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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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182/917

その181 剣聖の真価

 木剣を持つ俺とレミリアが対峙し、中央にはリィたんが腕を組みながら立つ。

 まさか格下ランクの男に手合わせを申し出るとは思わなかった。

 だが、師匠(ジェイル)の剣が褒められたのだ。ここは誇るべきだろう。

 当然、逃げる訳にもいかない。ジェイルの剣を汚してはいけないからだ。

 中段で剣を構える俺を前に、レミリアもまた中段で構えた。

 二人の視線が重なり、リィたんが頃合いと見たかすんと鼻息を吸った。


「始め!」


 直後、レミリアは俺の前から姿を消した。


「聖剣、閃光っ!」


 消えたと思った瞬間、俺の前に姿を見せたレミリアの鋭い突き。


「竜剣、剛翼!」


 俺はすかさず上段へとシフトし、その突きを叩き落とす。

 正面に倒れ込むレミリアが大地を掴み、押しのける。正面から来るはレミリアの御御足(おみあし)。別名美脚とも言うその美しさに心奪われるも、俺は足で小円を描きながらかわす。


「竜剣、鉤爪(かぎづめ)!」


 反転しながらの斬り払い。

 やはりそこにはレミリアがいない。


「聖剣、光翼!」


 いつの間にか跳び上がっていたレミリアは、パーシバルに放った剣技と同じものを繰り出した。彼女の遠距離技はこれしかないのだろうか。……いや、剣聖と呼ばれる程の実力者だ。これだけではないはず。


「はぁ!」


 剣を振りそれを弾くと、その奥には更なる斬撃があったのだ。


「聖剣、裏光(りこう)の一撃!」

「にゃろ! 竜剣、竜巻!」


 一撃目の斬撃は目眩まし。裏にへばりつくようにあったもう一撃が本命だったのか。

 竜巻による爆風で距離をとり、更には裏光(りこう)の一撃の威力を弱めた俺は、跳んでそれをかわした。今度は俺が……遠距離攻撃だ!


「竜剣、咆哮っ!」


 重き斬撃がレミリアに向かう。


「聖剣、千雷(せんらい)!」


 一撃一撃は低威力。だが、無数の斬撃を飛ばし俺の咆哮の威力を軽減している。

 質と量の勝負は互角に終わり、レミリアの顔に笑みが零れる。


「楽しそうですね」

「そちらこそ」


 なるほど。彼女の場合、剣で語った方がわかるようだ。

 実に脳筋ぽくて良い。とてもわかりやすい。


「これがミケラルド殿の全てではないのでしょう? 是非ともその全てを受けたい!」

「なら、少し意地悪な事をしても?」

「戦いにそれは関係ない!」


 なら、やってみるか。


「行くぞ!」


 レミリアが駆ける。俺に向かって一直線に。


「よっと」


 レミリアの眼前に現れる土壁(、、)


「くっ! まさかっ!?」


 勢いに任せ突き破ろうとしたレミリアだったが、


「ここで溶かす!」

「やはりか!」


 真下から現れる土の拳がレミリアを狙う。


「確かに……意地悪だな!」


 あの時同様、レミリアはそれを剣で受けた。

 パーシバルの【エアプレス】なら模倣可能だ。さぁ、どう返す?


「はぁああああああっ!」

「っ! なんつう剛剣!?」


 地面に向かい思い切り剣を振る事で、空中で一旦止まった!

 これでは発動した俺の【エアプレス】のタイミングがずれる。

 まるで見当違いの場所で衝突し合った風の圧力を横切り、レミリアが優雅に着地する。


「次の魔法を用意していないとは意外だ」

「傷つける事が目的じゃないですから」

「ほぉ、傷つけられると?」

「あ、そう受け取っちゃいます?」


 俺が苦笑しながら言うと、戦いの行方を見守っていたリィたんが腕組みを解いた。


「ふむ、それまでだな」


 やっぱり。


「む、何故だリィたん殿?」

「忘れているかもしれないが、ミックは武闘大会の参加者だ。どんな些細な怪我とはいえ、それは認められるものではない。たとえ回復魔法があろうともだ。それがわからぬレミリアではあるまい?」


 ここまで言われてしまっては、レミリアも剣を納める他ない。


「それに、ギャラリーも増えてきたようだしな」


 言われてみれば、周囲にはいくつかの視線を感じた。

 姿を隠しているという事は、おそらく武闘大会の参加者ってところか。

 俺の実力を見る良い機会とみたか。それとも単純な興味本位か。


「そのようだ。次の機会を心待ちにしよう」

「機会があったら是非ミナジリ領へ来てください。歓迎しますよ」

「なるほど、それはいいな。うん」


 俺の提案を快く受け、レミリアとの手合わせは終わった。

 やはり一流。一度受けた攻撃はちゃんと対策を練っていた。

 実力者ともなると、見習うべき点が多い。この手合わせ、悪いものではなかったな。


 レミリアと別れ、俺とリィたんが仮設住宅へ戻ると、ネムが不満気な表情でお出迎えしてくれた。


「遅いですぅうう」


 むくれるネムをもう少し見ていたいところだが、今日は色々とあって疲れてしまった。

 そして、これから食事を作る気にもなれないという点から、


「よし、何か食べに行こうか」


 この結論に至るのは当たり前の事だった。

 パァっと表情を明るくしたネムは、子供のように跳びはね喜びを露わにした。


「既に美味しそうなお店はチェックしてあるんです!」


 こういうところは大人であり、とても子供だ。


「ミック! 私は肉がいいぞ!」


 リィたんはとても龍だ。


「それじゃあ、血が(したた)った良いお肉を目指して、行きますかっ!」


 そして俺は……果たして何者なのだろうか?


「「おぉ~!」」


 明日からの連戦に備えなくちゃな。

次回:「その182 破竹の勢い」

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