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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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200/917

その199 えくそしすとみっく

 まるで感動のラブストーリーでも始まるのかってくらいの見つめ合いを続け早五分。

 アレは一向に動こうとしなかった。

 白い服の女性。その情報しかなく、俺は目を逸らさぬまま、少しずつ、(かに)歩きをしながら屋敷の扉に向かった。

 扉のノブに手を掛けようとした瞬間、扉がけたたましい音を鳴らした。


「……お、音響効果バツグン……」


 正直、心臓が口から飛び出るかと思った。

 ただ、これだけはわかった。


「歓迎はされてないみたいだね」


 ノブをひねると「ドン!」という強い衝撃音が扉を叩く。


 何コレ、超怖い。


「……そうだよな。何も言わずに入るのは失礼だよな」


 そう思い、俺はノブから手を放し、扉をノックした。

 コンコンコン……そう、三回叩いたのだ。

 すると、扉からは「ドンドンドン!」という返答が届いた。


「なるほど、入ってるのか」


 中にいる存在が便座に座っているかいないかはともかく、俺は中に入らざるを得ないのだ。

 コンコンコンコン……今度は四回のノック。

 するとやはり同じ回数だけ扉を叩いて返ってくる。

 コンコココンコン……少しだけリズムを変えてみると、やはりリズミカルに返してくる。


「リズム感……良し! うーむ、才能豊かな相手だな」


 相手が何であれ……少しだけ楽しくなってしまうのは仕方がないだろう。

 楽しみ半分、恐ろしさ半分。そんな気持ちで俺は扉のノブを再度ひねったのだ。


「おぉ……開いた」


 俺が帰らないと諦めたのかは不明だが、ようやく屋敷に入る事が出来た。

 昼間だというのに薄暗い屋敷内。光魔法(トーチ)の魔法を発動し、中へ入る。

 一歩、二歩、三歩……何事もなかったのはそれまで。


「っ!?」


 背後からまたけたたましい音。

 それは、扉が物凄い勢いで閉まる音だった。


「……やばい。お決まりのパターンだこれ」


 と思ったのも束の間。


「あ、そっか」


 俺はポンと手を叩いたのだった。

 扉の前まで戻り、俺は思いきり扉を蹴ったのだ。


「ほい」


 扉は先程以上に物凄い音を発し、外の中庭まで吹き飛んでいく。


「……よし、脱出経路確保」


 そう、ホラー映画で家に閉じ込められるのは一般人なのだ。

 扉を叩いて「開けて! お願い開いて!」なんて叫ぶのは、このファンタジー世界に似つかわしくない。


「ふっ、吸血鬼ミケラルドに死角なし!」


 そう思い、さぁ解決してやろうと振り向いた瞬間……そこにソレはいた。

 ぞわっとし粟立つ肌。正に俺の死角にいつの間にかいたソレは、黒く長い髪の間から血走った目を覗かせた。


「あ、泣き黒子(ぼくろ)


 黒髪のキューティクル度、目下の泣き黒子、そこそこのスタイルと白い肌。

 長い髪に阻まれ顔の全貌はわからないが……とても素敵な女性なのでは?

 直後、俺は物凄い力に吹き飛ばされてしまった。


「つぉ!?」


 まるでハンマーにでも殴られたような衝撃。

 外まで吹き飛ばされ、着地した俺が再度屋敷内へ向かう。

 しかし、


「んなばかな!?」


 俺が吹き飛ばしたはずの扉が宙を舞いながら戻っていく。

 歪な形の扉はギリギリと音を発し、入口を塞いでいた。


「開けて! お願い開いて!」


 中に入りたい俺は、いつの間にか扉を叩いていた。

 しかし、叩けど叩けど扉は開いてくれなかった。


「ったく、しょうがないな……ほい!」


 再度扉を蹴る。

 今度は屋敷内に向かい、扉だった板が転がっていく。


「こうして……こう!」


 そしてサイコキネシスで扉を持ち上げ、火魔法でそれを焼き尽くす。


「……よし、侵入経路確保」


 もう俺の侵入や脱出を阻むものはない。

 先程の白い服の良い女は、どうやらここにはいないようだ。

 だが――


「うわぁ……面倒だなこりゃ……」


 屋敷の中から無数の無機物が俺に向かって来る。

 壺、絵画、包丁と様々である。


「よっ、ほっ、ふっ、おっと!」


 それらをかわしながら前に進んでいると、今度はかわしきれないサイズの箪笥(チェスト)が飛んできた。

 これを「チェストォオオオ!」とか叫びながら斬るのは、流石におっさん臭い。


「チェストォオオオ!」


 だが、俺はおっさんだから別にいいのだ。


「ふむ、止まったか」


 ヒステリックな攻撃は()りを潜め、屋敷内に静けさが戻る。


「まったく、自分の家だろうに……物は大切にすべきだろ」


 そう言いながら俺は、壁にぶつかって壊れてしまった物を修理(リペア)で直した。


「お? おぉ?」


 すると今度はトーチの光度が徐々に弱くなってきたのだ。

 これは魔力を吸い取られているのか?


「なるほど、そうきたか」


 暗闇は恐怖心を煽るホラー映画の醍醐味。

 光魔法やライトで中を照らすのは、ここにいる存在にとって御法度のようだ。


「魔力量なら負けない――ぞっと!」


 すかさず俺はトーチへの供給魔力を上げ、更に五つのトーチを発動させた。

 まるで太陽の真下にいるかのような明るさに、


「まぶしっ!?」


 自爆とも言える俺の声に紛れ、奥から叫び声が聞こえた。

 声のピッチを下げ、加工したかのような低い叫び声に俺は驚きを隠せなかった。


「優秀なSE(サウンドエフェクター)がいるのだろうか?」


 首を傾げる俺が更に歩を進める。

 すると、弧を描く素敵な階段がそこにあった。


「いいなこれ。ウチにも欲しい」


 ハンニバル家のセンスに唸りながら階段を昇る。

 しかし、俺は足を止めた。いや、止めざるを得なかったのだ。

 最後の階段の上で見下ろすのは先程の白い服の女。

 スカートから覗かせる御御足(おみあし)も素敵である。


「ナニ……モノ……ダ……」


 どこから声が出ているのかわからない程の低音。

 どうやら彼女の腹の中に音声加工の職人がいるらしい。


「本日付でエクソシストに就任した……ミケラルドと申します」


 たとえ相手が誰であろうと、自己紹介って大事だよね。

ホラー映画の主人公は、絶対にミックにしちゃいけないと思った作者でした。


次回:「その200 ごぉすとばすたぁみっく」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノリと勢いにめちゃくちゃ笑いました! 特に『開けて!お願い開けて!』の辺り 中からじゃなく外からってところがw
2023/12/17 22:38 退会済み
管理
[一言] お前!?戦闘シーン描くの苦手だろw
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