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破滅という再生

 ラストっぽい名前ですがラストではありません。

 扉の先はより大きな広場、否、場所のイメージならば玉座の間が正しいだろう。

 中央に玉座があり、その後ろに光に包まれた水晶のようなものが見える。

 帝国の黒き竜。

 一目敵を認識した瞬間にそれを悟った。

 同時に、大きすぎる疑問が残った。

「なぜ、といいたそうだな」

 玉座に座る黒い髪の男。圧倒的なまでの魔力を保有しているのがここからでも分かる。

「答えるならば、お前が我を殺したからだ。刈谷慎吾」

 意味が通らない。なぜあの場所で死んだこいつが今ここで神なんてやっているのかがわからない。

 あの世界と天界は関係のない世界だ。天界はこちらに干渉できているがあちらには干渉できないのではないか?

「お前に殺されたあと、我の魂はその場にとどまった。お前はそこで何をした?

 ―――そうだ、お前はそこでそのままのんびりと魔法陣を書き自分の世界へと渡った。そのとき我の魂もともにお前の世界に飛ばされたのだよ。

 あの時はびっくりした。まさか魂になっても魔術の影響を受けると思っていなかったからな。

 我はそのままお前についていた。覚えているだろう?初めてナディアにあったときのことを。あいつはお前を見るために襲ってきたのではない。我を滅するために現れたのだ。

 まさしく、我はお前の首元に突きつけられた天剣によって魂を滅され、消えるはずだった。

 だが、ここでナディアとやらの誤算だったのだろうな。我は天使として転生するはずだったのだが、その強すぎる魔力によって天使ではなく、神として生まれ変わった。

 ナディアが二度目お前の元を訪れたのはお前を天使にするため。我のように強すぎる存在になるとそれを倒したものが戦えば加護を得られるからな。

 つまり、別にナディアはお前の中の悪魔を知ってもいなかったし、もともとやつはお前の世界を救うためにお前を殺そうとしたのだ。

 ナディアを殺してくれて助かったよ。やつ以外のものは簡単に闇に染まった。お前の世界を征服し、我の復讐のために動いてくれた。まあ、世界の征服などどうでもよかったのだがな」

 ここまで聞いて、悟った。確かに、ナディアは天剣を持っているんだから僕のあがきは無駄だったはずなのに帰った。いつでも殺せるとしてもそれでは説明がつかない。

「まあ、あのタイミングで出会ってしまったことはナディアのミスだな。とりあえず使える部下をそろえようとしていたんだろう。始めからお前が相手だと分かっていたらもっとしっかりとした装備をそろえただろうに」

 帝国の竜は立ち上がり、おもむろに両手を開いた。

「こい、精霊たちよ。わが糧となれ」

 その台詞と同時に目からは大事なものが失われ、視界が狭まった。

「ふむ、概念霊か、なかなか強力なものを持っているとは思ったが、これは確かに使える」

 食べられたのだ。いま、ラプラスの悪魔は。

「さて―――」

 そういうと“目”を開き、

「―――始めようか」

 一瞬で距離をつめてきた。


 両手から繰り出される致死レベルの攻撃をすべて両手の剣ではじき、そらす。

 右。

 上。

 足払い。

 先ほどのたたかいのような反射神経は見えない。当たり前だ。見えるまでの速さが違うのだ。

 次々と襲ってくる攻撃をそらし、砕けた剣の代わりを錬金ですぐさま作り、見切れない攻撃に耐え続けていた。

 その動きはいつしかの焼き回しだった。

 攻撃は効かない。一撃一撃こちらの身体はひび割れ、欠けていく。

 互いの攻撃はぶつかり合うたびに火花を散らし、映像として子供が見れたら神話やアニメ、英雄伝のようだと思うに違いない。

 だが、それらと大きく違う点があった。

 刈谷には一発逆転につながる切り札がない。

 前回のような隠された力の解放のようなことはないし、むしろ力は奪われていた。

 剣が砕ける。それを予測してすでに作り上げてある剣を構える。

 剣が砕けるたびに刈谷の身体はその金属片で傷つく。

 素手で剣を殴る敵は傷一つ負わず、なおも刈谷を殴り殺そうとしている。


 ―――願いをここに


 詠唱を心の中で唱える。

 叶えたい願いに向けて。


 ―――我はここに

 全てを悟り、全てを終えしもの

 全てを忘れ、全てを始めしもの


 怒涛のような攻撃は烈火のごとき剣に防がれる。

 だが、それも長くは続かない。


 ―――全ては無より始まり、全ては無に帰す

故に、我はどこにも有らず


 一撃ごとに防御はおろそかになり、とうとうこぶしは左肩を掠めた。


 ―――願いをここに


「―――っ痛!」

 左の剣を落とす。その隙に左のほうへと5連続攻撃。


―――我はここに

 全てを悟り、全てを終えしもの

 全てを忘れ、全てを始めしもの


 その全てを準備している魔術を除いた量の半分を費やして守る。

 このままでは詠唱が終わる前に体が死ぬ。


 ―――全ては有より生まれ、全ては有に死す

 故に、我はここに有る


 左の剣を再び作り、明らかに鈍くなった剣戟で体を殺させないように守る。


 ―――相反する二つの詩を合わせ……


 出来上がる魔術のために魔剣儀を放つ。

「―――魔剣技 陽炎―――!!」

 残しておいた体力を使い、今までの動きでは考えられない俊敏さで敵の拳を払いのける。


 ―――今ここに全を一とし、一を零とし、零より全を生み出す


 瞬間、あらゆる魔術的な存在は消え、悪魔も消え、黒竜の魔力も消え、全ての魔力はその存在をこの世界から消した。


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