表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/917

その155 オリハルコンのすゝめ

 リィたん、ジェイルの話を聞くに、俺が制作した武具はどれも異常な出来だという話だった。その理由を考え、辿り着いた結論が……魔力という事だ。

 技術として覚える事の出来る【鍛冶(ブラックスミス)】を保有しているだけでは、熟練したドワーフでさえもミスリルの加工が限界。しかし、オリハルコンという伝説の鉱石を扱う事が出来るのは、ドワーフの国――ガンドフでも一人しかいないらしい。


「そして、その武具に付与魔法を施せる者は、世界中探してもミックくらいしかいないのではないか?」

「お、大袈裟ですよジェイルさん……」

「だといいがな」

「ま、まぁこれで屋敷の内装が揃ったので、一安心ですね」

「だといいがな」


 スヌーズ機能でも付いているのだろうか、このトカゲ師匠は?


「それで、今は何をやっている?」

「オリハルコンの刀に対し、【隠蔽】を施してます」

「む、青白い発光が消えていく。この白き銀は……ミスリルか?」

「これで俺の武器を見た人はミスリル製の武器だと思いますよ」

「貴族というのも大変だな……」


 そうなのだ。

 領内にいるジェイルや、自由な冒険者であるリィたんならば別にオリハルコンの武器を持っていても何も言われない。しかし、貴族の俺が持っていると目立ち、あらぬ嫌疑をかけられてしまう。まぁミスリルならそこまで波風は立たないだろう。


「ミック、これなぁに?」

「うぇ?」


 いつのまにかジェイルの隣にナタリーがいた。

 ナタリーはソレを摘まみながら覗き込む。ナタリーの目がボォっと青白く光る。


「綺麗……」

「あぁ、これはね。こうしてミスリルのチェーンを通して……ほい」

「わぁ、ネックレス!」

「【暗衣(あんい)】の魔法を付与したオリハルコンのネックレスだよ。ナタリーにあげる」

「ぇ? えぇええええっ!? い、いいのっ!?」

「ミナジリ領の創設メンバーだろ? ナタリーだけ持ってないのはおかしいだろ?」

「ほ、本当にいいの……?」

「ほれ、付けてあげるから頭こっちに」

「う、うん……」


 ナタリーの首にそれを掛け、チェーンの留め具をはめる。


「よし、出来た」

「……ど、どうかな?」

「うん、よく似合ってる」

「そ、そう。……えへへ……」


 ナタリーがもじもじと照れる。

 頬を紅潮させているところを見るに、かなり嬉しかったようだ。

暗衣(あんい)】は魔法に対し強い耐性を持った魔法だ。これを付けている限り、ナタリーにはそんじょそこらの魔法ではダメージを受けないだろう。


「あ、あとこれも持っておいて」

「新しい……ナイフ?」

「そのミスリルナイフには【トーチ】の魔法を付与してある。暗いところで便利だぞ」

「おぉ~、作業が捗るね!」

「あ、そうだ。エメラさんとクロードさんにも渡しておいてよ」

「うん! わかった! えへへへ、ミック! ありがとねー!」


 きゃっきゃと喜びながらナタリーが去って行く。

 エメラには【サンダー】を付与したミスリルソード。

 クロードには【エアスライス】を付与したミスリルアロー。

 彼らの身を守る分にはこれで十分だろう。

 そんな事を考えていたら、これまで口を噤んでいたジェイルが口を開いた。


「五十カラットはあるオリハルコンのネックレスだったな」

「ん~、そんなもんですかね」

「……ナタリーには後で言っておく」

「何をです?」

「それは国宝級のアクセサリーだとな」

「そういえば言い忘れてましたね」

「ナタリーは見向きもしなかったが、そちらのオリハルコンの結晶は何に使うつもりだ?」

「販売目的用です。まぁこれには付与魔法はしませんけど」

「庶民は絶対に買えないぞ?」

「相手は庶民ですけど庶民感覚の人じゃないですよ」

「ほぉ、一体誰だ?」

「それは数日後にわかります」


 ◇◆◇ 三日後 ◆◇◆


「これはこれはミナジリ卿。落成式の招待状、確かに拝領しましたぞ。当日は楽しみにしております」

「いえいえ、こちらこそ。ドマーク(、、、、)さんがいらっしゃると聞き、家の者も皆張り切っています」

「はははは、ありがとうございます。それで、今回はこのようなところで一体何を?」

「ドマークさんにわざわざ商人ギルド(、、、、、)へお越し頂いたのは他でもありません」


 俺はドマークをマッキリーにある商人ギルドへ呼び出した。

 首都リーガルに商人ギルドがないのは本当に面倒ではあるが、国にギルドを一つ建てるだけなら確かにマッキリーは絶好の立地なのだ。

 そして、今回彼をこの商人ギルドに呼んだのには、やはり別の理由(わけ)がある。

 この商人ギルドでは、商店や商会同士が売買や契約などに利用出来る個室がある。

 そして、何の交渉をするのかを事前に商人ギルドに説明しておけば、それは公式なやり取りとなる。個人が商店に商談を持ちかける時にも、当然利用される。

 しかし、その利用者がドマーク商会とミケラルド商店となると、流石の商人ギルドの連中も目を丸くしていた。

 彼には全てを伏せここに来てもらったが、来てくれるだけの信用はあると踏んでの行動だった。


「まだ私は規制品の売買が出来ないんですよ」


 これを伝えるだけで、ドマークの表情が変わる。

 そう、今回のビジネスは規制品の売買。

 ランクAの商人――相手がドマーク商会でなくては売れないのだ。


「お見せ頂けますかな」


 俺は闇空間からオリハルコンの結晶を取り出す。


「これは……!」


 オリハルコンの欠片は規制品ではない。しかし、【鍛冶(ブラックスミス)】の技術により結晶……いや、塊となったオリハルコンは【規制品】の対象なのだ。

 さて、いくらの値段が付くのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ