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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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109/917

その108 シェルフの使い

 いやぁ、本当に怖かった。

 あの後のエメラが本当に怖かった。まさかドゥムガの食事に毒を入れるとは。

 ドゥムガの解毒を終えた後、俺に向かって言うんだもん。

「ミケラルドさん、リンダさんに聞きましたよ? 男爵位か子爵位をもらえるかもしれないんですってね。ふふふ、これでナタリーのお姫様は確実」とか言うんだから。

 そりゃ俺が貴族になってナタリーと結婚すればそうなるというか、ナタリーも貴族になるだろうけど、何かがおかしい。そんな母の愛を目の当たりにして、俺はあの時のようなエメラを、今後、《闇エメラ》と呼ぼうと思ったのだった。


「お兄ちゃんっ!」


 コバックのところに捕まってた違法奴隷たちは、救出した後このミナジリ村へやって来た。ドゥムガという魔族を目の当たりにしていたからか、受け入れる事は意外にも早かった。

 そして、ダイモンの娘――このコリンも、俺を兄のように呼んでくれる訳だ。

 黒髪のツインテールがとてもよく似合う活発な六歳の女の子。目はくりくりと動き、声の張りのある明るい子だった。

 あの一件から数日、衰弱していたコリンはすっかり快復したのだ。


「おぉコリーン! 相変わらず元気だなー!」


 ミナジリ村へやって来た俺に走り寄って来るコリン。

 俺はコリンを抱き上げ、後から困った顔で追って来るダイモンを待った。

 俺とコリンはダイモンのそんな顔を見て、見合って笑う。

 ころころと笑うコリンは、今では俺の中の癒しとなっている。


「す、すみません、ミックの旦那……」

「構わないよ。ここはもう慣れた?」

「おかげさまで。コリンも畑仕事を手伝ってくれてます」


 コリンは俺の腕の中から俺を見上げる。

 なるほど、これは俺への合図だろうな。


「へぇ、偉いじゃないかコリン」


 俺はコリンの頭を撫でて言うと、思いが届いたと嬉しそうに俺の手に甘えた。


「えへへへ……」

「でもコリン?」

「なぁに?」

「ちゃんと遊ぶ事も忘れないようにな」


 俺はニカリと笑ってそう言うと、コリンは更に嬉しそうに頷いたのだ。


「うんっ!」

「今日リーガルに行ったらいくつか玩具(おもちゃ)を買って来るから、お父さんの言うこと聞いて待ってるんだぞ」

「ホントっ!? わかったぁ!」

「ダイモン、困った事があったらいつでも言ってくれ」

「へい、お気遣いありがとうございます!」


 俺はコリンをダイモンの腕に抱かせる。

 ダイモンは小さく頭を下げ、コリンはダイモンの腕の中で大きく手を振る。

 俺が二人に手を振っていると、後ろから闇のオーラを纏った誰かさんの声が聞こえた。


「おかしい! 絶対におかしいっ!」

「なんだよ、ナタリー(、、、、)?」


 振り返りながら言うと、ナタリーは頬を膨らませながら仁王立ちしていた。


「コリンは六歳で、ミックはまだ三歳でしょ!? 何で「お兄ちゃん♪」なのよっ?」


 今の「お兄ちゃん♪」にはナタリー精一杯の可愛さを入れていたようだが、いかんせん年齢の差があるせいかコリンの方が可愛く思えてしまう。


「あぁ! 今、可愛くないと思ったでしょ!?」

「思ってない思ってない」


 鋭いが違う。

 ナタリーよりコリンのが可愛く思えただけだ。当然、ナタリーにも可愛さはあるが、愛嬌の度合いでコリンに軍配があがったと言えるだろう。

 まぁ、それもそのはずなんだけどな。


「ほんとぉ? ならいいけどっ!」


 腕を組み、ぷんすこと怒るナタリー。

 その後ろに控える見上げる巨躯。ダイルレックス種の元第五席が、お茶を載せたトレイを持ちながら立っている。

 ナタリーは無造作にそのお茶をとって飲み、一気に飲み干す。

 トレイにカツンとコップを置き、俺を見たままドゥムガに言う。


「おかわりっ!」

「は、はい!」


 今のは一体誰だろう?

 そう思える程にはドゥムガの性格ががらりと変わっている。

 エメラの依頼で、ドゥムガはナタリーの配下となった。言葉にすると意味不明だが、つまりそういう事だ。ナタリーの強い当たりと、その鬼教官ぶりに、ドゥムガはすっかりと恭順というか従順になった。走っておかわりを取りに行くドゥムガの背中を目で追いながら、俺は小さく合掌するのだった。


「何ソレ?」

「見てわからないか? 哀れみだよ」

「必要?」

「行動には出た。そういう事だよ」

「んもうっ! あ、それよりいいの? そろそろ時間だよ?」


 一体誰が引き留めたのか。それをこのハーフエルフちゃんに伝えたいものだ。


「そうだね、そろそろ時間だ。ナタリー、今日はゆっくり休みなよ?」


 そう、ナタリーは今日お店の手伝いのお休みなのだ。

 本日、ミケラルド商店はリーガル店以外全てお休み。

 何故なら――、


 ◇◆◇ ◆◇◆


「おはようございます、ミケラルド様!」

「お、おはようカミナ。今日は倉庫番だけどよろしくね」

「はい!」


 リーガル店舗へ転移した俺は、階下で店の準備をするカミナと出会う。

 当然、マッキリーの店舗もお休みなので、カミナはここのヘルプという訳だ。


「「おはようございます、店長!」」


 声を揃えて俺を出迎えるのはクロードとエメラ。

 今日はこのアダルト面子三人と三歳児の俺が、リーガル店舗の担当なのだ。

 店の前には既に人が集まっている。しかし、並んでいるという訳ではない。

 俺の、俺たちのミケラルド商店を囲んでいるのだ。

 外にはドマーク商会のドマーク、リーガルの冒険者ギルドマスターのディックと受付のニコル。へぇ、お忍びでゼフさんとサマリア侯爵家の長男ラファエロ、と長女レティシア、それに奥方のリンダもいる。

 まぁ、ある意味今日は父の晴れ姿(、、、、、)でもあるからな。

 見に来たくなるのも仕方ないだろう。

 風魔法【探知】が知らせる。リーガル城の方角から一つの集団が歩いて来る。

 民衆はその一団を囲み、ぞろぞろと付いて来ている。

 向かう先は当然……ミケラルド商店。


 そう、今日はエルフの国――シェルフの商人が魔導書(グリモワール)を買いに来る日。


「では皆さん、今日も一日よろしくお願いしまーす!」

「「よろしくお願いしますっ!!」」

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