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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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128/917

その127 大きな貸し

「――(やまい)? アイリス様が……?」

「左様にございます。此度の事件より少し前より、アイリスの体調が崩れ始めたのです。医者や多くの光魔法使いに診せましたが、病状が良くなる事はありませんでした」


 病気か……俺の知恵でどうにかなる訳じゃないが、聞くだけ聞いてみるか。


「差し支えなければ病状をお伺いしたく存じます」

「……瞳から光を失いつつあります。最早メアリィの姿がおぼろげだと」


 ディーンは強く拳を握りながら教えてくれた。

 失明間近となると、病状はかなり悪いようだ。

 ディーンの辛そうな姿を見てか、メアリィが強がるように言う。


「お、お母様は大丈夫です! いつも私にそう言ってくれます! お母様が大好きな蜜菓子(みつがし)を毎日持って行ってちゃんとお見舞いしてます! すぐによくなるんです! 薬さえ、薬さえ届けば……届けば……!」


 それを聞き、バルトの表情が曇る。

 確かにその話を聞くに薬はあるのだろう。だが、それを仕入れるのは誰か。

 当然、国を代表する商人であるバルトだ。それが届いていない。もしくは仕入れられない理由があるのだろう。

 しかし、気になるな。


「メアリィ様、アイリス様は甘い物がお好きなのですか?」

「え、そ、そうですっ。毎日持って行って食べてます! 甘い物を食べている時のお母様のあの嬉しそうな笑顔が……私は……大好きなんです……!」


 それはもしや、糖尿病から併発する白内障では?

 がしかし、これは素人判断だし、それを治療する術は俺にない。

 ここはファンタジー世界なのだ。ファンタジー世界ならそれを治す術が別にあるのだろう。

 現に薬の仕入れを任されているであろうバルトが、申し訳なさそうに頭を下げている。


「薬とは?」

「途方もない価値を持った薬です。商人ギルドでは【規制品】として扱われる貴重な品」


 商人ギルドのランクがAにならないと取り扱えない【規制品】か。

 ん? 待てよ? 確か商人ギルドから買った規制品のパンフレットの中に、確かそういったものがあったような……?


「実は、この後冒険者ギルドを介し、SSS(トリプルS)の依頼を出そうと思っておりました」

「トリプルの依頼という事は、それだけ難度の高い品。いや、もしかしたら可能かもしれませんよ?」


 多分アレの事だよな? 寧ろアレしかないよな? 今の内に出しておこう。


「出来ればミケラルド殿に依頼したかったのですが、何しろ相手が相手ですから……。こちらの依頼内容は【龍の血】。古より生きる五色(ごしき)の龍だけが体内に持つ超希少な品。これがあるだけでアイリス様は……――ん? ミケラルド殿? このポーションは?」

「【龍の血】を混ぜた【龍のポーション】です」

「ほぉ、これが…………ん?」

「ナタリーのエヘン虫には効きましたよ」

「ん?」

「ご希望の【龍の血】です♪」

「「な――――」」


 さて、耳だけは塞いでおくか。


「「――――何だってぇええっ!?!?」」


 リィたんから得た龍族の【固有能力】である【龍の血】。その効能は全ての病気を治癒する。アイリスが病気と聞いても思い出せなかったが、【規制品】と聞き思い出せたあたり、やはり私はミケラルド商店の社畜なのではなかろうか。

 しかし、まさかこんなところで活躍する事になるとは思わなかった。


「ここここここれが【龍の血】っ!? いや、しかし、まさか、何で!?」


 遂にバルトを驚かせる事が出来たというのは、オプション報酬だとでも思っておこう。

 本来ポーションは薄く青い液体だが、【龍の血】を混ぜる事でエメラルドのような緑色に変色した。【鑑定】で見る限り、回復能力、快復能力共に常軌を逸したまさに【規制品】。

 まぁ、これ自体は規制品じゃないんだけどな。何故なら【規制品】は【龍の血】であって、それを混ぜた【龍のポーション】は規制対象になっていない。

 だから商人ランクBの俺が持っているのだ。


「バルト! ほ、本物なのかっ!?」

「し、しばしお待ちをっ!」


 へぇ、バルトは【鑑定】の能力を持っているのか。

 流石はシェルフの大商人。目利きは人一倍出来る訳だ。

 ん? しかしそうなると……待て? バルトは俺の全てをその目で視た(、、)という事か? ……いや、これまでそんな素振りは見せなかった。それはおそらく自分の目で全てを見るという商人のプライドから。つまり、【鑑定】を発動している今のバルトが俺を見ると――――あ…………見られちった。

 まず震えた。次に涙を流した。そして……膝から崩れ去り気を失った。

 これは……後で謝罪しなくちゃいかんな。

 龍のポーションが割れないようにしっかり握って気絶してるあたり、流石はエルフの大商人だ。

 そんなバルトの反応から、ローディとディーンは見合って確信に至る。

 その目には、確かな喜びがあった。


「これは……ミナジリ卿に……いや、ミケラルド殿に大きな借り(、、、、、)が出来てしまいましたな」

「ローディ様。まずは、アイリス様にそれを。また後程お伺いします」

「感謝しますぞ……!」


 俺は踵を返し謁見の間を後にする。

 深々と頭を下げるディーンと、すすり泣いて喜ぶメアリィの感謝に見送られながら。

 この一件が、リーガル国とシェルフの同盟への決定打になったのは言うまでもない。

 俺がこの後しなくてはいけないのは、バルトへの言い訳(、、、、、、、、)

 これに尽きるだろう。

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