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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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154/917

その153 ミナジリへの帰還

 リンダの武器は弓、しかし矢がないという事は……。


「ふっ!」


 やっぱり魔力で矢を形成している。

 これは風魔法の一種か。先のクレア然り、エルフは風魔法が得意なようだ。

 矢を掴み投げ返す。


「嘘でしょっ!?」

「こういう事があるので、先端だけ鋭利にすればいいってものじゃないって事がわかりましたね」

「普通は掴めないし、掴もうとしないんだよ! くっ!」

「はい、素晴らしいですよ! 即座に反応するとは流石ギルドマスターです!」


 本当に素晴らしい。

 俺に【身体能力強化】を使わせたか。


「はぁっ!」


 弓を引き絞った瞬間、矢が五本に!?


「っ! やりますね!」


 流石ランクSだ。

 ディックのように油断していなければ攻撃は多彩。

 この矢の雨に対しては【身体能力超強化】がなければ傷を負っていた。


「それでもかわすかよっ!」

「たとえ五本でも、弓を引いた瞬間に矢の軌道が見えてはお粗末です。可能な限りそれを隠す事で成長へ繋がるでしょう」

「こうか!」

「まだ」

「こうかっ!」

「まだまだ!」

「くっ! これなら……どうだ!」

「素晴らしい!」


 俺は土塊(つちくれ)操作を発動し、土壁を一瞬で造る事により五本の矢を防いだ。


「はぁはぁはぁ……な、何て硬い壁だよ、まったく……」

「状況判断、指摘への理解、瞬発力、どれをとっても素晴らしかったです。後は――」

「――後は?」

「気を抜かなければ完璧にランクSです」

「くっ! いつの間に後ろにっ!?」

「ま、ランクAの私が言っても説得力はないですけどね」

「……いや、十分だ。まさかこれ程とは思わなかった。それに、実力の全てを出してもらえなかったようだしな」

「はて?」

「ふっ、是非ともまたお願いしたいものだな」

「また機会があれば」

「よし! 皆の者! 本日はこれまで! 第二回の開催を待て!」

「「おぉおおおおおおおおおっ!!」」


 その後、俺は盛大な歓声に見送られ、冒険者ギルドを後にした。

 報酬も得て、リンダや冒険者に顔を売れたという意味では良い結果だろう。

 ミケラルド商店五号(シェルフ)店に戻ったものの、現状ここでやる事はない。

 店にしっかりとテレポートポイントを残し、かつて二号(シェンド)店でもやっていた巨大な鍵を施した後、俺はバルトにテレパシーを飛ばし、帰る旨を伝えた。

 次ここへ戻って来る時は、リーガル国とシェルフの同盟が成った後だろう。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 シェルフから出て身を隠し、転移で自宅へ戻った俺は無人の我が家に疑問を持った。


「あ、そうか。これからは屋敷に戻らなくちゃいけないのか」


 すたすたとミナジリ領の屋敷に向かうと、そこは正に貴族の屋敷と化していた。

 門前で待つダイモンに驚く。


「何でダイモン?」

「こ、この度屋敷の守衛に着任しました、ダイモンです!」

「あ、はい。コリンは家?」

「いえ、屋敷にて召使い見習いの仕事を頂きました!」


 素晴らしい人事だが、幼女が見習いとは倫理的にどうなのだろう。

 まぁここは異世界だし、子供が仕事をしているのは別に珍しい事でもない。

 そもそも俺も三歳だからな。


「これからも宜しくお願いします! ミ、ミケラルド様!」

「言いづらそうだね。旦那呼びで構わないよ」

「え、そうですかい? じゃ、じゃあ遠慮なく……ミケラルドの旦那!」

「うん、守衛のお仕事よろしくね」

「へい!」


 ダイモンのやつ、暫く見ない内に強くなったんじゃないか?

 ただの荒くれ者という印象から立派な兵士という感じに変わってる。

 きっとシュッツとランドの指導がいいのだろう。


「お帰りなさいませ、ミケラルド様」

「ただいまシュッツ。進捗はどう?」

「屋敷の使用人の採用は決まり、西棟に住み込みで働く事が決定。順次指導に入っております」

「食器や調度品はどう?」

「滞りなく……ただ――」

「――ただ?」

「貴族の屋敷としては、内装の景観がまだ不十分かと存じます」

「というと?」

「美術品などの類ですな。子爵とはいえ貴族。陶器や金銀の装飾、加工品。これらは多少なりとも必要になるかと存じます」


 これだから金持ちは嫌いだ。


「わかった。それらは私が手配する」

「かしこまりました」

「その他には?」

「ギュスターブ辺境伯様より落成式の参加のご連絡がありました」

「日程は決まったの?」

「来月の一日を予定しております」

「てことはちょうど半月か」

「ご子息と一緒にいらっしゃるとの事です」

「へぇ、サマリア公爵家は?」

「家族揃っていらっしゃるとの事です」

「はははは……」

「一介の子爵家の落成式に公爵家、辺境伯家がいらっしゃる事はありません。他の貴族から見ても、これは異常な事です。ミケラルド様ならば問題ないと存じますが、既に多くの貴族が非公式(、、、)な視察にいらっしゃっております」

「乱暴な事はしてないよね?」

「捕縛の後、菓子折を持たせて丁重にお引き取り願っております。徐々に減ってはきておりますが、どちらの貴族もミナジリ領の動向が気になるご様子。私も日々の鍛練に張り合いが出ます」

「随分鍛えているみたいだね」

「ジェイル様の指導の(たまもの)であります」


 事実、悪徳騎士だった時のシュバイツの頃とは違い、今のシュッツの実力はランクBと言って差し支えない程だ。彼がいれば、この屋敷は平和だろうな。


「ランド率いる警備隊も徐々に機能し始めました。マックス殿のご助力に感謝しておりました」

「うん、自給自足の目処は?」

「現在は金銭で何とかなっている状況です。しかし、作物が実り始めてきております。堆肥の効果も上々との事ですし、徐々に変わっていくでしょう。水源から魚、山から獣、こちらはどれも円滑に機能していると言っていいでしょう」

「パーティー用の食事はどうする?」

「当日はエメラ様とジェイル様、そしてナタリー様が担当なさるそうです」

「味見は?」

「済ませました。ご期待に添えるかと存じます」

「食後のデザートは蜜菓子だね、はい」

「これは……新しいレシピですかな?」

「材料は共通の【闇空間】にまとめて入れてある。試食で食べ過ぎないようにってナタリーに伝えておいて」

「かしこまりました」


 現状俺がやらなくちゃいけないのは……置物造りか。

 しかし、ずっとやらなくちゃと思ってた【鍛冶(ブラックスミス)】が使えると思うと、今からワクワクするというものだ。

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