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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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165/917

その164 竜の尾

2020/3/4 本日1話目の更新です。ご注意ください。

 ミケラルド君が最近得た【固有能力】、【透過】は非常に有用な能力である。

 この能力を使用すると、壁を通り抜けられる……というのは当たり前の話なのだが、壁の中で留まる事も出来るのだ。

 これを利用するだけで、ギュスターブ子爵――アンドリューの屋敷に忍び込む事が簡単楽ちんなのだ。益々人間離れしてきたミケラルド君のかよわい心(、、、、、)には(ひび)くらいは入っているだろうが、回復魔法があれば安心だね。

 本日はこのアンドリューさんのお宅の壁から、ブライアン王の怒りの矛先――ドノバン君鑑賞をしてみたいところだ。まぁ、ほんの少し顔を出さなくちゃいけないが、【擬態】能力を使えば俺は最早壁と言っても過言ではない。


「ドノバン様……お手紙が届いております」

「何?」


 これまでどれだけの悪事に手を染めたのかわからない程のご尊顔(くそじじい)(しわ)が多く整えてはいるが所々跳ねた白髪。眼光は鋭く使用人を見る目は疑いに満ちている。歳の頃合いは七十前後といったところか。

 使用人から手紙を奪うように受け取ったドノバンは、まじまじとそれを見た。


「……馬鹿なっ」

「ドノバン様……?」

「くっ! いつまでそこにいるのだ! 下がれ!」

「は、はいっ!」


 使用人の女性を下がらせたドノバンは、震える手で手紙を見つめる。

 手紙とは(すなわ)ち――首都リーガルへの召喚状(、、、)

 当然、これは俺がブライアン王に頼んで作ってもらった本物である。

 さて、この後のドノバンの行動が気になるところだ。

 逃げるならその経路と交友関係を調べ、徹底的に叩く。

 とぼけるのであれば、表だって踏み込んで捕らえる。

 こちらとしては前者が望ましいところだが、奴がそこまで愚かだとは思えない。

 自国の不利益に繋がる事を、間者がするというのは考え難いのだ。


「くっ、背に腹は代えられぬか……!」


 ドノバンが向かった先は部屋の隅にあるクローゼット。

 そこには、俺が先日見たばかりのアレがあった。

 冒険者ギルドに代替品の販売約束を取り付けた――アレ。

 まさか間者にこんなものを用意していたとは、リプトゥア国のリーガル国への攻撃は本気だという事か。

 アレとは(すなわ)ち遠隔連絡が可能なギルド通信用の水晶。

 一体どこから手に入れたのかが甚だ疑問であるが、一国の力と考えれば普通なのかもしれない。


「……聞こえるか」


 ドノバンが通信相手にそう言うと、しばらくの後水晶が静かに発光した。


『何だ?』


 低くしゃがれた男の声だった。


「仕事だ」

『……条件次第だ』

「報酬はリーガル白金貨五十枚」


 何とも法外な報酬内容だ。


「仕事内容は儂の警護」


 そうきたか。おそらくドノバンはもう気付いている。ブライアン王がドノバンの正体に気付いた事を。

 当然、リプトゥア国はドノバンを切る他なくなる。ならばドノバンが自国に頼る訳にはいかない。逃げる訳でもとぼける訳でもない……第三の選択。自分の身を守るという結論。


『何をそんなに怯えている』

「お、怯えてなどおらんっ」


 どもっちゃったらダメだろう。


『対象は?』

「……ミケラルド・オード・ミナジリ」


 やはり、俺の脅威に気付いていたのか。


『新進気鋭の王商(おうしょう)、冒険者、貴族……なるほど、竜の尾を踏んだか。奴が襲ってくると?』


 どうも竜です。


「……用心のためだ」

『嘘はよくない』

「っ!」

我々(、、)を甘く見るな……貴族がお前に刃を向ける理由なぞ一つ。(にしき)御旗(みはた)の下、お前を捕らえるため。対象は本当にミケラルド・オード・ミナジリか? リーガル国の間違いだろう?』


 我々――というところが気になるな。

 しかし相手は有能だな。ちゃんとドノバンの足下を見ていらっしゃる。

 この後は破談か条件変更か……。


リプトゥア(、、、、、)白金貨で百枚(、、)、それが条件だ』

「っ!?」


 そう、リーガル国を相手にするんだ。その段階でその人間にとって、リーガル国の金の価値は下がってしまう。何故なら、お尋ね者になってしまうからだ。使うにしても危険が増えるだけ。ならば他国の金を要求するのは当然の事である。


『我々を甘く見るなと言っただろう。お前が屋根裏に貯めている逃走資金くらい把握している』

「くっ!」


 格は……相手のが上か。

 ドノバンの屋根裏貯金の存在を知りながら盗まないという事は、仕事には忠実な相手……という事か。だが、それだけに厄介だ。『我々』とは一体何者なんだ?


「……わかった。リプトゥア白金貨で百枚だ、ただし成功報酬だ」

『いいだろう』

「……こちらへはいつ?」

『報告のため一度ギルド(、、、)に寄る。明日の早朝には着くだろう』

「急げ……」


 この場でドノバンを捕らえる事は容易い。しかし、相手の存在も気になるところだ。

 ここは泳がせる他ないか。

 それに、調べる事も出来たしな。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 それからシェンドの町に戻った俺は、受付をするネムの下に来ていた。


「あ、ミケラルドさん!」

「やぁネム」

「今週で最後なんですよ、ここのお仕事っ」

「ミナジリの冒険者ギルドには、もう色々準備しておいたからね。引っ越す時は俺が護衛するよ」

「本当ですかっ!」

「勿論、タダで」

「やったぁ!」


 ぴょんぴょんと跳びはねて喜ぶネム。

 リーガルのニコルとの話がついたので、ネムとニコルはミナジリ領の冒険者ギルドへ移る事が決まった。来週からその準備、来月あたりには正式稼働が出来るだろう。


「あ、そうだネム」

「何です?」


 キョトンと小首を傾げるネム。


ギルド(、、、)って冒険者ギルドと商人ギルドの二つだけだよね?」

「えぇ、そうですよ。公式には」

「何だそれは……」

「あくまで噂の範囲ですけど、世界にはあるらしいですよ。闇ギルド(、、、、)ってやつが」


 なるほど、そういう事か。

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