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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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222/917

その221 元聖女アイビス

「元聖女アイビス皇后……そんな存在が何故こんなところに……?」

「さぁな、そりゃ奴自身が教えてくれるんじゃないか?」


 剣鬼(けんき)オベイルがアイビスを睨みながら言った。

 彼女は一国の皇后。こんな輸送隊に付き添う理由は一体何だ?


「此度の一件、(わらわ)が依頼した事。違約金は後程冒険者ギルドへ支払おう。がしかし、まさかこんなに早く事が露見するとは思わなんだ」

「俺じゃねぇ、こいつだ」


 オベイルは俺に首をくいと向け、アイビスに言った。

 しかし流石SS(ダブル)だ。相手が皇后だっていうのにこの態度。

 是非ともそんな性格に生まれたかったものだ。


其方(そなた)、名は何と申す?」

「ミケラルドにございます」


 俺が名乗ると、侍女の女がアイビスに耳打ちをした。

 コクリと頷いたアイビスが、俺を見て言う。


「なるほど、其方(そなた)があのミナジリか」


 一体どのミナジリの話をしているのだろう。

 というか、ミナジリ領の話ってこんな遠くの国にまで響いてるのか。

 だけどあの破壊魔パーシバルも知っていたくらいだ。俺の知らないところで色々情報が出回っているって事か。


「これは失礼を、ミケラルド・オード・ミナジリにございます」

「よい、妾は其方(そなた)を冒険者として見、話している」

「恐れ入ります」

「ではオベイル」

「あ? 何だよ?」


 この二人、顔見知りなのか。


「妾の護衛、このまま続けてはくれぬか?」

「……理由によるな」


 オベイルがそう言うと、アイビスはストラッグに向かって首を縦に振った。

 すると、ストラッグは一歩前に出て騎士たちに向かい腕を振った。

 人払いなのだろう、騎士たちはすぐさまこの場から離れて行った。


「やつらは詳細を知らないって事か」

「然り。従ってこの事は他言無用に頼む」

「理由によるな」


 流石オベイル君、こんな時でも自分の信念は曲げないか。

 すると、侍女が一歩前に出て丁寧なお辞儀をした後、口を開いた。


「初めまして、皇后様のお世話をしておりますマイアと申します。皇后様に代わり今回の護衛任務についてご説明致します」


 茶色いボブの髪に華奢な体躯。静かな物腰のマイアは冷静な口調で説明を始めた。


「先日、皇后様へ一通の手紙が届きました。それは、ガンドフの鍛治師ガイアス様からの手紙でした」

「ガイアス? あの爺が何でアイビスに?」


 どうしよう、オベイルはわかってる風なのに俺は登場人物からしてわからない。

 とりあえず真顔で通そうと思ったミケラルド君だった。


「ガンドフに対し、魔族の侵攻が始まったそうです」

「あぁ? この前の小競り合いだろ? 俺も参加してたしそんな事は知ってる」

「ガンドフはこれを非常に重く受け止めています。当然、隣国である法王国も。ですから皇后様がガンドフへ向かうのです」

「何のために?」

「聖加護を受けた剣を作るために」

「っ! なるほど、勇者の剣か。つまりアレか? 最高の剣を打つガイアスが死ぬ前に、勇者への剣を造っておくって事か。【聖加護】は剣の制作過程で必要になるもの。剣を造った後じゃ付与出来ないからアイビス自らガンドフに行く他ない」


 え、そういうものなの? 多分出来ると思うけど?


「その通りです」

「でも何故アイビスがわざわざ? 現聖女は何してる? あの鼻垂れアリスは?」


 確かに、現聖女の方が動きやすいはず。

 その鼻炎持ちのアリスがいるにも拘わらず、皇后の地位にいるアイビスが動く理由とは一体?


「それに、アイビスは元聖女だ。【聖加護】の力なんて全盛期の半分以下だろうが」


 オベイルの言葉の通りなら、余計に現聖女の力を頼った方が……いや、待てよ?

 俺の思考が止まったところで、オベイルも気付く。


「っ! もしかしてアリスのやつまだ力が……?」

「えぇ、皇后様がアリス様に力のコントロール指導をされていらっしゃるのですが、まだ……」

「合点がいったぜ。使えない聖女の聖加護より、使える元聖女の弱加護か」


 なるほど、加護が薄かろうが、その段階で剣を造る他ないって事だな。

 でも気になる点が一つ……。


「あの、質問よろしいでしょうか」

「どうぞ」


 俺はマイアに向かい疑問を投げる。


「そのガイアスさんって方を法王国に呼ぶという手段は出来ないのですか?」

「作業場造るだけで半年はかかっちまうよ」


 マイアへの問いをオベイルが答えてくれる。

 なるほど、世間はそういう感じなのか。なら仕方ないな。

 ここで俺が「あ、俺やりますよ」と軽く言おうものなら、問題になりそうだ。

 それこそ国家規模間での問題になる。まぁ、勇者エメリーが困ってたら匿名で剣を送ってやるか。とりあえず今はこの状況を見守る他ない。


「つまり、間に合わせの剣を造りに行くって事か」

「ガンドフの状況が悪化しなければ……ですが」

「ガンドフは剣神の爺も俺もいるんだ、そう簡単にゃ滅びねぇよ」

「……この少数規模の輸送部隊を組織したのは魔族の目を欺くため」

「ガンドフへのオリハルコン輸送任務は珍しいものじゃない。冒険者ギルドの力を使ったのは悪い手じゃない。なるほどな」

「オベイル様、ミケラルド様……どうかガンドフまで皇后様をお守り頂けないでしょうか。そのためならばこのマイア、お二方に身体を捧げる覚悟にございます」


 この言葉がナタリーの耳に入ろうものなら、俺は頬肉引き伸ばしの刑に処されるだろう。


「ガキにゃ興味ねぇ」


 まさかアイビス狙いか? 確かに後五十年若ければ……美人だったろうが。


「俺から条件を出しても?」


 絶賛蚊帳の外状態のミケラルド君。

 そして、オベイルが出す条件とは一体?

次回:「その222 オベイルの条件」

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