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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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120/917

その119 ワラキエル家の現状

「お疲れ様です」

「「お疲れ様でーす!」」


 まるでミケラルド商店の営業終了時間のようだが、あくまで一日目の調査終了というニュアンスなのだ。なのだが、やはり慣れって怖いな。

 不意にダンジョンに潜ろうとテレポートでマッキリーまで帰ろうとしてしまった自分は、最早(もはや)ミケラルド商店の社畜なのだろう。


「さて、状況整理ですね」


 調査拠点にある大テーブルの上に広がる周辺一帯の地図。


「今回の戦果は一つだけ。不可解な杭……それだけです」


 事実、洞窟近くに行ってもダークマーダラーの気配はなかった。

 つまり、近辺にもう魔族はいないのだ。


「しかし、杭についてわかった事もあります。あれには闇魔法の魔力因子がありました」

「ふむ、やはりか……」


 リィたんもそこまでは行き着いたか。


「杭の数は六つ。この六カ所が……北、西、東、南西、南東、そして南です」


 木のブロックを地図上の該当箇所に六つ置き、俺は説明を続ける。


「この六カ所について、何か不自然に感じる事はありますか?」


 皆が眼下に広がる地図をジッと見つめる。


「あっ」


 すると、ナタリーが親指と中指の間の空間を使い、物差し代わりにして六カ所の距離を測る。

 これに皆が注目する。


「全て等間隔ですね……」


 クレアが顎先に手を当てながら言う。


「何でしょう、この六角形……?」

「六角形? 本当にそうか……?」


 エメラの言葉にリィたんが疑問を持つ。

 ふむ、こういう時の相場はその中央だろうか。

 俺は全ての杭の中央にブロックを一つ置いてダドリーに聞く。


「ここには何があります?」

「「っ!?」」

「……シェルフですね」

「もっと正確に言うと……?」

「っ! 精霊樹があります!」


 と、ここまでは簡単に出せる。

 だが、それ以上の正確な情報は出てこない。


「何らかの魔族的な儀式……?」

「「知らないな」」


 流石に不自然過ぎると思うぞ。リィたんにジェイルよ。

 まぁ、この二人が知らないというのであれば、それは知らない事なんだろう。


「ダークマーダラーはこの地で一体何をしていたのか。あの杭は一体何なのか。魔族の目的は。問題が一つ増えましたがやる事は変わりません。明日は洞窟に入ります。メンバーは私、リィたん、ジェイルです」


 流石に最重要地点にナタリーは連れて行けないからな。


「それ以外の方は杭周辺をもう一度調べてください」

「「わかりました!」」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 二日目。

 ミナジリ村の三強は揃って洞窟へ入った。

【嗅覚】を使いある程度は知っていたつもりだが、やはりそこは凄惨な場だった。


「……エルフの人骨だね。それに、乾いているとはいえまだ新しい血。奴らはここを拠点に、何かをしていた」

「だが、もぬけの殻」


 リィたんの言葉に俺は頷く事しか出来なかった。

 すると、ジェイルが何かを発見した。


「ミック、これを見ろ」

「これはっ!」


 それは、人骨ではなかった。

 死体と呼べるだけの形状を留めていた。

 女のエルフの変死体がそこにあった。そして、俺はその死体に見覚えがあった。

 いや、この人を知っている訳ではない。この死に方に見覚えがあったのだ。


「干からびてるな。という事はこの件には妖魔族(、、、)も関わっていたのか」


 そう、人間の生気を吸い取り糧とする魔族だ。

 俺の三歳の生誕祭の時、スパニッシュの屋敷に来ていた妖魔族(ようまぞく)


「という事は……父親(スパニッシュ)が親玉ですか?」


 俺がジェイルに聞くと、彼は首を横に振った。


「奴は今こんな事をしている暇はない。今頃十魔士への根回しで手一杯だろうからな」

「それはどうして?」

「「ミックのせいだろう」」


 どうやら知らない内にパパに迷惑を掛けていたようだ。


「そんなハモらなくてもいいじゃない」


 俺のジト目に、二人は呆れ(まなこ)を送ってくる。


「いいか? ワラキエル家に忠誠を尽くし奉公していたのは誰だ?」

「えっと……アンドゥ?」

「そうだ。それをミックとドゥムガが殺した」


 そんな物騒な。

 まぁ、事実だから否定は出来ないけどな。

 その後、更にジェイルは続けた。


「ダークマーダラーの元頭首でもあるアンドゥが、ワラキエル家に仕えていたのには理由がある」

「それは……十魔士の中で立場を良くするため?」

「その通りだ。当然スパニッシュもそれを理解している。野心を持って仕えていようがスパニッシュには関係ない。何故ならダークマーダラーを迎え入れる事でスパニッシュにも利があるからだ」

「あ、力を誇示出来るね」

「その通りだ。互いに利があるからこそあの二人は組んでいた。しかし、その片割れが命を落とした。これが原因で何が起きると思う、ミック?」

「……アンドゥの死により、ダークマーダラー種がスパニッシュから……ワラキエル家から離れる」

「そうだ。引退した後でもアンドゥは種に尽くしていた。ダークマーダラーの中でもその信頼は厚い。そしてアンドゥの死を隠せる程、魔界は甘くない。あの後、スパニッシュはダークマーダラー種から凄まじい糾弾を受けた事だろう」


 なるほど、そういう事か。

 ダークマーダラー種がワラキエル家から離れるきっかけを作ったのが……俺という訳だ。

 物凄い他人事(ひとごと)で申し訳ないが、その内、四天王を追放されるんじゃないだろうか……ワラキエル家のスパニッシュさん。


「人骨の数からして大半がダークマーダラー種の仕業だろう。だが、指揮を執っていたのは妖魔族だ。ミック、わかるか?」

「……この変死体が最奥にあったから」


 解答に辿り着いた俺に、ジェイルが笑みを見せる。


「その通りだ」


 そしてジェイルはリィたんに視線を向ける。


「リィたん、これはやはり……」

「あぁ、別の四天王(、、、、、)が動いてるな……」


 俺がリィたんの結論を聞いた瞬間、耳を塞ぎたくなった。

 割に合わないぞ、この仕事。

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