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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その157 落成式

 本日は待ちに待ちたくなかった落成式。


「ミック……ど、どうかな?」


 厨房でコック姿となったナタリーの顔には緊張が窺える。


「うん、バッチリ。立派な副料理長だな」

「ほんと!? よぉーし、が、頑張る……!」

「ミケラルドさん♪ 私はどうです?」


 何故エメラが俺に感想を求めてくるのかは疑問だが、とても似合っていらっしゃる。


「えぇ、ナタリーと揃って完璧な副料理長ですね」

「うふふふ、だって、ナタリー?」

「お母さん! お父さんに褒められただけじゃ足りないって言うのっ!?」

「誰もそんな事言ってないわよ。けど、誰でも褒められるのは嬉しいものよ」

「むぅうううっ!」


 頬を膨らませるナタリーと、それをからかう母親(エメラ)の構図が愉快である。


「コホン」


 あざとく咳払いするのは二人の副料理長のボス……ジェイル料理長である。

 え、何コレ? ジェイルも褒めなくちゃいけないの?


「……に、似合ってますよジェイルさん」


 ……何と気味の悪い笑顔だろう。

 イケメンダンディズムが台無しである。


「ではこれより調理を開始する」

「「おぉ~!」」


 どうやらコックサイドは問題ないようだ。

 さて、お次は使用人サイドだな。

 厨房を後にしようと背を向けると、背後からナタリーに呼び止められる。


「ミック」

「ん?」

「ミックもその……似合ってるよ?」


 はて? いつもの吸血鬼スーツだが?

 まぁ、ナタリーが褒めてくれるのも珍しい。この賛辞は有り難く受け取っておこう。


「うん、ありがとう」


 笑顔を振りまいて仕事に向かったナタリーを背に、俺は落成式のパーティー会場である広間へ向かった。

 そこではメイド服を着たコリンが食器を並べ、燕尾服を着たクロードが小走りになりながら各テーブルをチェックしている。


「あ、お兄ちゃん!」


 コリンが俺に気付き、とてとてと走って来る。


「お、コリン。頑張ってるな」

「うん! この後はお料理を運ぶの!」

「その後は?」

「えーっと、お片付けまで待ってる……だったっけ?」

「よーし、正解。上手く出来たら中庭に遊具を造ってあげよう」

「ほんと!? コリン頑張るっ!」


 何て健気な!?

 眩しすぎてあこぎな商売している自分が恥ずかしく思える。

 いや、まぁ法は遵守しているつもりだけどね。

 しかし、あの純粋無垢で屈託のない笑顔には勝てないな。


「ふぅ」

「クロードさん、どうですか様子は?」

「ミケラルドさん。そうですね、ワインやジュースなどの飲み物の準備は万端です。しかし、凄いですねあの【冷蔵庫】というのは。冷やすだけでジュースが何倍も美味しくなりました」

「食材の保存も出来るから生活も劇的に変わると思いますよ。徐々にミナジリ領に普及させるつもりですよ」

「楽しみにしています」

「けど思い切りましたね? 裏方でもよかったんですよ?」

「大丈夫です。ここで私が頑張れば、貴族の方々からもエルフの理解が深まると思いますし」

「……わかりました。俺も協力を惜しまないつもりです。何かあったらいつでも頼ってください」

「ありがとうございます」


 そう言った後、仕事に戻って行ったクロード。

 さて、そろそろエントランスでお歴々を待つ頃合いだろうか。

 エントランスに向かうと、そこには本日の俺の護衛二人が立っていた。


「ミケラルド様!」

「やぁカミナ、今日は宜しくね」

「はい! 全身全霊を込めてお守りいたします!」


 意気込むカミナ。

 うーむ、パンツルックがとても()えるな。

 カミナも……そしてあそこで難しい顔をしているリィたんも。


「ミック、この服窮屈だぞ……」

「ちゃんとリィたんに合わせて仕立ててもらったんだけどな……」

「ピッタリですけどね?」


 カミナの言う通り、どこも緩くもなくキツくもない様子だ。


「とくにこの首元! 本当に破いてはダメなのか!?」

「あぁ、うん。そうだね。人間の文化ってそんな感じだよね」


 シャツの襟元をキッチリしたら、どんな人間でも最初はうざったいと思うだろう。

 まぁ、リィたんの場合は龍だけどな。


「むぅ……これではミックを守れるか心配だぞ……」

「一体何から守るつもりなの?」

「無論、外敵(、、)からだ」


 それは最早(もはや)、外敵というか怪獣からじゃなかろうか?

 そんな話をしていると、シュバイツがこちらに向かい歩いて来た。


「ミケラルド様、リュース家、ファイズ家の方々がいらっしゃいました」

「よし、それじゃあよろしくお願いしまーす!」


 屋敷に来客の合図と共に号令をかける。

 最初やって来るのは下級貴族の一番下、男爵位の貴族からだ。

 次に俺と同等の子爵位、下級貴族の一番上、伯爵位。

 この順番こそ、格上の貴族を待たせないための暗黙の了解である。

 逆に上級貴族はそれを読んで時間ギリギリにやって来なければならない。

 上級貴族であるサマリア公爵が一番乗りしては、他の貴族連中が、公爵家に失礼を働いた事になってしまうからだ。

 まぁ、シュバイツが言うには多少の前後は許されるらしいけどな。

 屋敷の扉を解放し、エントランスで彼らを出迎える。その中にはドマーク商会のドマークの顔もあった。

 少々の社交辞令と握手、貴族の姫君には軽く頭を垂れ挨拶を。貴族階級の上下に多少の差はあれど、俺は順調に各貴族と挨拶をかわしていった。

 そして遂にご対面である。


「ミケラルド様、ギュスターブ辺境伯様でございます」


 シュバイツの耳打ちにより心が引き締まる。

 やって来るのは金色の長髪をしたイケメンダンディ。歳の頃合いは四十の半ばだろうか。

 口を囲う髭のデザインカットも素敵である。優雅に歩く佇まいとその優しくも鋭い眼光は正に大貴族に相応しいだろう。

 彼こそが【アーダイン・ロベル・ギュスターブ】。我がミナジリ領地のお隣さんである。


「ギュスターブ辺境伯、お初にお目に掛かります。ミケラルド・オード・ミナジリにございます」

「うむ、本日はご招待感謝しますぞ。息子のアンドリューだ。昨年の成人の儀により、貴殿と同じ子爵位となったばかりだ。仲良くしてやってくれ」


 ギュスターブ辺境伯の後ろには仏頂面の金髪イケメンが立っていた。歳はこの世界での成人が十八歳だから、今は十九歳って事か。ナタリーが見たら涎でも垂れるんじゃないかってくらい整った顔立ちだが、いかんせん愛想がない。


「アンドリュー殿、ミケラルドと申します。どうぞ宜しくお願い致します」

「……ふん」


 おやおやおや?

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