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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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192/917

その191 ミケラルドの全力

「勇剣、烈聖(れっせい)!」


 神々しく光る勇者の剣は、振り下ろすと同時に俺の視界を覆った。

 っ! これはっ!?


「くっ!」


 最早(もはや)それは生への渇望に近い脊髄反射とも言えた。【疾風迅雷】、【ヘルメスの靴】を発動し、俺は前へ駆けたのだ。


「竜剣、稲妻!」


 竜剣の中で最も剣速の速い一撃を下段から振り上げ、彼女の振り下ろしを止める。


「う、嘘っ!?」

「正直、まともにくらってれば私の負けでした」

「だ、だからって私の攻撃段階で懐に跳び込むなんてっ! そ、そんな事っ!」

「何とも末恐ろしい方だ……!」


 俺は後方一帯に広がるクレーターを横目に、ゴクリと喉を鳴らした。

 この少女は、凄まじい潜在能力を持っている。

 この力は、遅かれ早かれ俺やリィたんに届く力。

 ……だからといって、ここで負ける訳にはいかない。

 彼女は……俺が全力を出さなければいけない相手……!

 発動するは【魔力(まりき)還元】、【隠形】、【弱点察知】!


「そこ!」

「くっ! 嘘、攻撃力が……っ!?」


 発動するは【超聴覚】、【闘志】、【威嚇】、【健脚】、【石頭】、【恐怖耐性】、【危険察知】!


「はぁっ!」

「これをかわすのっ!? な、なら!」

「おらぁ!?」

「頭で受けるなんてアリ!?」



 発動するは【刺突耐性】、【切断耐性】、【突進力】、【斬撃耐性】、【打撃耐性】、【外装強化】!


「そのまま受けきれると思ったら大間違いですよ! やぁっ!」

「おぉおおおおおおっ!」

「な、何で怯まないのっ!?」


 発動するは【攻撃魔法耐性】、【暗衣(あんい)】、【縦横駆け】、【地形無視移動】、【壁走り】、【視野拡張】!


「オーラショット!」

「くっ! だが甘い!」

「壁走り!? 何で魔法を受けながらそんな速くっ!?」


 発動するは……【付与(エンチャント)】!


「はぁ!」

「うぁっ!? 何……この熱さっ!? まさか試合中に付与(エンチャント)をっ!?」


 かち上げたエメリーの剣が宙で止まる。

 だが、エメリーはその異常事態に気付いていない。


「よっ!」

「そんな気の抜けた跳躍で何が出来るんですか! オーラブレイド!」


 光魔法の具現化で剣を出したか。不用意に剣を手放したのではなく、次の手が残っていたからあの剣に執着しなかったのか。

 幻想の着地点を追ったエメリー。だが、そこには俺がいない。


「嘘、何で!?」


 目で俺の姿を追い、見つけた時にはもう遅い。


「何で剣が宙で……!?」


 サイコキネシスで止めた剣を足場に、俺は全力を出す瞬間を待っていた。

 エメリーの剣がひしゃげる程の強い跳躍。

 俺はエメリーに向かい剣を振る。


「ゆ、勇剣! 烈火!」

「竜剣、猛火!」


 かつてない衝撃。

 その一瞬の攻撃で、エメリーの光の剣(オーラブレイド)は力を失う。


「くっ、も、もう一度!」


 再度オーラブレイドを発動させようとしたエメリー。

 だが、それをさせる程、俺は甘くないのだ。

 俺が発動するのは【フェイクスルー】。

 ラジーン戦の直前、ラジーンが姿を眩ませていた【闇魔法】。


「いない!?」


 彼女の背後に回っていた俺が、最後に発動するのは闇魔法【催眠スモッグ】。

 不意を()かれては彼女もこの魔法に対処は出来ない。

 眼前でフラフラになるエメリーは、そのまま膝から崩れるように倒れた。


「おっと」


 その小さな肩を支え、俺は彼女をゆっくりと抱きかかえた。

 瞬間、審判が天高く手を上げる。


「勝負あり!」


 盛大な歓声によりコロセウムが揺れる。

 たったそれだけではあるが、彼女は、エメリーはすぐに目を覚ました。


「凄いですね、こんなにすぐ気がつくとは」

「……あ、え? わ? わっ、わっ!?」


 抱きかかえていたのが恥ずかしかったのか、彼女は俺の腕の中で真っ赤になって暴れていた。

 すぐにその場におろし、背を向けるエメリーに称賛の言葉を送る。


「私の持てる全ての力を出しました。素晴らしい試合をありがとうございました」

「…………負けたんですね」


 観客の反応、役目を終えた審判。そして、俺の言葉を受け、エメリーは自らの負けを理解したようだった。

 そしてくるりと反転し、微笑みながら俺を見てもう一度言った。


「負けちゃいました」


 おかしい、悔しさは確かに見えるのだが、そこまで悔しそうでもないように見えるのは何故だろう。


「やはりミケラルドさんは私の【運命の人】でした!」

「運命の……人?」


 新手の告白かと思ったが、そんな冗談を言う場所でもない。

 そう考え、俺は試合の開始直前にエメリーが言った言葉を思い出した。


 ――――実は私、この試合を楽しみにしていたんです。


 何故かと問いかけるも返って来なかった答え。

 それがこの【運命の人】というワードなのではないか?


「それはもしかして天啓(、、)――って事です?」


 この数ヶ月、何の情報も得なかった訳でない。

 この世界でいうところの【勇者】は、天の啓示を受け、天恵という名の力を得る。

 その際に聞く天啓は、神の言葉だとか何とか。

 まぁ、これは全て前にネムに聞いた事だが、神からの言葉に俺の存在があるとは思わないだろう、普通。

 しかし、くすりと笑うエメリーの表情に、普通ではない答えがあったのだった。

次回:「その192 水龍と吸血鬼」


次回はいよいよリィたんとミックの決勝戦!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 運命の人って、魔王ってことじゃ……w
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