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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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124/917

その123 ミケラルド式魔族対策

 こちらの狙い通り、シェルフの族長ローディとディーンはすぐに動いてくれた。

 幸いエルフの中にはテレパシーによるネットワークがあるようで、すぐにシェルフの民に情報は伝わった。どうやらエルフの中でも珍しいテレパシー能力ではあるが、二十人に一人くらいは使えるようだ。

 バルトは俺との合流の時点で族長に、ナタリーがハーフエルフだって情報を伝えていたから、多分バルト、ダドリー、クレアの内誰かが使えたのだろう。

 シェルフの避難場所はそう、精霊樹の聖域だ。

 当然、そこに向かえるのはエルフたちだけ。だが、今回は特別に我らの同行が認められた。

 向かうのは俺、ジェイル、そしてリィたん以外の皆である。

 そして翌日の昼前、シェルフの全てはもぬけの殻となった。

 聖域へ向かう最後の団体――その中の一人バルトが振り返る。


「ほ、本当に大丈夫なのですか……?」

「大丈夫ですよ。まぁ、ちょっと散らかしちゃうかもしれませんけど」

「一体どれだけの魔王軍が来るのかもわからないのに……余りにも無謀では――」

「――バルトさん!」


 語気を強めてバルトの説得を止めたのは俺じゃない。我が親愛なる友人――ナタリーである。


「ミックは大丈夫だから!」


 まったく、どこからそんな信頼が生まれるのかはわからないが、これは素直に喜ぶべきところだろう。


「大丈夫……だよね?」


 まったく、さっきの信頼がどこへいったのかはわからないが、これは素直に呆れるべきところだろう。


「……はは」

「だ、大丈夫って言ってよっ!」

「さっきバルトさんに言ったじゃん!」

「私にっ!」

「ナタリー、ダイジョーブダヨー」

「ちゃんと言って!」


 むくれるナタリーの瞳が潤む。

 まったく、さっきから『まったく続き』で困りものだ。

 俺は腰を落としナタリーの目を見た。その頭にぽんと手をのせ、先の言葉を言い改める。


「大丈夫だナタリー、俺を信じろ」


 強い瞳の中にある確かな弱さ。ナタリーも心配なのだろう。

 瞳を落としたナタリーはそのまま振り返り、「絶対……無理しないでよ」という言葉を残し、エメラとクロードの下に向かった。


「では……シェルフをお任せします」


 まるで乗りかかった船だと言いたげなバルトだったが、乗ったのは俺たちなんだよな。

 まぁ、今回の一件でわかった事(、、、、、)もある。これはきっと、リーガルとシェルフの同盟の切り札ともなるだろう。

 とまぁ、まずは魔族をどうにかしなくちゃいけないんだよな。

 村の中央――闇空間の発動地点とみられる精霊樹の根元までやって来た俺は、ジェイルに話を聞く。


「ジェイルさん、魔族四天王の一角、妖魔族不死(アンデッド)種の【リッチ】……奴の特徴を」

「ただの骨の化け物だ」


 簡潔過ぎるだろうに。


「スケルトン……ではないですよね? 妖魔族っていうくらいだし」

「足はない。普段は上半身のみ姿を見せ、闇色のオーラを纏いながら浮いている」


 そうそう、そういう情報を待ってたんだ。

 つまりあれだな。骸骨幽霊そんな感じだろう。


「だがミック、奴自身が来るとは限らんぞ」


 リィたんの指摘は(もっと)もだった。

 そういえばそうだった。闇空間の使用者が闇空間に入る訳がないじゃないか。

 闇空間に入れられたら、その闇空間を発動出来る者しか出してやる事は出来ない。

 出て来られる保証もないのにそんなに危険な真似はしないか。


「だとすると出て来るのは……」

「十魔士としての地位を再構築したい使い捨てのダークマーダラーと、不死(アンデッド)種の指揮官がせいぜいだろう」

「指揮官?」

「あぁ、不死(アンデッド)種の第二席――【ヒミコ】あたりが来るだろう」

「女……ですか?」

「【白紅(びゃっこう)の眠り姫】……それが奴の二つ名だ」


 ふむ、ジェイルの話を聞いただけではイマイチピンと来ない二つ名だな?


「まず心臓がない」


 化け物じゃん。


「真っ白な肢体と深紅の瞳」


 そこは俺と同じじゃん。


「肌同様髪も純白だ」


 そこまで白いのか。なら俺とは少し違うな。


「奴には死という概念がない」


 何なのそれ? 最強なの?


「まぁ、対抗出来ない訳ではない。殺せぬまでも退かせればいいのだ」

「対抗策は?」

「八つ裂きにして闇空間(ごみばこ)にポイだ」


 ジェイルが「ポイ」って単語を使う不自然さはさておき、女の八つ裂きは見たくないな。

 だが、その口ぶりからすると――


「――もしかして、一度死ぬと復活に時間がかかるタイプです?」

「そうだ」

「なるほど」


 だったら血液を採取してしまった方が早い気がするな。

 相手の隙があれば実行しよう。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「さて、こんなもんかな」

「何とも面妖な……」


 リィたんの言葉も、今の俺には褒め言葉に聞こえる。


「精霊樹をミックの【土塊(つちくれ)操作】で覆い、迷宮状にしたのか。確かにミックの魔力で【土塊操作】を使い補強すれば、奴らがたとえ同じ魔法を使おうともそれを壊す事は出来ない。その硬度は魔力の多寡で決まるからな。これは()わばシェルフの大迷宮。無数の道に分かれつつも……最終的に奴らが行き着く先は――――」


 何故俺の口元を見るんだね、ジェイル君?

 おや? 精霊樹に強い魔力が集中している。そろそろ起動しそうだな。

 さぁ、ダークマーダラー狩りの……始まりだ。

血はちょっとしか流れない。たぶん。

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