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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その135 ギルド通信

2020/2/7 本日2話目の更新です。御注意ください。

「――水晶を見たい?」

「はい、是非見学させて頂きたいです」


 馬鹿高いレンタル料を払うだけの価値があるのかどうか、見極めたいというのが本音だ。

 この願いにより、ゲミッドの威圧が霧散し、目を丸くする。

 だが、言葉を渋り、うんうんと唸るばかり。ギルドマスターの権限ではどうにもならないという事か?

 しかし、ギルド職員は水晶を使える立場にある訳だ。ならば内側に入り込めばいい訳だ。


「見学料としてリーガル白金貨五枚。寄付という形式で納めさせて頂きます。そう、私はギルド運営の協力者。そういう事にして頂ければ、ゲミッドさんの懸念もなくなるのでは?」

「ふん、流石に聡いな。いいだろう。その代わり、前金で頂くぞ」


 これも必要な経費。

 今後、ギルド通信に使う水晶のレンタル料が低くなる可能性を考えれば、安すぎる出費だ。


「儂はここにいる。ネム、案内して差し上げろ」

「は、はい!」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 更に奥の部屋に案内された俺。

 なるほど、ギルドマスターの部屋の奥にあるのか。下手に使う訳にもいかない。それだけ貴重な品という事がわかる。


「狭っ!?」


 小部屋だった。一畳程の小さな部屋。

 壁に木の板を差し込んだような部屋一体型の机。その上にはインクとペン、そして重なった羊皮紙。そして、しっかりと固定され、落ちないように半分程頭を覗かせる水晶。


「すみません。基本的に一人用の連絡室なので」

「触っても?」

「こ、壊さないでくださいよっ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ」


【鑑定】を使っても水晶という情報しか出てこない。

 マジックアイテムならば【鑑定】に反応するはずだが、そうではないとなると……付与魔法?

 なら【解析(アナライズ)】だな。


「……うわぁ」


 後ろから心配そうにピョンピョン跳ねるネムには申し訳ないが、今の俺の顔を見せる事は出来ないだろう。

 振り返りネムを見た俺は、さぞかし爽やかな笑みを浮かべていた事だろう。


「す、すっごい作り笑顔です……」

「あははは、わかる?」

「どうかしたんですか?」

「まぁそれは戻ってから話すよ」


 支部長室に戻った俺は、ソファーに腰をおろし頭を抱えた。

 これは一体どういう事だ? やりたい事があるのに更に問題が増えた感じがするぞ?

 まぁ、それはいい。まずはこの状況を変える事から始めなくては。


「あの水晶、作る事が出来ると言ったらどうします?」

「「っ!?」」


 二人の驚きは当然のものだった。

 何故ならギルド一つで毎月白金貨五十枚のレンタル料だ。

 これを俺が売り、今後レンタル料が掛からなくなるのであれば、恒久的にみてかなりの節約になるだろう。


「……(にわか)には信じがたいな」

「ですよね」


 ゲミッドは疑いの目を向ける。


「ほ、本当に出来るんですかっ!?」


 ネムは可愛い。


「多分」

「あ、曖昧ですぅうう!」


 本当に可愛い。


「それが出来たとして、ミケラルドは一体いくらギルドに吹っ掛けるってんだ?」

「過去が過去ですからね、私が守銭奴と思われても仕方ないでしょう」

「事実そうだからな……ん?」


 俺は三本の指を立てる。


「水晶一つあたり、リーガル白金貨三十枚でいかがでしょう?」

「……正気とは思えない金額だな。ひと月のレンタル料より安い」

「守銭奴でない証明になるかと」

「何を企んでる?」

「ギルド招致をした時、領主が支払う金額を限りなく抑えられるじゃないですか♪」

「ふん、夢物語だな」

「まぁこれに関しては後日試作品をお持ちします。ギルド招致の件は、その時にでも話しましょう」

「…………いいだろう。その時はディックも呼んで話そうではないか」


 ◇◆◇ ◆◇◆


「……で、何でミケラルド商店(うち)までネムが付いて来る訳?」

「さっきの話で気にならない方がおかしいです! 大丈夫です! お昼休憩ですから、私!」


 そういう問題じゃないんだよ。まぁ、ネムなら別にいいんだけど。

 俺は仕方なくネムを応接室へ通した。ネムは小さなバッグの中から更に小さなパン切れを取り出して囓り始めた。

 何だこの齧歯類(げっしるい)は? まるでリスのようにパンを食べるじゃないか。

 しかし、余り美味そうでもない。


「ふむ……」

「あ! それ私のですよぉ!?」

「ちょっとだけちょっとだけ……」


 指先程のパンを少しだけ取り、口に運ぶ。

 何とも味気ないパンだ。エメラの料理は美味いが、やはり作りたてというのが大きい。

 保存食という程でもないが、パンのような携帯食の風味向上は、商売のチャンスかもしれないな。

 ネムが食事をしている間、俺は棚に伏せてある木製のコップを取り、ウォーターの魔法で水を入れる。今日は別にお客さん(ゲスト)じゃないし、紅茶はいいだろう。


「え、お水なんですかぁ?」


 という訳で紅茶を入れた。

 何だあの無邪気な紅茶催促は?

 紅茶の香りと味を満喫しながら横揺れするネムに、俺はジト目を向ける事しか出来なかった。紅茶の最後の一滴を飲み干し、ソーサーにカップを置いた時、ネムはようやく本題に入ってくれた。


「それでミケラルドさん! 本当にあの【水晶】を作れるんですかっ?」

「まぁ、これから作ってみるけど、いけると思うよ?」

「じゃあ何で通信室行った時『うわぁ』なんて声出たんですかっ?」


 あり? それも拾ってたか。


「本当なら喜ぶべきところですよねっ? ねっ?」

「今日はいつもよりぐいぐい来るなぁ、ネム」

「はぐらかさないで教えてください!」

「誰にも言わない?」

「勿論です!」

「本当にぃ?」

「本当です!」

「じゃあ耳貸して」

「ちゃんと返してくださいねっ!」


 この返しは想定してなかった。

 小さく可愛いネムの耳に息でも吹きかけてやろうと思ったが、流石にそれはマズイ。

 という事で、真実を剛速球でプレゼントしておきました。


「な、ななななななな何ですってぇえええええええええええ!?!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] >真実を剛速球でプレゼント 製作者は魔族とかのパターンか、逆に魔族を利用した技術か、あるいは灯台下暗しの禁忌の製法か? その内容によってストーリー分岐しそうな重大な設定でもなさそうだから…
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