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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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127/917

その126 再挑戦

 翌日昼。

 外はこれまで通りエルフたちで賑わっていた。

 今回の一件で心許してくれたエルフが増えた事は増えた。

 だが、それでもやはり全てではない。やはり種族の壁が高いのだ。

 きっとエルフたちを避難させた事もその一因だろう。安全な場所で安全になるまで待っているだけならば危機感を余り感じないものだ。だが、実際ダークマーダラーが襲って来ている間に俺たちが助けに入った場合はどうだ? おそらく俺たちは英雄扱いされるだろう。

 行った行動が最善であろうとも、印象の違いで結果が変わる。

 だが見たいか? 猛火と魔族で溢れかえるシェルフが救われる(さま)を。

 無数のエルフが食われ、その中に颯爽と現れる英雄を。

 答えは「NO」だ。

 英雄にはなれるが、被害の人数は甚大。

 英雄にはなれないが、被害零。

 俺は後者で構わない。たとえ時間がかかろうともこの壁を少しずつ崩せばいいだけだ。

 幸いな事に、シェルフの人口はリーガル程多くない。避難者を見た感じ、ざっと一万人程だろう。シェルフを活動拠点にすれば、自ずと効果は出る。それをじっくり待てばいいだけだ。

 しかし、民衆の印象は薄くとも、国家が受ける印象は違う。

 これからも、俺と敵対したいという判断はしない結果は生まれる訳だ。

 族長ハウスにやって来た俺たちは、再びローディたちの前で頭を下げていた。


「ローディ様、お時間頂きありがとうございます。ミケラルド・オード・ミナジリにございます」

「いや、昨日は本当によくやってくれた……【ミナジリ卿(、、、、、)】」


 まだこの名前にはむず痒いところもあるが、ようやくシェルフの代表からこの言葉を引き出せた。どこかの人妻が後ろの方で「やった♪」とか小声で言ってるのに乗じて、その娘も「やったね♪」とか言ってる。俺としては「やっちまったな」感で一杯である。


「ふふふ……この場に立つための苦労、心よりお察しする」


 ……族長に気を遣われてしまった。まぁ、冗談として受け取ってくれたという事だろう。


「さて、ミナジリ卿? 本日はリーガル国よりお話があるとか?」

「はっ、我がリーガルの王、ブライアン・フォン・リーガルよりの親書にございます」

「バルト」

「かしこまりました」


 ローディの指示で脇に控えるバルトがそれを受け取り、ローディに渡す。

 親書を開き目を通すと、ローディは「うん」と喉を鳴らした。

 そして強い目を伴いながら俺を見て言った。


「ブライアン王のご挨拶、確かに承った。返事については前向きに検討したいと思う」

「ありがたき幸せに存じます」

「がしかしだ」


 はて? おかしな雲行きだぞ?


「その返事、しばらく時間を頂きたい」

「それは……どういう意味で?」

「貴殿はもうお気づきなのではないかな?」


 ん~……あぁ、そういう事か。

 このローディの目の動きはそういう事なんだろう。


「マックス」

「はっ」

「皆を連れて外に出ていろ」

「え……あ、はっ! かしこまりました!」


 ローディが求めていたのは俺に対する人払い。

 俺を気がかりにしながら皆が下がって行く。

 おや? 息子のディーンはその意図にまだ気付いてないようだ。


「気遣い感謝します、ミナジリ卿」

「ち、父上……これは一体?」

「ディーン、気付かぬか? ミナジリ卿の……アイリス(、、、、)への視線」

「視線……っ、まさか!」


 そこで気付いたのか。流石族長になるだけはある。

 そう、ローディの隣に座るアイリス。光魔法【歪曲の変化】は、姿を欺く魔法。

 俺にはナタリー程の身長の子に見えている訳で、当然アイリスを見る時、俺の視線はその子の目に向かう。

 大人(アイリス)の姿に化けているはずなのに、向かう視線は……ってあれ? 俺どこ見てたの? アイリスの胸とか見てないよね? あの子の目があったのってお腹あたりだよね?

 い、いや、そもそも嫌らしい目付きはしていなかったはずだ。大丈夫。大丈夫だ。


「やはり、気付かれていましたか」


 バルトも同じ感想か。

 ディーンももう少し経験を積めば、族長になれるだけの器に成長するんだろうな。


「……伺っても?」

メアリィ(、、、、)、ミナジリ卿にご挨拶を」


 ローディがそう言うと、アイリス(かのじょ)は緊張した面持ちで立ち上がった。


「お、お初にお目に掛かります、ミナジリ卿っ! メアリィです!」


 メアリィ、それが彼女の本当の名前。


「メアリィ殿、初めまして。私はミケラルド・オード・ミナジリ。以後、お見知りおきを」

「は、はい!」

「まさか気付かれていたとは……!」

「ディーン、ダークマーダラーを三百も相手にし、疲れすら見せぬ御仁だぞ? その魔力は正に深淵。気付かれて然るべきと考えた方がいいというものだ」

「くっ……面目もない……!」


 我が国の恥を見せてしまったという感じのディーンに、ローディが溜め息を吐く。


「ミナジリ卿は気付かぬふりをしていてくれたのだ。正に、リーガル国切っての高潔なる貴族といえよう」


 なりたてホヤホヤですけどね。


「メアリィ殿はやはりディーン様とアイリス様の……?」

「娘です。アイリスは訳あって別の場所におります事、お詫び申し上げる」

「精霊樹の聖域……ですよね?」

「「っ!?」」


 アイリスが何らかの理由で歓待の場に出席出来ないのは理解出来た。

 だが、皆が避難する時、族長の家からアイリスと思しき反応が見えた事はない。

 何故なら俺とリィたんは、【探知】の魔法で逃げ遅れがいないか確認していたのだから。

 アイリスは最初からシェルフにいなかった。それこそが、避難する時に「わかった事」である。

 驚きに絶句するバルトとディーン。

 驚きからいち早く戻り、感嘆の息を零したローディ。


「そこまで気付いておられましたか。驚嘆に値しますな」

「恐悦至極にございます。して、アイリス様は一体……?」


 するとローディは話してくれた。

 アイリスの現状を。

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