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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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207/917

その206 集う傑人

「闇ギルドじゃと!? お主、闇人(やみうど)じゃったのか!」

「元だよ、元。だからパーシバルの動向にもアタリが付いたの」


 ラジーンへの口撃(こうげき)が始まっても面倒なので、早めにフォローを入れておく。


「かといってSSS(トリプル)がリィたんに勝つような実力を付けるとは思えないんだけど?」

「私もそう思います。しかし、闇ギルドには表に出ていない鍛練法や、魔法、技術が多く存在します。天賦(てんぷ)の才を持った破壊魔パーシバルであれば、Z区分(ゼットくぶん)の実力に辿り着く可能性も……なくはないかと」


 ラジーンがそう言うと、グラムスが立ち上がり扉へ向かった。


「どちらへ?」

「知れた事! パーシバルを連れ戻すまでよ!」

「闇ギルドまで?」

「当然じゃ!」

「どこにあるか知ってるの?」

「知らん!」

「潔いのは認めるけど、それだったらミナジリ領にいれば? パーシバルの狙いは俺とリィたんだろうから、ここにいた方が会える可能性は高い。それに、ミケラルド商店の情報網も馬鹿に出来ないよ?」

「ふははははっ! その言葉を待っておった!」


 待ってた描写がねぇぞ、爺ちゃん。

 さては、最初から演技してたな? 何とも食えない爺さんだ。


「で、儂は何をすればいい?」

「いやに協力的だね?」

「お主をからかう時間は終わったという事じゃ」

「はぁ……ラジーン、雇用契約書(、、、、、)を」

「はっ」


 消えるラジーン。


「こよーけいやくしょー? 何じゃそれは?」

「まだ試作段階だけど最近作ったんだよ。奴隷契約の効果を流用して、互いにフェアな契約を結ぶものだよ」

「ミケラルド様、こちらを」


 ラジーンはすぐに戻り、二枚の羊皮紙を俺に渡した。

 俺はそれを一枚グラムスに渡す。


「二枚同じものだ」


 俺がそう補足すると、グラムスはつらつらと目で文字を追った。


「ほぉ、肝心な部分はここか。『ミナジリ領で知り得た情報を外部に漏らしてはならぬ』とある。それが破られた時、坊主にバレる仕組みか。刑罰執行者の欄にリィたんの名があるな?」

「いい脅しだろう?」

「何とも恐ろしい契約書じゃ。これのどこがフェアなんじゃ?」

「各種サービスと納税免除ってところでかなりそっちに傾いてるよ。でも、結ぶのも結ばないのも自由。だけど結ばなければお帰り頂くか行動を制限させてもらう。それだけだ」

「なるほどな、儂が乗り気と見て瞬時に方針を変えた訳か、食えない坊主だ」

「それはお互い様だよ」

「…………いいじゃろう、ノッた」

「ではサインを」


 ラジーンが用意した筆を取り、俺とグラムスは互いに契約を交わした。

 これにより、魔帝グラムスは我がミナジリ領の食客となった訳だ。

 そのグラムスは、ラジーンに案内されミナジリ領の防備の説明とそのフォローに回った。

 グラムスが侵入した経路が潰れれば、ミナジリ領の防備はより強固になる。それだけでウチにはかなりの利益となる。

 利益は金ばかりではない。安全を買い、使うのも利益と言えるのだから。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「……やぁ」


 それから三日後。

 開店して間もないミナジリ領の冒険者ギルドへ行くと、早速ジェイルが仕事をしたと理解した。ジェイルへの仕事は至ってシンプルだった。

 リプトゥア国の剣聖レミリアが常駐するギルドへ赴き、ただ伝言を伝えるだけ。

 伝言とは(すなわ)ち、レミリアの剣が出来た知らせ。

 レミリアの挨拶により、周囲の注目が集まる中、やってきたのはリーガル国のギルドマスター、ディック。


「おいおいおいおい、何でこんなところに剣聖がいるんだよ?」


 ディックのヤツ、最近ニコルと共謀して気軽にミナジリへ来るんだよな。

 まぁ、それも転移魔法の力があってこそか。


「む、来たか」


 更に現れるジェイル師匠。


「あなたは……昨日の?」


 ジェイルがレミリアに伝言を伝えたのだ。勿論、面識はあるだろう。


「確かジェイル殿……」

「うむ、ここではなんだ。奥へ行こう」


 ジェイルの指示にディックが首を傾げる。


「おい、ミック。何でジェイルが仕切ってるんだ?」

「ご存知ありませんでした? 彼、私の師匠ですよ」

「へ、へぇ……」


 ギルド奥にある応接室は、スポンサーが使う事も可能だ。

 多額の寄付をしているミケラルド商店のオーナーが使えないはずもない。

 ネムとニコルに手を振り、顔パスで関係者出入口へ向かった俺、ジェイル、ディック、レミリア。

 ディックは俺からジェイルの話を聞いて、緊張しているようだが、レミリアは違った。

 どうやら俺とディックの会話を聞いていたのか、レミリアはいつでもジェイルに飛びかかれるような警戒を敷いていたのだ。

 当然、背後から斬りかかるような事はしない。

 いくつものシミュレーションを重ね、ジェイルへの攻撃を仕掛けるレミリアに、ジェイルが溜め息を吐く。


「レミリア、勝負ならば後で受けよう。今は話が先だ」

「む、そ、そうだな。失礼した」


 応接室へ入った俺たちは、示し合わせたかのようにソファーへ座った。

 当然、俺とジェイルの前にレミリアが座り、ディックは端で壁に寄りかかっていた。


「それで、話とは何だ?」


 切り出すのは俺。


「レミリアさん、一つ賭けをしませんか?」

次回:「その207 剣聖への勧誘」

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