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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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149/917

その148 謀略

 ……おかしい。


「ミケラルドさまぁ~♪」

「お口を開けて~、はいあ~ん」


 何だろう、このエルフ美女たちの過激な接待は?

 メアリィとクレアが女性物の衣服を見に行ったのをよしと見たか、バルトは店の奥の応接室へ俺を通した。

 目の前でニコニコするバルトが、怖い。ちょっとしたホラーだ。

 そんなホラーの体現者のバルト君は、にこやかな笑みのまま、俺に一枚の紙をテーブル上をスライドさせて提示した。


「……これは?」

「バルト商会、ミナジリ支店(、、、、、、)の出店計画書です」

「ははは……」

「おや、お気に召しませんでした?」

「いや、正攻法で結構ですよ」

これ(、、)もある意味正攻法では?」


 まぁ、俺は毎回裏技みたいな方法でやってるからな。


「私への当てつけですかねぇ?」

「いえいえ、そんな事はありませんよ閣下」


 相変わらず食えないおっさんだ。

 俺が微動だに出来ないのを知ってるな?

 俺が動こうものなら、このお姉さん方の手足がそれに付いて絡みついてくるのだ。

 確かに見栄えの良い異性を宛行(あてが)うのは、古来よりの接待の一つである。

 正攻法といえば正攻法である。がしかし、女性に免疫のない俺からしたら大事件である。


「あの、この方たちどうにかなりません?」

「おや? お気に召しませんでした?」

「それはさっき聞きました」

「はははは、おふざけが過ぎましたな」


 どんな茶目っ気だ。

 バルトがアイコンタクトを送ると、タコのように絡みついてたエルフ女性たちは、くすりと笑ってから消えていった。


「……何で笑われたんですかね?」

「張り合いがなかったのでは?」

「それはそれで意気消沈しますね」

「はははは、欲多き人が女性に(うと)いとは。これはまた、面白き事象ですな」

「はぁ……それで? バルト商会がミナジリ領に出店したいって話ですけど、これ本気です?」

「勿論本気です。正直な話、長期的に見れば首都リーガルに店を構えるより重要だと考えています」


 そりゃまた、高く見積もられたものだ。

 バルトの計画書を見る限り、至ってまとも。不審な点は一つもない。

 単純に出店許可を求めている……そういう事か。


「では、条件を」

「ほぉ、何でしょう?」

「バルトさん」

「はい?」

「両替してくれません? 私、シェルフの貨幣持ってないんですよ」


 その後、涙しながら笑うバルトの前で赤面した俺は、笑顔を作るだけで精一杯だった。

 どこかにポーカーフェイスを売ってる店はないものだろうか。

 バルトにもう一つの条件を付け加えた俺は、その後手続きを踏んでローディ族長との謁見に臨むべく、族長の家に向かったのだった。


 ◇◆◇ シェルフの謁見の間 ◆◇◆


「これはミケラルド殿、先程はメアリィが迷惑を掛けたようですな」

「ローディ様、気になさらないでください。こちらが我儘(わがまま)を言っただけです。素晴らしい観光案内を堪能致しました」

「ほぉ、なるほど。メアリィが狩りに行ったのは間違いではなかったようですな」


 つまり、獲物は俺って事か。

 まぁ、同盟国になる国の貴族に好印象を与えたのだ。俺はメアリィに上手く狩られてしまったという事だろう。クレアが俺の眉間を狙ったのは、ある意味間違いじゃなかったのかもしれない。


「件のダークマーダラー、滞りなく収容しました。あの【杭】については何かわかりましたか?」

「【杭】は先程バルト殿にお渡ししましたが、やはり以前報告に上げた以上の事はわかりませんでした」

「そうですか……こちらでも調べておきましょう。何かわかればご連絡致します」

「ありがとうございます」

「さて、ディーン」

「はい」


 ローディが隣に座るディーンに指示を出す。

 すると、ディーンは立ち上がり、一枚の羊皮紙を俺に渡した。


「これは……!」

「シェルフでの自由貿易許可証です」


 マジか。本当に実現するとは思わなかった。


「元々シェルフは森の民です。金銭で縛る事は叶いません。しかし、ミケラルド殿が営むミケラルド商店であれば、民の生活が潤うと確信しました。是非、それを有効活用して頂きたい」


 ローディの言葉が、非常に重く感じる。

 損得だけではない暗黙の依頼。これは、シェルフの将来を決める重い許可証。

 …………責任重大だな。


「時にミケラルド殿」

「はい?」

「妙な噂を聞きましてな」

「噂……ですか?」


 何やら嫌な予感がする。というか嫌な予感しかしない。


「ミナジリ領からシェンドに続く道、大層美しく舗装されているそうではありませんか?」


 ……既に()から情報を得ていたか。


「ミナジリ領からシェルフまでの道、木々が生い茂り馬車一台通れる程。許可証の重さ(、、)を考えれば……釣り合いがとれるのではありませぬか?」


 にゃろう、急に許可証が軽くなったぞ。

 これはきっとバルトの入れ知恵だな?

 やっぱりそうだ。こんな公の場でニコニコ微笑んでやがる。

 まぁ、あの道を工事する事を考えれば、確かに釣り合いがとれるかもな。

 (むし)ろ、シェルフの市場の狭さを考えれば、向こうのが得してるんじゃなかろうか? 馬車で一週間近い距離……ある意味国家事業レベルだぞ。


「……一つお願いが」

「何でしょう?」

「溜め息だけ吐かせて下さい」

「ふふふふ、ご存分に……」

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