第2羽
エイザブローは雪面を使って、毎日2羽のペンギンに勉強を教えました。
物理学
化学
生物学
機械工学
電子工学
日本史
世界史
英語
ドイツ語
フランス語
等々・・・・
2羽のペンギンは、人間を遙かに上回るペースでこれらをマスターしました。
ペンギンは、本来非常に好奇心のある生き物なのです。しかし過剰な好奇心は、過酷な自然の中での生活において、命を落としかねない危険なものなので、自然の動物は、好奇心を抑えて生きています。
ですが2羽のペンギンは、これらの知識が、自分達の命を脅かすようなことがない事を知り、ダイソンの掃除機のように新しい知識を習得していったのです。
あらゆる知識を教えたエイザブローは、次のステップに移りました。
「北の浦のハゲとヒゲ君。君達は、これまで学んできたことから、「ペンギンは飛べない」という俗説をどう思う?」
北の浦のハゲが答えました。
「両翼の面積が小さいので、十分な揚力が得られないと思います。」
北の浦のヒゲは、続けました。
「ペンギンの体を、胴でも揚力を発生させるリフティングボディと見なせばいいかもしれません。でも、イルカが泳ぐ位の速度がないと、離陸できないでしょう。」
エイザブローは、再び問いかけました。
「2羽とも、ちゃんと計算して答えを出したかい?概略計算でもいいよ。」
2羽は、答えました。
「いいえ。なんとなく・・・・」
エイザブローは、ニコリと笑って言いました。
「それはいけない。判断する時は、感覚で行ってはいけない。計算して、資料を照らし併せて、不確からしさを最小限にしてから判断すべきです。さて、皇帝ペンギンの飛行についてだけど・・・・」
エイザブローは、雪面に微分方程式を書き始めました。
そして概略のグラフを引き、条件を定め、解の範囲を求めました。エイザブローが解く数式を見ていた2羽のペンギンは、丸い目を更に丸くして見ていきました。
「その表情は、私の解を既に理解したみたいだね。そう、世界最大のペンギンたる皇帝ペンギンは、飛行が可能である。ましてや、小型のアデリーペンギンなら、零戦みたいに飛べるだろう。」
2羽のペンギンは、エイザブローを見て言いました。
「私達に、飛び方のヒントを下さい!」