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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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153/917

その152 ミケラルド先生

 シェルフのギルドマスターの「すぐに集まる」という言葉により、当日中に開催が決まったミケラルド養成塾。

 俺が応接室で待ち、お茶の二杯目でも欲しいかなと思った頃、リンダが戻って来た。


「集まったぞ」

「うぇっ!? もう!?」

「エルフの情報網を甘くみるな。テレパシーで一瞬だぞ」


 エルフの連絡網を甘く見ていた。


「今やミケラルド殿は、このシェルフでは時の人と言って差し支えない。冒険者は皆、仕事なぞしている場合ではなかった様子だ」


 怪しいセミナーの講師になったような気持ちだ。


「既に裏の広場で多くの受講生が待っている。さぁ行こうじゃないか」

「ところでリンダさん」

「何だ?」

「その弓は一体?」

「私の武器だが?」

「講師をされるので?」

「受講生だが?」

「あぁはい」


 つまり、自分も受けたかったのか。

 冒険者のギルドマスターなんて、冒険者あがりで構成されていると言っても過言ではない。強者に挑みたいという冒険魂は尽きていないという事か。


「ちなみには私はランクSで、現役の冒険者だぞ」

「へぇ、じゃあ何でギルドマスターに?」

「ここらではランクSはおろか、ランクBの依頼ですら珍しいからな。安定した収入を得るにはこういう逃げ道もあるという事だ」


 何と世知辛い。


「それに、ランクSといっても名ばかりだ。実際にはベテランのランクAってところだろう」

「あぁ、そういえばランクA冒険者を十年続けるとランクSになれるって、ディックさんに聞きましたね」

「そうだ。ディックもその口だ」


 あのおっさんもそうなのか。


「しかし、実力でランクSになった奴らは皆化け物じみている」

「冒険者ギルド主催の武闘大会……ですか?」

「そうだ。あの武闘大会もそろそろ開催する頃だろう。(じき)に触れも出よう」

「因みに、どんな人がその武闘大会の出身なんです?」

「そうだな……ランクSの剣聖(けんせい)SS(ダブル)剣鬼(けんき)SSS(トリプル)剣神(けんじん)なんかは有名だろう。魔法使いならランクSの魔帝(まてい)、SSの魔皇(まこう)、SSSの破壊魔(はかいま)あたりか」


 どれも怖そうな二つ名ばかりである。

 そういや、うちにも勇者殺しとか水龍とかいるな。

 こう考えると剣神も破壊魔も優しく思えてくるから不思議だ。


「彼らの拠点はリプトゥアか法王国(ほうおうこく)、剣鬼や剣神はガンドフ(、、、、)にいるとか情報があったな」


 リプトゥアの南にある法王国。その法王国の東にあるのがドワーフの国ガンドフ。


「ガンドフは人間と交流があるんですか?」

「ガンドフが門戸を開いているだけだ。あそこは誰でも受け入れる文化がある。個人単位であれば気にする者もいないさ。それに、ガンドフはドワーフの国、武具に強さを求めるならば、皆あの国を目指す」


 是非とも、ドワーフの凄腕をミナジリ領に招きたいところだ。

 そういや俺の【鍛冶(ブラックスミス)】の能力もまだ使えてないんだよな。

 帰ったら色々試してみるか。

 リンダとそんな話をしながら歩き、やがて広場へと着く。


「うわぁ……」


 シェルフに来て何回吐いただろうかと思う程の呆れた声。

 目の前に広がるエルフの多い事多い事……。

 目算で大体二百ってところか? 一時間足らずでよくここまで集まったな。


「ふっ、何だその目は?」

「大変そうだなぁ、と」

「模擬戦をやるだけだ。そう、二百回程」


 数の概念がぶっ壊れていないだろうか、このギルドマスター?


 ◇◆◇ ◆◇◆


 死屍累々(ししるいるい)……いや、まぁ実際には死んでないのだけど、疲れ果てたエルフたちが川の字になりながら寝ている。いや、ぶっ倒れていると表現した方がいいだろうか。正に地獄絵図である。

 ランクG、ランクFのエルフから指導を始め、各冒険者の弱点を指摘しつつアドバイスを少々。面白い事に、ランクDを超えたあたりから弱点が減り始めた。これはおそらくエルフの特性なのだろう。人間の冒険者なら弱点を活かす考え方をする者、個性を伸ばす方に意識を傾ける者が多い。しかし、エルフは典型的なオールラウンダー。

 確かに保守的な考えをするエルフが多いから、この傾向はわかる。

 わかるが、個人戦には向かないだろう。

 こういった能力の均等化が見て取れるならば、集団戦を磨いた方が実力は向上しそうだ。


「あと、三人ですね」

「何という体力……! これだけ相手にして汗一つかかぬとは」


 依頼してきたリンダ(お前)が言うか?


「お願いします!」

「ダドリーさん、昨日ぶりですね」

「あなたに頂いたこのフレイムダガー……無駄にはしないつもりです!」


 凄い決意だが、それはつまり……刺すなり斬るなりするって事だよな?

 さて、ダドリーの実力を見るのはこれが初めてと言っても過言ではない。

 エルフの精鋭――ランクBの実力は如何に?


「ふっ!」

「凄い突進力ですが、まだ余力が見えます。もっと足に魔力を集中して、はいもう一回」

「くっ!」

「いいですよ。更に込めてみましょう。凝縮する感じです。もう一度!」

「こ、このっ!」

「ランクAが見えてきましたよ! どんどんいきましょう!」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「……あの場から一歩も動かせなかった……」


 四つん這いになりながら自分を嘆いているダドリーを慰める者はいない。

 何故なら残った二人はリンダとクレア。

 リンダは性格上慰めないし、クレアは俺の前に立っているのだから。

 他の者は体力が回復してきてはいるが、模擬戦を見るだけで精一杯のようだ。

 さてさて、クレアたんの実力は?


「ファストエアロ!」

「はい、心地よい風ですね。ですが斬撃には程遠いですよ。もっと薄くしてください」

「ファストエアロッ!」

「ほどよく練られてますね。しかし切っ先ばかりを意識してしまって、風の刃の面が疎かです。上下から叩けばあら不思議! ほら、簡単に弾けます。この弾きを意識し、複数の刃を構成した方がいいでしょう」

「ファストエアロォオオ!!」

「ですが、こうやって関節を外すと簡単にかわせます。理想は髪の毛一本程の極薄の刃を、そうですね、百枚刃くらいを目指しましょう」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「……あの笑顔は何……? 何で一瞬であんなに関節が外せるの……? ぐにゃって……ぐにゃってなった……」


 ダドリーと揃っての四つん這い。

 クレアにはもう少しお尻を突き出して頂きたいものだが、それは叶わぬ夢だろう。

 がしかし、これからも是非、頑張って頂きたい。

 さて、これが最後か……。


「私の番だな」


 シェルフのギルドマスター、リンダの実力は如何に。

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