動きませんね。もしかしてこの私が怖いので?」

「くっ!」


 かつての理知的なスパニッシュはどこへ行ったのか。

 俺の登場により頭に血が上ったのはわかるが、ここまで我を見失う程か?

 いや、それだけ俺への恨みが根深いのだろう。なら、これを利用しない手はない。


「父上と私の仲です、ここは引いてくれませんか? その方が楽なんですよ。面倒な父上の相手をしなくて済むので」

「ッ!! カァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 なるほど、いきなり魔族の真骨頂――【覚醒】を発動したか。


「腹を吹き飛ばし、飛び散った臓物を踏み潰してやる……!」

「それは……どうですかね……はぁっ!」

「っ!?」

「おやおやどうしたのですか父上? 息子の魔力がここまで成長したのです。是非褒めて頂きたいものですねぇ」


 スパニッシュの震える目は、やがて鋭い目へと変わる。


「我が魔族四天王と呼ばれる所以、その身を以て確かめろ……ミケラルド!」

「絶対に勝てる道もあったんでしょうが、この戦いだけは……誰にも邪魔される訳にはいかないんですよ……父上!」


 これは、俺が乗り越えなければならない大きな壁。

次回:「その230 魔族四天王」

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