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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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115/917

その114 心の準備

「で、早速ミックバスなんだけどな……」


 山の上、森林だろうがその上を走るのであれば全く問題はない。

 しかし、このルートを覚えたら、今後道路整備をする必要があるだろう。

 山の迂回路、もしくはトンネルを作り、傾斜の少ない街道を目指そう。

 とは言っても、危険な道に代わりはない。モンスター避けの対策も必要と見るべきか。


「お宅……エメラさんとはどういう関係?」


 マックスは相変わらずだ。

 イケメンジェイルに小声で聞いてるあたり、クロードへの配慮はあると信じたい。


「毎日食卓を囲む仲だ」


 ジェイルの返しが秀逸過ぎる。

 クマックスの生命力が一気に失われた瞬間だった。

 長い道のりだ。助けてやるか。


「マックス、その人はジェイルさんだよ」

「はぁ? そんな訳――」

「――本当だ」


 本人が肯定したらマックスも否定出来ないだろう。


「え、ほんとに? どうやって?」

「ミックにはそういった能力がある」


 瞬間、マックスは【隠密ブーツ】でも履いているかのように静かに、そして素早く運転席に座る俺の下にやって来た。何このゴキブリ?


「ミック、俺をクロードさんにしよう」


「俺にも出来るのか?」と確認しないあたり、ある意味では俺を信用しているのだろう。


「してどうするんだよ。エメラさんはすぐ見破ると思うぞ」

「それはそれでいいじゃないか」

「何で?」

「エメラさんのお説教が受けられる」


 ダメだこの人、早く何とかしないと。

 俺がマックスに対し、拒否というか拒絶を見せていた時、クロードが俺を呼びに来た。


「ミケラルドさん、この山の反対側の麓でバルトさんたちが待っているようです」


 クロードに頼んでおいた仕事はバルトへのテレパシー。

 俺がその能力を持っていると見せるにはまだ早い。そう思い、連絡役をクロードにお願いしたのだ。


「よし、そろそろ降りようか」


 当然、ミックバスを見せる段階でもない。

 追いつけた理由は企業秘密にでもしておけばいい。

 それに、バルトはそれに対し指摘しないだろう。言わない理由を考えれば当然の事だ。


「ナタリー、準備はいい?」

「う、うん……大丈夫っ!」


 いつも以上に緊張が見えるナタリーの髪、瞳、そして耳は普段通り(、、、、)

 そう、「準備」とは「心の準備」を意味している。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「やぁミケラルド殿、これは中々の大所帯ですな」

「お待ちになりましたか?」

「いや、小休止に丁度良い時間でしたよ」


 言いながら俺とバルトは握手をかわす。

 そして、俺はバルトに目配せをした。その視線の先には当然ナタリーが立っている。

 目を伏せて理解を示したバルトは、その後自然に他の皆に挨拶してまわった。

 リィたん、ジェイル、マックス、クロード、エメラ、そして……ナタリーだ。


「ほぉ、君はハーフエルフなのかい?」


 腰を落とし、ナタリーに興味を示すバルト。

 奇異ではない、興味の視線。


「は、はい……」


 ナタリーの緊張は当然だ。

 人間とエルフの子供が、エルフの目に触れる。

 子供にとっては……いや、大人でも周りの目が気になるだろう。

 クロードは心配そうだが、エメラはにこやかにナタリーを見ている。

 まるで「自慢の娘」と言いたげだ。まぁ、俺にとっても自慢の友人だしな。


「へぇ、耳はそこまで尖ってないんだな?」


 ダドリーも興味津々の様子だ。

 当然、いきなりハーフエルフを連れて来ては三人も驚く事だろう。

 だから俺はクロードにナタリーへの配慮を願った。クロードはハーフエルフの娘がいる事を、事前にバルトへ連絡していたのだ。父親の愛と誠意が、バルトに伝わらないはずがない。

 何せ彼は母国への愛を以て、誠意で俺に依頼してきた男なのだから。

 バルトがクロードから聞いた内容を、ダドリーとクレアに話していれば、二人も理解を示す事だろう。


「ナタリーはいくつなの?」

「じゅ、十一歳です」


 クレアは年齢を聞き、エルフとの成長の違いを確認しているのか?

 ……いや、あの笑顔は違うな。

 なるほど、流石にシェルフを代表して来たエルフたちだ。人が出来ている。

 バルトはナタリーを見ながら優しい声で言った。


「今後、こういった場でナタリー君が緊張しなくて済む世界を作るのが、我々大人の使命だな」


 すると、ナタリーは輝かんばかりの笑顔を……何で俺に向けるんだ? そこはエメラとクロードだろう。光が零れる笑顔を振りまき、皆に穏やかな空気を与えたナタリーには、もしかしたら凄い才能があるのかもしれない。


「お願いしますっ!」


 すると、バルトもにこりと笑った。

 立ち上がったバルトは俺の下までやってくると、静かに耳打ちする。


「族長には話を通しておきました。しかし、彼女の安全のため行動を制限させて頂く場合もあるとだけお伝えしておきます」

「わかりました」


 そう、エルフも一枚岩でいかないのが現実だ。

 当然、それは人間である俺たちもそうなんだけど、ここには一般人がいないからなぁ……。

 ジェイルもリィたんも俺も魔族だし、エメラは鋼メンタルだし、マックスなんてクマだ。

 一般的な感性を一番持ってるのがクロードとナタリーだというのは、我々の特異性故なんだろうな。

マックスが地味に好き・x・

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― 新着の感想 ―
[良い点] マックスはクマじゃないだろ、いい加減にしろ!(笑) (笑いながらツッコむのってこれ↑でいいんでしょうか?) [気になる点] マックス、キミはエメラさんからであればなんでもいいのかい……(´…
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