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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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169/917

その168 断罪

「この者がドノバンか」


 ブライアン王の目は、悪魔の如く鋭かった。

 内に秘める怒りは、このドノバンにも届いている。

 拘束をしている俺の手から、ドノバンの恐怖(ふるえ)が伝わってくるからだ。


「……何か情報は得られたか?」

「アルフレド様の件は概ね」

「聞こう」

「叛意は少なからず。それに亀裂を入れたのがこのドノバンであると」

「方法は?」

「陛下と同じ目にございます」

「……そうか」

「陛下、アルフレド様は……?」

「吐いた唾は呑めぬ。あいつが行動を起こした事は確かだ。何かが変わるという事はない」

「左様でございますか……」


【看破】で見た限り、当時のアルフレドには確かに大きな悪意があった。

 そこにつけ込んだのがドノバンではあるが、遅かれ速かれアルフレドは行動を起こしていたという事だ。


「だが――」

「――ひっ」


 ブライアン王は腰の剣を引き抜きドノバンの首元に当てた。


「リーガル国の国益を損ねたこやつの命を助けるつもりはない」

「な、何でもお話致しますっ! ど、どうか命だけはっ!」


 王の剣が首元に食い込む。

 背伸びをしながらその切っ先を逃れようとするドノバン。


「ミケラルド」

「はい、陛下」

「何故止めぬ?」

「止めるだけの権力を、私は持ち合わせてはおりません。それとも、止めた方がよろしかったでしょうか?」

「王を諫めるのも其方(そなた)の役目だ」

「かしこまりました、陛下。では一つ、この者、我が領内の労働力として頂いてもよろしいでしょうか?」

「どう使う?」

「勿論、リプトゥア国への間者として」

「……なるほど、こちらの情報を与えずに、リプトゥア国の情報を得るという事か。しかし、どう手綱を握る? こやつが逃げない保障はない。いや、縄を解けばすぐに姿をくらますであろう」

「そこは、我が一族(、、)の秘技で管理致します」

「……ふん、よかろう。しかし、そやつがリプトゥア国に利をもたらした場合、責任はとってもらうぞ」

「かしこまりました」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「死……死ぬかと思った……」


 リーガル城の前でドノバンが四つん這いになりながら憔悴してる。


「爺さんの四つん這いなんて萌えないんだよ。ほら、さっさと立つ」

「まったく、老人を労るべきではないのか……」

「調子良いこと言ってると自我を取り除くぞ?」

「いえ、助かりました! ホント、感謝致しますぞ!」


 昨日の敵は今日の友……ではないが、俺の催眠療法によって改心したドノバンは、胸をなで下ろしながら俺に感謝した。


「ラジーン」

「ここに」


 当然、ラジーン君もその部下も俺の配下に加わっている。

 ブライアン王が呼んだのはドノバンだけ。彼らの処遇は俺に一任されているのだ。


「ミケラルド商店の応接室で待ってろ」

「はっ」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 応接室では、ドノバンとラジーンが正面に腰を下ろす。

 俺の両サイドには、今回の功労者であるジェイルとリィたんが座っている。


「さて、聞きたい事が山ほどある。何から聞こうか……」

「二人の関係についてからだな」


 ジェイルの言葉に、ドノバンとラジーンが向き合う。


「ラジーンはリプトゥアが抱える暗殺者だのう」

「えぇ、俺はリプトゥア国王のゲオルグに雇われていました。ドノバンが間者の任に就くと共に、リーガルの諜報活動を始めたのです」

「水晶の通信で護衛料ふんだくってたよね? あれは問題なかったの?」

「あれを聞かれていたのですかっ?」

「気付かなんだ……」


 ラジーンとドノバンが顔に驚きを浮かべる。


「……本来であればあの段階で、リプトゥア国としてはドノバンを切り捨てる必要があります。しかし、個別の依頼があれば話は別です。(もっと)も、費用については足下を見たつもりです」

「呑むしかなかったからのう」

「そういう事か。それじゃああの水晶はゲオルグ王が渡したって事?」


 すると、ラジーンが首を横に振った。


「あれは闇ギルドの所有物です。私がドノバンに貸し与えました」

「そうそれ、闇ギルドってどこにあるの?」


 俺の質問に、ラジーンは顔を曇らせながらも静かに話してくれた。


「……ギルド本部は法王国に。支部はリプトゥア国にだけあります」

「つまり、闇ギルドとリプトゥア国王は繋がっているって事か」

「正確には闇ギルドの支部との繋がりです。本部はリプトゥア国の掌握を目的としていたので、まずは国王に恩を売る腹づもりだったかと」

「詳しくは知らされていないと」

「その通りです」

「もしかして他のギルドメンバーの事も知らないなんて事――」

「――その通りです。私の直轄の配下以外は顔も知りません。支部長からの仕事は、手紙か水晶通信のやり取りが主でした」


 なるほど、徹底してるな。


「水晶で定期的に連絡をとらないといけないの?」

「用がない限り連絡はありません」

「それ、盗聴されてるって知ってた?」

「「っ!?」」


 やはり知らされてないか。


「まぁ、連絡がきたらいつも通り対応してくれればいいよ。変化が起きた時教えてくれればいいから」

「わ……わかりました……」

「ラジーン」

「え?」


 ラジーンに声を掛けたのはリィたんだった。


「お前の序列はその闇ギルドとやらの何番目だ?」


 確かにそれは気になるところだ。

 ランクSSに近い実力を持っているであろうラジーンは、その中で何番目の強さなのか。


「ギルド支部内での序列は三位……とだけ」

「本部では?」

「……わかりません。本部の場所は支部長しか知らないので」


 沢山の事を聞いた。

 しかし、掘っても掘っても、その底は見えないまま。

 人間の作った深淵の如き闇は、俺に強く拳を握らせたのだった。

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