表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/917

その138 忙しき日々

2020/2/10 本日1話目の更新です。ご注意ください。

「くそ!? 何だそれ!? 知らない! 何で家如きが出来ただけで人呼んでパーティーしなくちゃいけないんだ!? 失礼のない料理、食器、家具、マナー、人員、どれをとっても俺にとって無縁の話だ!」


 と、叫びながらマッキリーに向かう中、俺はサマリア領とマッキリーまでの道を【土塊(つちくれ)操作】の魔法で舗装していた。

 これはランドルフが俺に気を遣ってくれたようだ。ランドルフ曰く、「道の舗装はそもそもサマリア公爵家からの依頼だったと言えばいい」と。「ギュスターブ辺境伯家へのプレゼンになるし、私がミナジリ子爵家を紹介する事も出来るから、ギュスターブ辺境伯家に近いミナジリ領でデモンストレーションをした。気に入ったのなら落成式来なよ。私がミナジリ卿と仲介しよう。ミナジリ卿からの招待状を待っててくれ」みたいな手紙をギュスターブ家に送るそうだ。これにより、貴族の顔に泥を塗った事にはならなくなる。

 みたいなランドルフスマイルをくれたのだが、これは体の良い言い訳(、、、)だ。

 ランドルフの顔には確かに書いてあった。「無料(タダ)で道路舗装♪ 無料(タダ)~♪」みたいな欲望満載の文字が。

 相変わらず抜け目のないおっさんである。


「あ、ミケラルド様! お帰りなさい!」

「あぁカミナ、ただいま~」


 マッキリーにあるミケラルド商店三号店、そこで店番をしていたカミナが俺を迎える。


「何度も言うけど、ミケラルド『さん』とかでいいよ?」

「何度も言いますけど、ミケラルド『様』で通させて頂きます♪」


 まぁ、これはいつものやり取りだ。


「はぁ、それで今日の店の在庫は?」

「ん~、聖水と聖薬草がこころもとなくなってきたかなーって感じです」

「わかった、夜はマッキリーのダンジョンに潜るよ」


 ◇◆◇ 夜、マッキリーのダンジョン内 ◆◇◆


 ダイアウルフ(亜種)を倒した後、俺はダンジョンの最終階層で休憩をとっていた。

 ダンジョンのシステムは、大体把握してきたという自負がある。

 最終階層では、ダイアウルフ(亜種)……つまりそのダンジョンのボスを倒す事で宝箱が出現する。しかし、備え付けのように置いてある【聖薬草】と【聖水】は、最終階層に辿り着いた時に現れるようだ。つまり、俺が最終階層に降りた時点で、ボスと二つのアイテムが出現する。そして、ボスを倒した事により、最後の宝箱が出現する。

 因みに、ダンジョン内で転移魔法は使えない。何らかの妨害魔法が働いているのだろう。という訳で、ボスを倒す以外では、引き返さない限りこのダンジョンからは出られないというのだ。

 問題は転移装置の起動タイミング。これはダンジョン産のアイテムを取った瞬間に起動するものだ。つまり、ボスを倒した後、【聖薬草】と【聖水】をとらないと転移装置は起動しない。とらずに引き返す事も可能だが、そうする冒険者はいないだろう。

 しかし、ボスを倒した後、ゆっくりする事も可能なのだ。

 リーガルのダンジョンは岩肌がゴツゴツしているが、ここは緑溢れるマッキリーのダンジョン最終階層。夜なのに明るい場所で緑を満喫出来る絶好の休憩ポイントと言える。

 この間、他の冒険者が現れる事はない。リィたんも今マッキリーのダンジョンに潜っているが、別行動である。仮にリィたんが最終階層に着いたとしても、それはそれで別の最終階層に向かうだけ。同じタイミングでダンジョンに潜った者でないと合流出来ないのだ。

 従って冒険者ギルドでは、ダンジョンの冒険者救出といった類の依頼はない。


「おーし、【テレフォン】の魔法完成っと。後はこれをドマーク商会で買ったマジックスクロールに付与すれば……紙の電話が完成」


 やはり見栄えが悪い。紙に話しかけるネムやニコルを想像するだけで笑えてくる。

 そもそもマジックスクロールは羊皮紙に錬金術(アルケミー)の技を発動させるだけで出来るものだ。そしてマジックスクロールに付与魔法を施す事で、魔力の少ない者……たとえば戦士でも火の魔法を使えたりする訳だ。因みに、各ミケラルド商店に設置しているテレポートポイントも同じ原理である。箪笥(チェスト)に付与魔法を施せるように錬金術(アルケミー)の能力を使っているのだ。

 ならば、羊皮紙ではなく別の物を媒体としても問題ない。それこそ、そこらへんに落ちている木の棒でもいいのだ。でもそれだと審美的によろしくない。やはりカッコいいのは水晶だが、それでは二番煎じである。もっと何かないか?

 現代地球人ならではの通信道具。

 その後、小一時間悩んだ結果、ある一つの答えに辿り着いた。


「よし! これならそこそこ格好がつくんじゃないか? あぁ~、喉渇いた!」


 そこまでは良かった。

 そこまでは良かったのだ。

 俺は無意識の内に手を伸ばしてしまった。

 自分でウォーターの魔法を使えば良かったのだ。しかし、そうしなかったのは現代地球で過ごした時間の長さが原因だろう。そう、俺は無意識の内に手を伸ばしてしまった。

 それは、マッキリーのダンジョン産の高価な水。

 ミケラルド商店で金貨四十枚で売られているあの水……そう、【聖水】に。

 気付いた時は遅かった。

 豪快に【聖水】のピッチャーを取り、嚥下(えんげ)する事――二回。


「カッハッッ!?!?」


 過去数億年遡っても、聖水を呑んだ吸血鬼は俺みたいな馬鹿しかいないだろう。

本日正午投稿予約済み:次回「その139 聖涼飲料水」・x・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ