表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/917

その122 ポケットの中には不気味がいっぱい

「……どうだ、ミック?」

「おかしい、正確な情報が読み取れない。ほんの少しは見えるんだけど……」

「何? ではやはり【解析(アナライズ)】の魔法は未完成……?」


 あれからすぐに南の杭の情報を見に来た俺は、新魔法【解析(アナライズ)】を使ってみた。しかし、その情報は正確に読み取れなかった。


「それはないよ。リィたんの全ての魔法を読み取る事が出来たしね」

「ふむ、それでは一体何故……?」


 これは魔法ではない?

 いや、それなら杭に魔力が伴うのはおかしい。

 先に他の杭を調べた方がいいのか? 残り五つ調べれば……ってあれ?


「ん? あぁそういう事……なのか?」

「どういう事だ?」

「杭は六つあるんだよ」

「だから何だ?」

「六つの魔法という固定観念から離れるべきだったんだ。六つの魔法ではなく、六つで一つの魔法」

「っ! そういう事か! ならばミックの言う事が繋がる!」


 南の杭からは正確な情報は得られなかった。だが、情報の一端を読み取る事は出来た。

 ならばこれは一つの魔法の一部分と解釈するべき。

 その後俺は、残り五つの杭を調べに走った。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「バルトさん、ディーンさんはまだいます!?」

「ミ、ミケラルド殿……その慌てようは一体……!? あ、いやディーン様でしたな。先程お帰りになられましたが……?」

「じゃあちょうどいいです! 今から族長の家へ!」

「こんな夜更けにっ!?」

「緊急事態です!」

「か、かしこまりました!」


 どうやら事の重大さが理解出来たようで、バルトはすぐに族長の下へ連れて行ってくれた。困惑した様子で出迎えた族長の息子ディーンは、切迫した俺の空気に圧倒されたのか、急いで中へ通してくれた。


「こんな時分故、アイリスが同席出来ぬのはご容赦願いたい」


 謁見の間にて、俺はエルフの族長ローディと会う事が出来た。


「こちらこそ、このような時間に申し訳ありません。しかし、事態は急を要します」

「……伺いましょう」


 ローディとディーンが見合いながら頷く。


「先程、杭の正体を掴みました。杭には一つ一つ魔法が込められていたのではなく、六つで一つの魔法を込めていたのです」

「して、その魔法とは?」

「意外な事に、私もその魔法の担い手(、、、)だった故、すぐに判明致しました。それこそは、闇魔法の一つ――――【闇空間】」


 脇に控えていたバルトが思い出すように言う。


「もしや、魔導書(グリモワール)を運ぶ際に利用したあの巨大なポケット(、、、、)の事で?」


 俺はそれに頷き、ローディに向き直る。


「【闇空間】とは?」


 ローディのその質問を前に、俺は【闇空間】を実演して見せた。


「このように中に色々な物を入れ、取り出す事の出来る便利な……それこそ正に巨大なポケットです」

「なるほど、それは便利な魔法……しかし、何故魔族は【闇空間】なる魔法を我がエルフの領域に?」


 ローディの疑問は(もっと)もだった。

 実演だけすれば、それはただの便利魔法。当然、俺もローディと同じ疑問に辿り着いた。

 だが、魔族が意図してやっている事は、便利という言葉では済まされない程、恐ろしいものだった。


「この魔法の便利なところは、離れた場所……つまり私がリーガルで入れた物を、このシェルフで取り出す事が出来るところです。しかし、違う使い方も出来ます」

「というと?」

「たとえば私の【闇空間】を魔導書(グリモワール)に込め、バルトさんが覚えたとします。するとバルトさんは私が【闇空間】に入れた物を取り出す事が出来るのです。つまり、私がリーガルでこれを使い、バルトさんがシェルフで使用したならば、一瞬で物を移動させる事が出来るのです」

「「何とっ!?」」


 バルトとローディが驚愕し、解答にいきついたであろうディーンがワナワナと震える。


「ミ、ミケラルド殿……その【闇空間】の中に……生きた存在を入れる事は可能なのですか……?」


 これが、ディーンの最後の確認。

 俺が頷き、肯定を示す事で三人の驚きは恐怖へと変わる。


「先程小動物を入れて実験し、確認してみたところ、可能である事が判明しました」

「それではまさか……魔族は……!」


 ローディは先に続く言葉を言い切れなかった。

 だから俺が全てを言った。魔族の――四天王の一角【リッチ】の目的を。


「リッチは、シェルフに大量の魔族を送って来ます。それも……間もなく」

「「っ!?」」


 二人が言葉を失う中、やはりバルトだけは肝が据わっているのか、俺に聞いてきた。


「魔法発動のタイミングがわかったのですか!?」

「えぇ、【解析(アナライズ)】の結果、杭は地脈の魔力を吸いながら発動たりえる魔力を集めています。詳細は省きますが、おおよその時間を割り出す事が出来ました」

「いつですかっ!?」

「明日の昼。おそらく正午に近い頃でしょう」


 魔族の目的とは(すなわ)ち、シェルフの壊滅乃至(ないし)征服。

 これだけ急ぐには何らかの理由があるのだろう。だが、俺の目的は達せられた。

 何故なら、たとえ明日に迫ろうとも、その発動がまだならば対策する事が出来るのだ。

 シェルフの民の避難。この時刻に族長に知らせる事が出来たのは不幸中の幸いだ。

 確証を得るだけの証明が出来た今、動かぬ訳がない。


「ローディ様……大至急、皆の避難を!」

ここまで長かった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[一言] 杭の範囲を闇空間で覆って大量のエルフゲットだぜってされるのかと思ったら侵攻目的だったか どっちもやばいけど侵攻の方がまだマシなのかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ