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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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216/917

その215 旨味出汁

「それは使えるのか?」

「いや、どう考えても無理だと思うよ?」


 俺とリィたんが訓練の合間の際、会話に出たのはデスクロークラブの【固有能力】の話。

 デスクロークラブから手に入れた【固有能力】は二つ。

 ダンジョンのボスである。当然使える能力は備わっていた。

 一つは【瞬発力向上】、これはとても素晴らしい能力と言える。

 だが、もう一つは残念というか何というか……。


「【旨味成分(、、、、)】か。つまりミックがそれを発動して鍋に入れば――」

「――だからその発想がもうおかしいんだって」

「何故だ? 良い出汁(だし)がとれるのではないか?」

「話のダシにはされそうだけどね。まぁ、人間的感性から言うと、俺の風呂の残り汁を欲しがる人はいないと思うよ」

「ふむ、そういうものか」


 うんうん、リィたんにはどんどん社会勉強をして頂きたいものだ。


「時にミック」

「何ざんしょ?」

「今回のダンジョン探索で更に力を付けたな」

「そう? そんなに変わった気がしないけど?」


 言いながら頬をかいていると、リィたんが俺の眼前にハルバードを向けた。

 次の瞬間、ハルバードが俺の顔に向かって飛んで来たのだ。

 その先端を(つま)んで受け止め、首を傾げながらリィたんの顔を覗く。


「何かのテスト?」

「その通りだ、これまでのミックだったら絶命は免れなかった一撃だ」

「え?」


 何それ怖い。


「筋力、瞬発力、魔力どれをとっても成長していると断言出来る。ミックの強さの根源は得た能力の量以上に、相手の力を得る事なのだろう」

「それってどういう意味……?」

「能力だけではなく、力と魔力も得ていると言っている」

「血や体液を得たら相手の力が加算されるって事か……」


 確かに、これまでの魔力の成長は著しかった。

 こういった理由があるとわかると納得出来てしまう。

血鎖の転換(ブラッドコントロール)】か……やっぱりとんでもない能力だよな。


「うむ、そのままとは言い切れないが微々たるものでもない。確かに吸収している。強さに際限がないあたりは正に魔王と言えよう」

「そんなもの目指した記憶はないんだけどな」

「最強を目指すのであろう?」

「そりゃまぁそうだけど」

「ならば魔王すら超えてみせろ」

「あ、はい」


 とは言え、まだリィたんに勝てないのだ。成長こそするが、その速度は遅々たるものだ。

 勿論、他の冒険者からすればとんでもない速度なんだろうけどな。


「ではまた津波からだ」

「おぇっぷ」


 溺死待ったなしのリィたんフルコースは、そろそろお腹いっぱいであります。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「【イグドラシルの葉】の買い取りですか?」


 冒険者ギルドの受付で俺の質問を聞いたネムは、そう言いながらニコルを見た。

 すると、ニコルは静かに首を振る。


「リーガルでは依頼自体がないですね」

「リプトゥア国でもなかったんだよね、何でだろ?」

「それはミケラルドさんの方が詳しいかと存じます」


 と、横からニコルが言ってきた。はて?


「ミケラルドさん、ご自分が商人だという事を忘れていませんか?」

「あぁそっか、【規制品】!」

「そういう事です。イグドラシルの葉は規制品。売買は商人ギルドを通すものです」

「そっかそっか、完全に失念してました。失礼しました」

「いえ。ところでミケラルドさん」

「はい?」

「そのイグドラシルの葉、今回はいくつあるのでしょう?」

「いや、三十階層って意外に時間掛かって、十枚だけ……」

「商人ギルド受付員の心臓のため、一枚だけ見せてくださいませ」

「ははは……」


 そんなやり取りの後、俺はマッキリーへ転移した。


「あ、ミケラルド様! お疲れ様でーす!」

「やぁカミナ、お店はどう? 何か困ってない?」

「順調も順調ですよ! ミスリル関係の武具も売れてますから、今月の収支も安心出来そうです!」

「おっけ~、修理(リペア)付与(エンチャント)で困ったらこっちに送ってね」

「はい!」


 マッキリー店の中では、ミナジリ領の領民が手慣れた手つきでお客を捌いている。

 カミナの指導もいいのだろう。今度ボーナスでも出すか。

 心豊かに、お財布も豊かに、それがミケラルド商店のモットーである。


「おはようございます、ミケラルド様」


 マッキリーの商人ギルドへ到着すると、いつもの受付員が深々と頭を下げる。


「おはようございます」

「本日も商品登録でしょうか?」

「えぇ、少々貴重なモノを仕入れまして」

「これまでにそうでなかったためしはないかと」


 さて、ニコルの話を鵜呑(うの)みにする訳ではないが、可能な限り受付員の心臓の負担を減らすか。


「ははは、今回はダンジョン産ですよ」

「……それはどちらの?」


 外堀から埋めていけば、自分から気付いてくれるだろう。


「リプトゥア国の首都」

「――っ!」


 何故なら相手は情報を何よりも重んじる商人ギルドなのだから。


「か、かしこまりました。商人ギルドへ卸して頂けるという事でよ、よよろしいでしょうかっ? ……か?」


 それでもこの反応か、ニコルの助言も間違いじゃなかったな。


「おっと、当然勉強して頂けるんでしょうね?」


【交渉】の発動を忘れてはいけない。


「も、勿論です! どうぞ、奥へ!」


 さぁ、ランクAダンジョンのクリア報酬はいくらになるのか……!

次回:「その216 リッツという男」

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手の能力だけでなく、ステータスも得ていたのか。 そりゃ凄い勢いで強くなるはずだ。 血は一舐め程度なのに、凄いな
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