表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/917

その197 強い癖

「これまでランクAの依頼もなかったのに、いきなりリーガル国にランクSの依頼がきます?」


 俺がディックにそう聞くも、ディックは目を合わせてくれなかった。


「ランクAはなかったぞ、ランクAはな」

「……ランクSはあったと。その言い方だと私がシェンドで活動するより前にあったのでは?」

「はっ、流石に察しがいいな」


 ようやく目を合わせてくれたディックは、肩を(すく)めて言った。


「でも、ディックさんやゲミッドさんなら対処出来たのでは?」

「俺もゲミッドも引退済みだ。対処出来るのはランクS以上。ランクAの段階でミケラルドたちに教える訳にもいかないからな」


 なるほど、冒険者ギルド故の弊害というやつか。


「でもなぁ、これから忙しくなるんですよね……私」

「そうかい? ミケラルドにも決して悪い話って訳じゃないんだがな」

「それはどういう?」


 俺が聞くと、リィたんが割って入ってきた。


「いいミック、ならば私が行こう」

「そう? なら助かる――」


 と、俺が言い掛けると、


「――おっと待った」


 すかさずディックが話を止めた。


「へ?」

「悪いなリィたん、今回は冒険者ギルドからミケラルドへの依頼だ」

「何?」


 リィたんの鋭い視線がディックを襲う。

 ディックは俺を横目で見ながら小さい声で言った。


「おい、助けろ」

「金縛りにでもあってるんですか?」

「あぁ、正に蛇に睨まれた蛙といったところだ」


 まったく、どうしてリィたんを怒らせるような言動をとるのか。

 いやまぁ、ディックがそういう判断を下した訳ではないのだろう。


「リィたん、ストップ。まずは話を聞いてから。ね?」

「……ふん」


 つんとするリィたん。どうやら言う事を聞いてくれたようだ。


「ふぅ……」


 ホッと胸をなで下ろすディックに俺が聞く。


「で、何で私に指名依頼が?」

「冒険者ギルド本部がミック、お前に目を付けた。そういう事だ」

「……回答になってないですよ」

「表向きには『ミケラルド・オード・ミナジリ』の実力を精査し、今後の指名依頼に耐えうる存在かを見分したい……との事だ」

「回りくどいですね。本音はどこにあるんです?」

「俺の私見が交ざってるかもしれないが……聞いておくか?」

「是非」


 するとディックは深い溜め息を吐いた後、気まずそうにリィたんを見たのだ。


「冒険者ギルド本部は、リィたんとの摩擦を起こしたくないように思える」

「ほぉ、それはどういう事だ?」


 リィたんの疑問は当然だ。

 ディックはナタリーとジェイルを見た後、更に周囲を見渡す。

 そして、他に誰もいないとわかったところで更に声を落とした。


Z区分(ゼットくぶん)という異常な存在。たとえギルド本部であろうとも手に余る。これ以上、リィたんに特権を与えたくないんじゃないか……ってのが俺の考えだ」

「ふむ……どう思う? ミック」

「まぁ、本部の気持ちになればそれは当然かもしれないよね。ギルド公認の武闘大会で覇者という成績を残したのであれば、当然、主催者としてランクSの称号を与えざるを得ない。でもそれ以上の力を持ってもらっては困る。ギルド本部はそう考えている……か。ん? 待てよ?」


 俺が首を少し捻り考えてると、ディックが俺を指差したのだ。


「そういう事だ。リィたんよりミケラルドの方が御しやすい」

「やっぱり……」

「つまりギルド本部は、早いとこミケラルドをSS(ダブル)に上げたいんだろう」

SS(ダブル)に? 何でまた?」

「言ったろう? 手綱を握るならリィたんよりミケラルドだって」

「いや、それならレミリアさんとかでもいいのでは?」

「長期的に見ればそうなのかもしれない。だが、ギルド本部は即戦力を求めているようだ」

「……読めませんね?」

「ミケラルド、お前はSSS(トリプル)に近い実力者だぞ? 剣鬼(けんき)魔皇(まこう)とは違い、癖も強くないというギルド本部の判断だろう。つまるところ、早い段階で唾を付けておきたいんだよ」


 これは褒められているのか、それとも(けな)されているのか。

 しかし、SS(ダブル)剣鬼(けんき)魔皇(まこう)はそんなに癖が強いのか? なら何故SS(ダブル)にしたのかとギルド本部長を問いただしたい気分だ。


「ま、破壊魔よりかはマシだがな」


 パーシバルはやはり問題児なんだな。


「剣神は他の三人に比べるとまともだが、放浪癖があってな。呼び出したい時にいないってのがほとんどだ。そこで目を付けられたのが――」


 全員の目が俺に集まる。


「……何ですそれ? ギルド本部の操り人形って事です?」


 ディックはまた肩を竦めた。今度は無言で。


「首都リーガルのギルドマスターとして何かコメントが欲しいところです」

「ギルド側の俺がそれを認める訳にはいかねぇよな」

「だから私見……ですか」

「ま、傀儡(かいらい)になりたきゃなればいいさ」

「そんな他人事な……」

「俺はそうは思ってないからな」

「は?」

「だからここに来たんだ」

「ど、どういう事です?」


 俺がそう聞くも、ディックはリィたんを見るのだ。

 うんうん頷くリィたん、そしてジェイル。

 くすりと笑うナタリーに視線を向けると、ナタリーは無邪気な笑みを見せて言った。


「ふふふ、どう考えても、その中で一番癖が強いのはミックだよね♪」


 ……これは褒められているのか、それとも貶されているのか。


「そういうこった」

「じゃ、じゃあ何で来たんですかっ?

「だから来たんだって」

「んな支離滅裂な……」


 俺が呆れ眼でディックを見る。

 するとディックは腰に手を当て、威張るように言ったのだ。


「ミケラルド、お前がギルド本部を手玉にとるのを見たくてな!」


 ニカリと笑ったディック。


「冒険者は自由でナンボだ。今回ばかりは本部のやり方が気に食わん。だから俺は()えて今回の一件に乗ったんだよ」

「……乗ったのは泥船かもしれませんよ?」

「だったら言ってくれよミケラルド……『大船に乗ったつもりでいろ』ってなっ!」


 バシンと肩を叩くディックの期待に押され、俺は再び溜め息を吐いた。


「はぁ……ならまずは材料選びから始めましょうか……泥以外でね」

「ははははは!」


 快活に笑うディックの声が、屋敷に響き渡った瞬間だった。

 さて、『俺にとって悪い話じゃない』ってどういう事なのか。

 ランクSさえ(つまず)く依頼とは一体……?

次回:「その198 根回し」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ