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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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224/917

その223 敗北の代償

 馬車の屋根から跳び下りた俺は、馬車を追う三人衆の前に立ち塞がった。

 中央を走っていた背の低い男が何らかのハンドサインを見せると、その二人は俺の前で跳び上がった。

 てっきり俺を襲うのかと思ったが、二人の男は中空で互いに足の裏を合わせて蹴ったのだ。

 宙で方向転換をし、俺の両サイドを抜こうとした二人の男。


「行かせないって!」


 背後に出現する巨大な土壁。

 どこまでもせり上がる壁に進路を阻まれた二人の男が、壁を蹴って戻って来る。

 土壁をそのまま操作し、弧を描き円を造る。突如現れたコロセウムに二人の男が戸惑いを見せる。だが、中央の背の低い男だけは違った。

 俺の土壁を跳び越えようと、とてつもない大ジャンプを見せたのだ。


「くっ!」


 瞬時に強烈な魔力を込め、更にコロセウムの土壁を広げる。


「ちっ」


 背の低い男はドーム状になった漆黒の空間を越える事は出来ず、天井を蹴って俺の前へ着地した。

 直後、空間を裂く風切り音。

 俺は咄嗟に剣を振りその異音を捉えた。

 弾かれたのは小さな金属。土壁で全てを覆った事による弊害――この暗闇を瞬時に利用した相手の力量はかなりのものだろう。

【超聴覚】を発動し、周囲を警戒。

 その後、幾度も聞こえる風切り音。【超聴覚】のおかげもあり、それを掴む事が出来た。


「毒付きの匕首(ひしゅ)か」


【毒耐性】含むあらゆる耐性能力を発動。

 相手は魔法が使えないのか、この暗闇を照らそうとしない。

 いや、もしかしてこういう戦闘にも特化しているという事か。

 ならば、相手のフィールドにわざわざ付き合う必要はない。

 トーチを使い周囲を照らすも、三人は俺の前から消えていた。

【危険察知】が知らせる背後からの悪寒。【脚腕同調】を発動し、背後に向かい超速の抜刀。甲高い金属音に鈍い音が交ざる。

 二人の男は吹き飛ばされるも、やはり背の低い男は……って嘘!?


「御者の爺ちゃん!?」

「…………」


 なんと、荷馬車の御者を務めていた男が、俺の打刀(うちがたな)を受け止めていたのだ。

 顔は全て覆っている。しかし、その目だけで俺は気付いた。

 操られている様子ではない。これはつまり、人の良さそうな御者は演技だったという事。


「凄い身体能力だね、正直面食らったよ」

「それはこちらの台詞だ、ランクSとは思えぬ力量よ……!」

「なるほど、吹き飛んだ二人はランクS程の力。そしてアンタがSS(ダブル)……いや、SSS(トリプル)に近い実力か。単純計算なら要人を狙える構成だな」


 物凄い力だ。【覚醒】を使わなければ厳しい相手。


「これほどの力を隠していたとはな……だが!」


 直後、爺の腕が倍近く肥大した。なんつう馬鹿力!

【瞬発力向上】を発動。


「くっ! この……だ、だが……何だって……?」

「馬鹿な!?」


 コイツ、力は俺に近い。

【瞬発力向上】の能力発動がもう少し遅ければ押し切られていた。


「ええい、何をしている! さっさと起きんか!」


 御者の男は、背後でフラフラになっている二人の部下に檄を飛ばした。

 首を振って意識を呼び戻した二人の男が再度戦闘に参加する。

 こりゃちょっと……やばいかもな!

 全精力を振り絞らないと、こっちがやられる。


「「はぁあああああああああ!!」」

「くっ、はぁ! この!」

「こやつ、【散眼(さんがん)】を使うのかっ!?」


 覚えておいてよかった【散眼(カメレオンアイ)】。

 三つの刃が俺を狙うも、これを使う事によって致命傷を避けられる。


「ッ! 痛ぇ……!」


 二人の男の内一人の剣が俺の肩口を突き刺す。


「何故貫けぬ!?」


【刺突耐性】と【外装強化】、そして【外装超強化】が与える恩恵は計り知れない。


「師より一撃が重い……!」


 なるほど、この二人は御者の男の弟子なのか。【怪力】を発動する事により、相手の攻撃を弾くだけでかなりの時間を稼げる。


「殺意を操るか! 何ともやりにくい相手よ!」


 ラジーンから覚えた【操意(そうい)】を発動する事により、殺意を操り相手への牽制が可能。


「目が……慣れて……きたぞ!」

「いかん! 散開っ!」


 御者の男の指示により後方へ跳んだ二人の男。

 御者の男はその体格を利用し、這うように俺の股下を潜り、後方へ回る。


「くっ!」


 後方から飛ばした御者の男の匕首(ひしゅ)。俺はこれを頭で受ける。


「頭部に鉢金(はちがね)でも仕込んでいるのか!?」


【石頭】と【鉄頭】の併用により、これくらいでは俺の頭部は貫けない。


「くっ!?」


【突進力】と【超突進力】を発動し、御者の男へ跳び込む。


「ぬん! ぐっはぁ!?」


 両手で俺の武器だけは抑えたが、突進による衝撃は逃がせなかったようだ。

 この隙に……!


「く、来るなっ!」

「まぁまぁ、ちょっと血を貰うだけだから!」


 後方へ跳び、二人の内一人の男に接近し、その腕を斬る。

 付着した血をペロリとしながらもう一人の男へ。


「このっ!」

「惜しい、こっちだ」


 男の背後に回り、首筋に爪をチョン。男が首を押さえている間にペロリ。


「首を落とせたものを、何と甘い!」


 御者の男が復活するも、こちらへの警戒ばかりで動けていないようだ。


「いや、この血は良い感じの酸味が効いてるよ」

「何?」


 その会話の後、御者の男は気付く。

 二人の弟子が棒立ちしている事に。


「麻痺……? いや、錯乱毒?」

「ハズレ」


 俺の【呪縛】により弟子たちがくるりと御者の男を見る。


「ちぃ、催眠術か!」


 御者の男は、後方へ跳びながら俺に向かい匕首(ひしゅ)を三本投げた。

 俺はそれを打刀(うちがたな)で振り払い、御者の男を追った。

 ――――だが、


「カァアアアアアアアアッ!」


 全身を肥大させ、【土塊(つちくれ)強化】により鋼鉄並みの強度を誇る土壁を突き破ったのだ。


「化け物かよっ!?」

「どの口が言うか化け物め! 勝負は預けた!!」


 御者の男が向かったのはガンドフとは反対側。【探知】で探るもその方向で間違いない。

 奴を追う事も出来るが、今は要人の護衛のが優先……か。


「ったく、弟子をアッサリ見捨てるってどんだけ修羅場潜ってるんだ、あの爺さん。あ、そこの人たち、名前は?」

「イチロウです」

「ジロウです」


 あの爺はサブロウとでも言う気だろうか。

 何はともあれ、あの爺さんは本当に強敵だったな。一歩間違えばこちらがやられかねない程に。やはり法王国に潜む闇ってのは深淵のように深いのだろう。

 その後、俺はイチロウとジロウに御者の男の情報を聴取した後、ガンドフへ向かった。

 無事着いてるといいんだが。

次回:「その224 ドワーフの国」

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