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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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205/917

その204 魔帝グラムス

 豊かな白鬚(しらひげ)、皺の多い顔と鋭い眼光。

 頭はトゥルトゥルであるが、内包する魔力は確かに強い。


「夜に忍び込むにしては中々斬新なローブですね」

「こりゃ儂のトレードマークじゃ!」


 そんな真っ白なローブ着て凄まれても、こちらは反応に困るというものだ。

 背も小さく見たところ八十代? それ以上かもしれない。


「はぁ~……リィたん。危険はないみたい。放してやって」

「怪しい挙動があれば、斬るからな」


 リィたんは突き刺すような視線を向けるも、グラムスはリィたんの視線等意に介していなかった。


「……ミック、何故この者は私の胸ばかり見ているのだ?」

「まぁつまり……そういう人種って事で」


 ぬぅ、どこぞの漫画に出て来そうなエロ爺ポジションか。

 だがしかし、リィたんの胸に興味を示すとは流石魔帝だ。


「ふん、何ともおっかない女子(おなご)であったわ」

「おっぱい固定の熱視線(ガンランス)向けた後に言う台詞でもないよね」

「ほぉ? (ぬし)も女子に執心のようじゃのう」

「そういうのいいから。で、目的はさっき言ってたやつだけ?」

「いや、まだある」


 これ以上何があるというのだろう。


「茶と……菓子じゃ!」

「リィたん、斬ってもいいって」

「何でじゃああ!? 遠路はるばるやってきた魔帝(わし)を労うのは当然じゃろうて!」

「呼んでないし。そもそも泥棒じゃん」

「儂がいつ泥棒をしたというのじゃ!」

「じゃあ不法侵入者って事で」

「それは認めようじゃないか!」


 態度が図太いが、正直この性格は嫌いじゃない。


「ほら立ってください。話は応接室で聞きますから」

「うむ、苦しゅうないぞ」


 と、グラムスが立った瞬間、ローブの下からとんでもないモノが落ちてきた。


「これは?」


 俺がワナワナ震えながら聞くも、グラムスは返事すらしなかった。


「ミスリルの彫像だな、応接間に飾っておいたやつではないか?」


 ジェイルが言うと、グラムスはさっと目を逸らした。


「やっぱり泥棒じゃん!」

「ぶはははは! 儂はちゃんと言っただろう! いつ泥棒をしたかと!」

「さっきだ!」

「ほっほ! 正解じゃわい!」


 にゃろう、ホント良い性格してやがる。


「ったく、さっさと歩いてください」

「老人は労るものじゃぞ、若人よ」


 そうグラムスが言うと、


「老いを自覚した策士程恐ろしいものはないぞ、ミック」

「流石ジェイルさん、良い事言う~」

「ぬぅ、ミナジリ領か……やはり侮れんな……!」


 応接間に着き、俺は先の一件の顛末(てんまつ)をグラムスに伝えた。

 当然、書類の詳細については伏せたまま。


「なるほどのう。それは(すなわ)ち浄化。これに近いと言える。道理で儂の攻撃が効かぬ訳よ」

「ほぉ、面白いな。戦わずして勝ったとは」

「古今東西あらゆる事象には理由がある。今回は強い思いが原因か。確かに面白い……」


 グラムス、リィたん、ジェイルは各々の感想を呟き俺を見た。


「まぁそんな訳で、私としても今回の戦闘は未知の領域だったんです」

「光魔法でこねてやればいいという訳でもなかったという事だな。うむ、勉強になったぞ、小僧」

「小僧はやめてください」

「では坊主じゃ」


 小僧の方がまだよかったかもしれない。


「それで、ここは何じゃ?」

「不法侵入しておいてその発言が何事ですかね? ようこそミナジリ領へ、グラムスお爺ちゃん」

「そんな事はわかっとる。武闘大会の覇者リィたんがミナジリ領の食客(しょっかく)だという話は噂にて聞き及んでいた。しかし、屋敷を囲う手練れたちは皆ランクSに近い実力を有している。中でも闇の衣を纏ったあの男はSS(ダブル)に近い実力……」


 ラジーン部隊の事か。


「そして、そこの者」

「む?」


 ジェイルをずびしと指差し立ち上がるグラムス。


「剣の腕だけならば剣神に近いであろう。何故これだけの実力者がこんな辺鄙な場所に集っておる?」


 魔の帝王と言われるだけあって、魔力の多寡には敏感なようだ。

 当然、全員の底は見えていないようだけどね。


「辺鄙かどうかはお前が決める事ではない」


 リィたんの言葉を受け、グラムスが目を向ける。胸に。


「確かに、楽園は存在するようじゃな」


 真顔で決める言い回しがエロ爺過ぎる。

 いや、かつては俺もリィたんの横乳だとか下乳に(うつつ)をぬかしていた事があった。この爺さんの気持ちもわからないでもない。だからこそ言おう、話が前に進まないから。


「リィたん、悪いんだけど外してくれる?」

「む? 仲間外れは嫌だぞ」


 俺もリィたんが離れてしまうのは嫌である。


(むし)ろ特別だよ。ちょっと頼まれて欲しい事があるんだよね」

「面白い事か?」

「まぁそれなりには」


 俺が耳打ちをすると、リィたんは途端に嬉しそうに目を輝かせた。


「うむ、行ってくるぞミック!」


 とても楽しそうである。ありゃしばらく帰って来ないな。

 そんなリィたんの背中を苦笑しながら追っていると、今度はジェイルがずいと顔を覗かせた。


「ミック、仲間外れはいただけないぞ」


 何を言ってるんだ、このトカゲ師匠は?


「ごめんなさい、ジェイルさんじゃ萌えないっす」

「萌え……?」

「いやまぁ、ジェイルさんには別件でお願いしたい事があります」

「ふっ、それを早く言え」


 我が家に棲むリバイアタンとリザードマンは、頼られるのがお好きみたいです。

次回:「その205 破壊魔の動向」

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[気になる点] 魔族がいることばれたけど・・・。
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