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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その226 偵察

「つまりアレか? お前は国より剣をとるって事か?」


 オベイルの口調はどうかと思うが、彼の言い分もわかってしまう。

 アイビス皇后は、何が何でもアイビス皇后とガイアスの二人を守れと言っているのだ。

 俺たちが北東からやってくる魔族を相手にすれば、ここが手薄になり闇ギルドに狙われる。

 しかし、この依頼を受け、アイビス皇后とガイアスを警護すればガンドフは壊滅的な状況に陥るだろう。戦力を分けるにも、情報が足りない。


「どう受け取ろうが構わぬ。(わらわ)はガイアスと共に勇者の剣を完成させねばならぬのだ」


 だが、アイビスの言い分もわかるつもりだ。勇者の剣の作成を急ぐとしている事も、結果としては国のため、民のため……果ては世界のためとも言える。


「ちっ、どうする爺?」

「どちらにしろ、魔族の規模が気になるところだな」

「なら偵察が必要……か」


 だよな。


「私が行きます」

「ボン、鬼っ子に行かせた方が速い」

「いえ、速度ならオベイルさんに負けない自信があります」

「ほっ」

「言うじゃねぇかミケラルド……!」

「それに、ここを離れて一番被害が少ないのは、私でしょう?」


 俺がアイビス皇后を見ると、彼女は口を固く結びながらも俺を見、そして観念したかのように目を伏せた。


「ストラッグさん、最新の情報は?」

物見櫓(ものみやぐら)からの情報では、三千以上としか……」


 その事実を聞き、オベイルが溜め息を吐く。


「なるほどな、この前の小競り合いはその斥候だったって事か」

「し損じた魔族が情報を持ち帰ったか……」


 イヅナの言葉が正しければ、確実に剣神と剣鬼(けんき)を抑えられる数で来るはず。


「こちらの戦力は?」


 ストラッグに聞く。


「ガンドフ保有の重騎士団と冒険者」

「まだ予算はありますか?」


 今度はアイビス皇后に。


「ガンドフからの支援金が潤沢にある。……が、何を考えている?」

「冒険者はこちらの警護に回した方がいいと思います」

「何故?」

「数が数です。集団戦闘なら騎士団の方が慣れていると思ったまでです」


 すると、イヅナが頷いて言った。


「うむ、冒険者は個に対して強いが、集団戦となれば些か不安が残る。ボンの言う通り、闇ギルドには冒険者ギルド、魔族には軍で対応した方がいいかもしれんな」

「だが、まだやると決まった訳じゃねぇ。全ては偵察次第だ」


 オベイルの言葉に頷き、俺は答えた。


「勿論わかってます。その準備だけはしておくにこした事はない。そうでしょう? 皇后様?」

「……ストラッグ、準備を」

「はっ!」

「では、ちょっと行ってきます」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 ガンドフを出て北東へ向かう事数十分、俺は行軍する魔族を発見した。

 この調子で進むと、五時間でガンドフを視界に入れるだろう。

 数はおよそ五千……おっと、ドッグウォーリアとダイルレックスが多くないか?

 つまり魔獣族で構成された軍隊。がしかし、全てが全て魔族という訳でもないようだ。

 ドッグウォーリアの近くにはコボルト系のモンスターが集い、ダイルレックスの近くにはゴブリン系のモンスターが見える。

 だが、どうやってモンスターを操っている? 魔族とモンスターは相容れないはず。

 いや、待てよ? 確かジェイル師匠の血から得た【固有能力】である【威光】を使えば、近しい種族を従えられたな? 軍隊にリザードマンはいない。しかし、【威光】が発動出来るマジックアイテムがあれば話は別だ。

 しかし気になる。俺の知ってる種族ばかりじゃないか。

 俺は高い岩に登り、【超視覚】を発動して軍隊を眺める。

 すると発見したのだ。これ以上関わりたくないと思っていた男を。

 頬から汗を一滴流し、おもむろに呟く。


「お久しぶりですね……父上」


 そう、最後方で騎乗し、鋭い眼光を見せるのは【スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル】。

 俺の父、ダディー、パパである。

 だいぶやつれたが、まだまだ充実した魔力を有しているようだ。

 なるほど、これは魔族も本気という事か。

 ならば俺も手札(カード)を切るしかないな。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「魔族四天王だと!?」


 立ち上がるオベイルの怖い事怖い事。


「吸血公爵が率いる五千に届く軍隊が相手です。数は勿論、中央に飛び込む精鋭が必要になります」


 俺の言葉を聞いた後、オベイルが神妙な面持ちで話す。


「戦いてぇところだが、魔族四天王と言えば冒険者ギルドでSSS(トリプル)に位置づけられてる。ここは爺しかいねぇんじゃねぇか?」


 イヅナを見た後アイビスを見るオベイル。


「そうなればここの守りは手薄になってしまう。イヅナは妾の護衛でなくてはならん」


 直後、オベイルがテーブルに拳を叩きつけた。

 ゲストルームに響く音に、マイアが目を瞑る。

 だが、アイビスの表情は些かも変わらない。


「国が亡びてもいいのか! えぇ!?」

「ここで勇者の剣を造らねばどの道亡びてしまう」

「今は生きる事を優先すべきだ!」

「ならば尚更勇者の剣が必要だな」


 どちらも正しいのだが、こうなっては埒があかない。

 すると、イヅナがアイビスに聞いた。


「他の実力者の招集はどうなっている?」

「現在、近隣のリプトゥア国、法王国では同時多発的に大きな被害が出ていると」


 その問いに答えたのは、ストラッグだった。

 流石、闇ギルド。抜かりないという感じだな。


「では、この面子でやるしかないという事か」


 切り出すならここら辺だろうか。


「いえ」

「何だボン?」


 きっと怒られるんだろうな、オベイルとかオベイルとかオベイルに。


「私は辞退します」


 そう、俺はここでこう言う他ないのだ。

次回:「その227 辞退の理由」

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