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悪魔という知識

 願いをここに

 我はここに

 全てを悟り、全てを終えしもの

 全てを忘れ、全てを始めしもの

 全ては無より始まり、全ては無に帰す

 故に、我はどこにも有らず


 この身の魔術特性は知識。悪魔に引き寄せられたところも多いだろう。だが、全てを知ったものは知っているがゆえに答えのない謎に悩むのだろう。


 願いをここに

 我はここに

 全てを悟り、全てを終えしもの

 全てを忘れ、全てを始めしもの

 全ては有より生まれ、全ては有に死す

 故に、我はここに有る


 そう、もはや悩むことなどないはずなのに悩む。知っているがゆえに。知らないことがないがゆえに。どうなるかが容易に思いつくがゆえに。

 どちらになったとしても後悔する。この世でもっとも大きな謎は……。


 相反する二つの詩をあわせ、今ここに全を一とし、一を零とし、零より全を生み出す


 この世に生まれた意味。そんなものはないのかもしれないし、もしかしたらとても簡単なのかもしれないし、意味を求めてはならないのかもしれないし……おそらくは全てだ。

 そんなものは求めるものではない。自分を知ることこそがもっとも難しい問題なのだから。




 魔術は出来上がった。もうこれを発動したら後戻りはできない。これはもはや自衛ではなく侵攻。これを行った瞬間天使との戦争が始まるだろう。

 ―――そんなことはすでに分かっている。

 魔術を起動し、世界を渡る感覚が身を包む。

『これが最後だといいな。お前に戦闘は本来向かない』

 悪魔はそうつぶやくが、

『そうでもないさ。ある意味では僕ほど戦闘に向く人間もいまい。もう人を殺したところで何の後悔も抱かないのだから……』

 天界に引き寄せられる感覚。戦場が呼んでいる。これが最後の戦いであるように願った。



小高い丘の上、目指すは世界の記録の破壊。一対何の戦いかはわからない。だが、ここにきた以上戦いは始まっている。

 四方八方より魔術が襲い掛かり、それをすべて覇王で叩き落す。

 術者を見つけ出し、襲い来る数多くの魔術を避けて術者の男を殺す。

 肉をえぐり、骨を砕く感触が手に残るがそんなことは関係ない。

 血が噴出すがそれには一瞥のやらず、剣についた血を払い、次の標的へと距離をつめる。

「―――――――――!!」

 なにやら叫んでいるがそんなことはどうでもいい。今の僕は機械だ。拳銃の弾といったほうが正しいかもしれない。与えられた目的をこなす弾だ。

 飛び交う魔術は収まることを知らず、しかしその勢いは徐々に衰えていった。

 あたらない魔術は基本無視、あたりそうなものだけを覇王で打ち落としていく。

 女を切り裂く。これでやっと半分。魔力はまだまだ余裕がある。

「――――――! ―――――――――――!!!」

 叫ぶ声は全て言葉として認識されない。認識しない。そんな余分な機能は捨てている。

 ある天使はいった。お前の剣には圧倒的に自分というものがない。と。

 ある天使はいった。お前の魔剣技は魔力さえあれば誰にでもできるようだな……お前に、自分の技はないのか?と。

 これらに対する答えはYesだ。ああ、そのとおり。それ以上でも以下でもない。だってそうだろう。これらは全て真似事に毛を生やしただけだし、その基のことを考えれば誰にでもできる。

「―――――――――――――!! ―――――――――――――――――――――――!!!!」

 ―――標的の数は残り十弱。もうここでの戦闘は終わるだろう。

 そう、向かってくる敵を切り伏せつつ考えた。

 敵の魔術は初めのころの勢いをなくし、もはや覇王を使うまでもない。

「―――――――! ――――――!!!」

 だが、声は小さくならず、まだほえ続けている。

 残りの天使を切り裂き終えたところでようやくその声の正体に気付いた。

「なんだ、精一杯叫んでいるのは僕自身じゃあないか……」

 本心で、おそらく本心で僕はこの戦いを嘆いているのかもしれない。

 叫びの内容はわからない。だが、きっと、精一杯の自身の否定なのだろうと予測したとき妙にいやな感じがした。


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