第3羽
「君達が飛ぶには・・・・」
エイザブローは、グラフを指さしながら説明を始めた。
「離陸時は、速度が低いから、胴体の発生する揚力は、あまり期待できない。そうなると、君達の小さな翼を活躍させないといけない。」
「エイザブローさん。翼じゃなくて、フリッパーだよ。」
北の浦のハゲが、指摘しました。
「そうだね!君達の翼には、フリッパーという素敵な名前があったね。」
エイザブローは、ペンギンが、誇り高き鳥であることを忘れていました。誇り高いから、「飛び方を教えて」とは言わず、「飛び方のヒントを下さい。」と言ったのです。
「で、フリッパーを迎え角7度で固定し、50mを10秒以下のタイムで走れば、離陸が可能なはずだよ!」
2羽のペンギンは、目を輝かせて話を聞きました。
北の浦のヒゲが、質問しました。
「フリッパーの迎え角が、7度から外れたらどうなりますか?」
エイザブローまじめな顔で答えました。
「7度より小さいと、離陸速度を速くしないといけません。7度より大きいと、フリッパー表面から気流が剥離して、失速してしまいます。フリッパーの曲率を自由にコントロールできればいいけど、今は、7度で確実な離陸を目指した方がいいと思う。」
ペンギン達は、エイザブローの話を聞くと納得し、エイザブローの分度器でフリッパーの角度を確認しました。
エイザブローは、ストップウォッチを構えました。
「北の浦のハゲ、行きます!」
北の浦のハゲが、スタートしました。
ペタペタペタペタ
絶望的なまでに遅い、北の浦のハゲ。50m走り終わった彼は、みんなに聞きました。
「今の何秒?9秒くらいかな?」
エイザブローは、答えました。
「43秒。あと33秒タイムを詰めないと。」
2羽のペンギンは、青ざめました。そんなの無理だ!
しかしエイザブローには、秘策があるようでした。