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第10羽

 マリアは、続けました。

「第2の計画は、未来のペンギンにゼンザブローさんの贈り物届けるため、このシャイアン山に、人間から学んだすべての技術と知識を修得した3羽のペンギンを閉じこめることです。」

「そんなことしたら、窒息してしまう!餓死してしまう!」

 ヤジが飛びました。

 マリアは、答えました。

「それは大丈夫。洞窟の中は、飛行可能なほど広く、秘密の吸気口があるから窒息しない。また、洞窟の底には、海に続く穴があるから、そこから魚を取りにいける。」

「そんな厳しい任務に就くペンギンが居るのか?」

 レオニダスが1歩前に出た。

「紹介しよう。人間の英知を備えた3羽のペンギン達を!」

 レオニダス達の後方から3羽のペンギンが現れました。

「皇帝ペンギンのカニンガム!」

「ハイ!」

「アデリーペンギンのトーン!」

「ハイ!」

「ジェンツーペンギンのラモン!」

「ハイ!」

 いずれも、まだ幼鳥でした。どよめくペンギン達にレオニダスが話始めました。

「この3羽は、いずれも高い技術と知識を備えたペンギン達だ。彼らは、目をつぶってスプリットSをこなし、最低4カ国の人間の言葉を操り、円偏波を利用したレーダーを設計・製作する技術を持つ。エイザブローさんに匹敵するレベルだろう。」

 ペンギン達は、驚嘆の声を上げました。

「彼らが、この山の中で生きながらえている間に、彼らの知識を求めて、秘密の通気口や海に通じる穴から彼らに会いに来るのが早いか、彼らの生命の炎が消えるのが早いか、神のみぞ知るだ。」

 レオニダスの話を聞いたペンギン達は、戦慄した。そして、これからは普通のペンギンに戻らなくてはと、強く思いました。

 レオニダスは、3羽の幼鳥の頭をなでながら言いました。

「君たちには、死にも匹敵する厳しい任務を遂行してもらう。どうか、1日でも長く生きながらえて欲しい。私達は、君達の勇気と献身を決して忘れない。」

 マーガレットやマリアも幼鳥の頭をなでました。

 レオニダスは、大声で言いました。

「全能の3羽の幼いペンギンに、祝福を!」

「祝福を!」

 他のペンギンも声を上げました。

 そして、3羽の幼いペンギンを残し、他のペンギンは、シャイアン山の洞穴から出ていきました。そして、みんなで入り口を雪でふさぎました。涙を流していないペンギンは、1羽も居ません。

 作業が終わると、レオニダス達3羽は、皆に言いました。

「北の浦は、危険な人間が来始めている。皆は、もっと内陸に逃げるように!早く逃げろ!」

 他のペンギンは、皆内陸へ逃げて行きました。

 残ったのは、レオニダス、マーガレット、マリアの3羽。

 3羽は、北の浦のハンター達が居る氷原へ、完璧な編隊飛行で向かいました。そしてハンターの上空で編隊したまま宙返りをしました。

 驚くハンター達!

 そしてレオニダスは、ギリシャ語訛の英語で高らかと叫びました。

「我々は、北の浦の最後のペンギンである!アザラシにも劣る人間に、我々をしとめられるかな?」

 レオニダスの挑発に乗ったハンター達は、おのおの射撃を始めました。しかし、ペンギン用に持ってきた自動小銃の1発弾では、全く当たりません。

 ハンター達は、次に軍用散弾銃を持ち出しました。機関銃の様に連射できる恐るべき銃です。

 ハンター達は、方形に並び、ペンギン達に向け銃身を向けました。

 バッバッバッバッバッ!

 数百発のバックショット(鹿撃ち用散弾)がペンギン達を包み、ペンギン達の意識をミリセカンドの時間で奪い、3体のボロ布に変えてしまいました。

 こうして、レオニダス、マーガレット、マリアの命と引き替えに、仲間を逃がす時間を稼ぐことに成功しました。

 そして、この蛮行を8mmカメラで撮影した日本の観測隊員の告発で、南極における狩猟が禁止されることになりました。

 レオニダス、マーガレット、マリア。

この3羽のペンギンは、北の浦の、いえ、南極の生き物を救いました。

 

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