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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その105 コバックの誤算

 まさかこんなところで再会するとは思わなかった。

 しかし、ドゥムガがコバックに捕まっているとは意外だ。

 いや、しかしこのコバックの実力なら或いは可能なのかもしれない。

 ドゥムガの腕には奴隷を示す焼き印。やはり、コバックの奴隷となっているのか。


「な、何故貴様がこいつの名を知ってるっ!? おい! お前は奴を知ってるのか!?」


 コバックの驚きは当然。

 ドゥムガはコバックの威圧的な命令が嫌なのか、反抗的な目を見せる。

 しかし、コバックはやはり(あるじ)のようで、その命令には逆らえないようだ。


「……知らねぇな」


 ドゥムガが知らないのも無理はない。

 俺は今完全に人間。牙もなければ紅い瞳でも――


「――いや、待て……お前っ!?」


 おや?


「そ、その黒銀(こくぎん)の髪……っ!」


 なるほど、髪の毛で気付くか。

 なら俺も隠す必要はない……か。


「嘆きの渓谷以来ですね、ドゥムガさん」


 俺がそう言った瞬間、ドゥムガの気付きは確信へと変わった。


「やはりお前か、ガキィ!」


 それと共に、ドゥムガの表情が変わる。

 そう、これはあいつの頭の中であるプランが決まったのだろう。

 どこか打算をしている。そんな顔をしたドゥムガは、ニヤリと口を開いてから言った。


「おいガキ、俺様を助けろ! そうすりゃお()ぇに協力してやってもいいぜぇ!?」


 まぁ、ドゥムガの事だからと思っていたが、完全にドゥムガな計画だった。

 どうしてドゥムガはこう……ドゥムガなんだろう。

 そんな事を言ったところで、ドゥムガが現在コバックの奴隷だという事は変わらない。


「……ふん、貴様もしや魔族だな? 道理でドゥムガの事を知っている訳だ。がしかし、魔族だろうと関係ない。ドゥムガ! 支援魔法だ!」


 コバックが言うと同時、ドゥムガは無言でコバックに魔法を掛けた。

 あれはおそらく雷魔法の【疾風迅雷】。なら俺も使うか。

 発動した俺の【疾風迅雷】を見てコバックとドゥムガが驚く……が、二人の目には別々の驚きがあった。


「へへへ、成長してんじゃねぇか……!」

「同じ魔法が使えたところで我ら二人の攻撃をかわせる訳もない! 行くぞっ!」


 ドゥムガの目にやる気はない。

 が、どうしても奴隷契約の力が働く。

 左右から向かって来る二人に、俺は【解放】を発動する事で対応した。


「っ!? 速いっ!?」


 全ての力を使わずともコバックを御する事は出来る。

 それ以上にドゥムガの方が厄介だ。あいつの動きを止めても問題ないのか?

 俺は過去ドゥムガの血を吸っている。【呪縛】によってドゥムガを止めた場合、奴隷契約の力を打ち消す事が出来るのか? いや、そうは考えにくい。

 下手に使用してドゥムガの命が絶たれてしまうのは困るのだ。


「はぁ……」

「ハハハハハッ! この戦闘中に溜め息とは余裕だな、ガキィ! どうやら更なる力をつけたと見える!」

「えぇ、だから痛いですよっ」

「んなっ!? ぐぉ!?」


 俺はドゥムガの戦闘不能を狙い、その背中を強く蹴った。

 壁に強く叩きつけられたドゥムガは、床に落ちた後震えながら俺を睨む。


「にゃ、にゃろう……!」

「馬鹿な!? あんな細い身体のどこにそんな力がっ!?」


 どこかで聞いた事のあるような言葉を聞き、俺は前世を思い出した。

 戦闘中だというのに、俺はくすりと笑ってしまったのだ。


「ひっ!?」


 それがこのコバックにどういう目で映ったのかはわからない。

 がしかし、控えめに言っても……悪魔的だったに違いない。

 圧倒的なスピードでコバックに近付き、俺はその腹部を強打する事によって戦闘を終わらせた。(あるじ)の意識喪失。これで以降ドゥムガに命令する事は出来なくなる。

 俺は(うずくま)るドゥムガを脇目に、爪でコバックの腕を傷つけ、その血をぺろりと舐める。と同時に【呪縛】の発動。


「立て」


 俺の命令によりゆらりと立ち上がるコバック。

 早急にコリンを探したいところだが、まずは後方の確保からだ。


「ドゥムガの奴隷契約を破棄しろ」

「……はい」


 俺の命令に従い、コバックはドゥムガの方に向いて言い放つ。


「ドゥムガ、奴隷契約解除だ」


 奴隷契約の解除は簡単である。奴隷と契約した(あるじ)が奴隷契約の力を使って自由を言い放つだけ。契約の解除にまで契約の力を使う……中々皮肉がきいている。

 ドゥムガは自由になったと理解したのか、ニタリと笑う。だが、そうは問屋が卸さない。

 さて、次は俺の番だな。


「ドゥムガさん、その場で待機です。動く事は許しません」

「くっ!?」


 今度は【呪縛】により俺がドゥムガを拘束する。

 逃げられては厄介だし、魔族を人間界に放つのも憚られる。


「てめぇ、一体どういうつもりだ、ガキッ!」

「それはこっちの台詞ですよ。一体何でコバックの奴隷に?」

「何でてめぇに話さなくちゃ――」

「――話してください」


 ナタリーの命を狙い、俺を嘆きの渓谷に投げ入れたやつだ。

 ここは遠慮なくいかせてもらう。


「……あの後、ガキと離れ俺様は人間界にやってきた。しかし、俺様が人間界で生きていく術はほとんどないに等しかった。だが、一つだけあった」

「それがコバックですか」


 ドゥムガは首を縦に振る。


「そいつは魔族に人間を売る闇の奴隷商。俺様も若い頃、種の使いっ走りで何度か使った事がある。秘密の受け渡し場所。そこで張ってたら案の定……ってな。ちっ、人間相手に油断したぜ……!」


 人間は魔族以上に強かだ。最初はドゥムガに協力したとしても、それは一時的。ドゥムガの隙を()いて奴隷契約したのだろう。

 しかし気になる。奴隷契約には奴隷の契約内容復唱が必要なはず。ドゥムガがそれを呑んだのか? いや、隙を衝いて捕縛し、餓死寸前までドゥムガを追い込めばそれは可能……か。

 先の戦闘で周りの檻に入っている皆も怯えきっている事だろう。この人たちをどうするかが問題だな。とりあえず、ダイモンにも連絡しておくか。

 さて……その間にコリンを探さなくちゃな。

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