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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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102/917

その101 家族の救出

 罪人奴隷であるダイモンの、強烈な意思。

 それは、娘の救出依頼だった。当然、俺はこれを見逃せるはずもなく、すぐにドルルンドの町に向かった。といっても、ドルルンドの町で購入した土地に転移するだけである。

 そう、俺は奴隷を購入する(かたわ)ら、土地も購入していたのだ。町の外れにある一角ではあるが、人目につかず家を建てる事が出来た。その中にテレポートポイントを置いとけば、俺たちは一瞬でドルルンドの町にやって来られる。


「凄い……」


 外に出たダイモンは、ドルルンドの町にやって来た自分の身体。そして周囲を見渡しながらそう零した。ミックバスでも皆驚いていたが、転移となると驚きのケタ(、、)が違う。背後から、次々と転移してくる新生ミナジリ村の村人たち。

 当然、家族がいるのはダイモンだけではない。家族に自分の無事を知らせたい者、子供をミナジリに連れて来たい者は大勢いる。

 皆驚くも、それをただじっと見ている訳にもいかない。

 俺は町の外壁を土塊操作で歪め、穴を作る。そこを通って来た村人を全員出し、穴を塞ぐ。そこからはまたミックバスの出番である。


「ここから更に東……でいいんだよね?」

「あぁ、そこに首都リプトゥアがある」


 今回、村人を連れて行くのはリプトゥアである。

 当然、他の村や町出身の村人もいる。しかし、そればかりは回数を踏まなければならないのだ。従って、数の多い首都リプトゥアから向かうのは当然の選択だろう。

 そこでまた土地を買う事で、周囲の村や町に行きやすくなるのも目的の一つである。

 ミックバスに乗ること五時間、五十人程の村人は今か今かという様子で東の空を見つめる。といっても皆奴隷服のままである。いきなりリプトゥア国にこれだけの奴隷が入るのは人目につくし、いざ問答が起きては面倒だ。

 なので、リィたんに護衛を頼み、リプトゥア国でまた土地を買い、そこに転移する方法を選んだ。

 …………その最中(さなか)、俺はリプトゥア国の形態に驚いたのだ。

 貧富の差が、激しすぎる。

 痩せこけた国民が大半で、大人子供、男、女関係なく皆一様(いちよう)(やつ)れ、疲れ切っている。目に生気はなく、生きる希望を持っているであろう人間は、これまた一様に裕福そうだ。

 それらの人間の後ろをへとへとになりながら裸足で歩いているのは、やはり奴隷。


「……まさに奴隷大国だな」


 嫌悪感に溢れたその言葉を、俺は零してしまった。

 新たな土地に転移して来た最初の男――ダイモンは、俺の言葉を拾ってしまったようだ。


「昔はこんなんじゃなかった。新たなリプトゥア王は――」

「――やめとくんだ」


 俺は、ダイモンの言葉を遮る他なかった。

 先を聞きたくなかった訳ではない。誰が聞いているかもわからないからだ。

 不敬罪に問われ拘束なんて考えたくもない。ダイモンは再び奴隷コース一直線だろうし、俺もダイモンを失いたくない。

 それを理解してくれたのか、ダイモンはそれきり口を結んだ。


「おし、それじゃあ皆、一時間で戻ってくれ」

「「……え?」」

「あれ? やっぱり付いて行った方がいい?」


 俺は首を傾げると、ダイモンが困った様子で言った。


「……俺たちの契約だと、いつでも逃げられちまうだろ?」

「あぁ、そういう事か。助けが必要なら付いて行くけど、いらないんならここで待ってるよ。最悪、逃げる……っていうか、この町でまた暮らすって人がいるなら、それはそれでいい」


 皆がざわつき、顔を見合わせている。


「……アンタ、お人好しって言われないか?」

「あまり言われないが、自覚はある」


 俺がそう断言すると、村人たちは苦笑する。

 ……まぁ、俺が村人でも、この国に残りたいなんて考えないだろうけどな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一時間後、それはもう見事な程に、全員が集結していた。

 村人の数は倍以上に膨れ上がっていた。

 やはりそれは、ミナジリ村への移住のため、家族を説得した村人がいるからだろう。

 中には当然、出稼ぎをしてくると伝言を残した者もいるはずだ。

 しかしおかしい。


「……あれ? ダイモンは?」


 そう、罪人奴隷だったダイモン以外の全員が集結していたのだ。

 俺が聞くと、村人の一人の青年が手を挙げる。


「た、多分……逃げたんじゃないと思います」

「詳しく聞かせて」

「あ、あいつの家は近所だったんだけど、僕がここに戻ろうとする時、あいつ、まだ子供を探してるみたいだった」

「………………つまり、見つからないって事か」


 俺の推測に、青年はコクリと頷く。

 直後、けたたましい音が鳴ってドアが開かれる。

 そこには、悲壮感溢れるダイモンの姿があった。それは最早、絶望という言葉が一番似つかわしい程に。

 やはり、見つからないのか。


「娘が…………コリンが……!」


 その場で膝を突き、涙でくしゃくしゃになったダイモンの顔。

 俺は腰を落としてダイモンに聞く。


「どうした……?」

「コリンが…………奴隷にっ……!!」


 なるほど。最悪が最悪を呼んだか。


「リィたん、悪いけど皆と先に帰っててくれ」

「ほぉ……」


 ダイモンの項垂れていた頭が上がる。


「助けて……くれるのか……?」

「成り立てほやほやの村長で助けになるならな」


 ダイモンの顔が明るくなるも、俺の心にはほんの少しの不安もあった。

 更なる最悪――ダイモンの娘コリンが既に売られていた場合、俺が助けられる手立てはあるのか、それともないのか。そう、それだけが不安だった。

 でもまさか、まさかそんな事になってる訳…………ないよな?

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