第20羽
初めの1週間で、6羽のペンギン達は、数百m程度の距離を、高度1mで飛べるようになりました。教官達(カニンガム、トーン、ラモン)は、練習生に地面効果(低空飛行をすると、羽の先端から出る渦が出来なくなり、空気抵抗が減る現象)を教えました。
次の1週間で、6羽のペンギン達は、高度1000mで1時間旋回飛行をすることが出来るようになりました。教官達は、練習生達に上昇気流の見つけ方と、それを利用した長時間滞空術を教えました。
次の1週間で、6羽のペンギン達は、編隊飛行で楽に飛行できることを知りました。教官達は、練習生達に適切なフォーメーションで飛行すると、互いの翼の先端から出る渦の上向きに流れる気流で、楽に飛行できることを教えました。
次の2週間で、6羽のペンギン達は、星を頼りに夜間飛行が出来るようになりました。教官達は、練習生達に南半球と北半球で、基準になる星が違うことも忘れず教えました。
次の3週間で、6羽のペンギン達は、目隠しした状態でも高度と進路を維持して飛行できるようになりました。教官達は、練習生達に退化したペンギンの中の「体内コンパス」を目覚めさせ、気圧の変化をくちばしの根本の柔らかい所で感じ、高度を知る術を教えました。
8週間の飛行訓練で、6羽のペンギンは、高度な飛行を習得しました。
6羽は、自信満々です。
ガチャポコじいさんの家で、6羽の教習生と3羽の教官達は、紅茶を飲みながら談笑していました。
「これで私たちは、一通り飛行術をマスターしましたし、ケープタウンやホーン岬辺りまでなら、飛んで行けそうですね!」
コンが言いました。
するとウィルバーが、腹の底から笑った後、
「何を言っているんだ!君達は、まだ飛行術の長い階段の10段程を登ったに過ぎないんだよ。」
そしてオービルが、
「そろそろ彼が南極に来る時期だ。彼に特別講師をしてもらおうか。」
ウィルバーとオービルは、ニヤニヤ。
教官達も、ニヤニヤ。
しかし自信に満ちた6羽に、動じる者は居ませんでした。