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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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161/917

その160 お土産

「しかし、私としても落とし前はつけたいところです。本日ギュスターブ卿にお越し頂いたもう一つの事業(りゆう)、無償にて執り行わせて頂きます」

「いや、しかし……よろしいのか?」


 ギュスターブ卿は俺、ランドルフ、そして何故かリィたんを見ながら確認する。


「ミックの誠意が受け取れぬ器か」

「頂こう」


 先程からリィたんがこの場を仕切っている気がする。

 まぁ、あれだけの反則級の魔力を間近で見せつけられては、何も言えるはずもないか。

 そういえばそうだったな。リィたんと最初出会った時、俺は土下座で彼女を出迎えたのだから。


「ギュスターブ卿をお送りしがてらお見せしますよ」

「それは楽しみだな」

「さてミック」


 今度はランドルフが俺をミック呼びしてきた。

 まぁ、ここは表の世界ではない。ギュスターブ卿の前だからと言って別に気にする事でもないか。


「リィたんは一体何者か?」

「彼女の前でそれを聞きます……か」

「いや、彼女の前だからこそだ。それを話すには彼女の、リィたんの許可が必要だろう?」

「ほぉ、人間にしては(ぶん)(わき)えているではないか」


 言っちゃったよ。


「なっ!」


 ギュスターブ卿が立ち上がる。

 人間ではない事をバラしたようなものだからな、今の発言は。


「よい、ギュスターブ卿。陛下もご存知の事だ」


 ランドルフがギュスターブ卿を制止する。

 ランドルフとブライアン王が認識しているのは、このミナジリ領に魔族がいるという事実だけ。

 それ以上の情報は俺が吸血鬼であるという事しか知らない。リィたんの素性はトップシークレットなはずだったんだけどなぁ。何事も万事上手くいく訳じゃないって事か。


「陛下がっ!? しかし、それではミナジリ卿は……っ!」

「おっとギュスターブ卿、それ以上は口を噤んでおいた方が得策ですよ」


 姿を見せるまでは危険。それがこの時の俺の判断だった。

 俺は立ち上がり、話を続けた。


「予め、我々はリーガル国の味方であると明言しておきます。衣、食、住がある今の暮らしを続けたいだけです」


 そして、先の一件でギュスターブ卿が落とした剣を拾い上げ、【鍛冶(ブラックスミス)】の技を発動させた。


「リィたん、いいかい?」

「ミックに任せる」


 ならば、こちらの方が効果的……だな。


「リィたんの正体をこの場、この段階で申し上げる事は難しいのです」


 ミスリルの剣は熱により折れ曲がり、二つに分かれ、溶けて球体に変わる。

 その球体が少しずつ形を変え、先日ドマークが見たあの像(、、、)へと変わっていく。


「お土産です。お二人には是非持ち帰って頂きたい」


 彼らの眼前に置かれたのは、二つの水龍像だった。


「何という事だ……!」


 ギュスターブ卿は頭を抱え、ランドルフはただ黙って驚いた。


「先のあの言葉(、、、、)に……嘘偽りはなかったという事か……」


 ギュスターブ卿の言葉はリィたんの「国が滅ぶ」発言の事を言っているのだろう。

 先程受けた魔力圧と、匂わせたリィたんの正体が彼らの頭の中でどう動くのか。

 それは俺にはわからない。しかし、リィたんのこれまでの態度を理解させるには悪い動きではないかもしれない。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 その後、俺はギュスターブ卿を彼の屋敷に送り届けながら、約束通りシェンドとギュスターブ領の道路を舗装した。

 みるみる変わる道路に興奮したのか、ギュスターブ卿は馬車から身を乗り出していたのだった。

 そして、俺はミナジリの屋敷に戻った訳だが、


「何でランドルフ様がここに?」

「レティシアが今日はここに泊まりたいと言うのでな」

「大人しくそれに従ったと? 言い聞かせる事もなく?」

「言葉は凶器なのだぞ、ミック」


 にゃろう、まるで言葉を覚えたばかりの子供じゃないか。


「ミックーっ!」


 まぁ、あんなに嬉しそうなレティシアを帰すのも気が引ける……か。


「レティシア様、今日はお泊まりになるそうで。どちらのお部屋なのです?」

「ふふ、ナタリーとコリンと同じ部屋でお泊まり会ですの」


 なるほど、幼女(おとまり)会か。


「よろしいのですか、ランドルフ様?」

「構わぬ。レティシアの友情を阻む方が問題だ」


 流石、王家の血がなくとも公爵になった器なだけはある。

 ちょっとばかりお調子者だけどな。


「ミック、私はリンダと共に休ませてもらう。お主はラファエロと語り合ってはどうか? 歳も近いのだろうし」

「前に言いましたが、私は三歳ですよ」

「おぉ、そういえばそうだったな! ははははははっ!」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 まぁ、(ラファエロ)と親交を深めるのも悪くないだろう。

 という訳で、俺はサマリア公爵家の嫡男ラファエロがいる部屋へお邪魔したのだった。


「はははは、ミナジリ卿の前では父上も素に戻れるようですね」

「ラファエロ様、どうかミケラルドとお呼びください」

「ではミケラルド殿と。ミケラルド殿も私の事は気軽にお呼びください」

「ではこちらもラファエロ殿と」

「ありがとうございます。しかし、今日は大変でしたね」

「お恥ずかしいところをお見せしました」

「いえ、まさかアンドリュー様があのような振る舞いをされるとは思いませんでした」

「ラファエロ殿とアンドリュー殿はお知り合いなのですか?」

「昨年まで通っていた騎士学校の先輩でした」


 そんな学校があるのか。


「ギュスターブ辺境伯のように気高く、理知的な方だったはずなのですが、あの荒れようは驚きました」

「レティシア様は何も?」

「レティシアもアンドリュー様を怖がってはいませんでした」


 やはりそうか。

 俺の【看破】にも反応しなかった事から、根は真面目なヤツなのだろう。

 だが、そう考えるとおかしいかもしれないな。彼の行動の全てにラファエロの言う理知など感じられなかった。いくら俺がギュスターブ家に喧嘩を売るような真似をしたとしても、表向きには公爵家の指示でやった事になっている。

 とても理知的なヤツが起こす行動ではない。

 ……もしかしてこの件、まだ片付いていないのかもしれない。

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