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欄干の少女

作者: 桜田桂馬
掲載日:2026/10/31

長良川の鵜飼の名所小瀬、鵜匠の館、足立家の横に赤い橋がある。

季節は春、心地よい川風が川下に向かって吹いていた。

川の左岸近くの橋の上で、私はそよ風を頬に受けて上流を眺めていた。

兄の助手席に座って、失恋の痛手の話を聞いてもらった後のことだ。

兄は仕事で近くへ。私はひとり休んでいた。


 ふと足元を見ると、小石があった。

なにげなく拾い、白い鉄の欄干を1回軽く叩いてみた。

 かーん

 かーん かーん と今度は2回叩いてみた。

 コーン コーン と2度、やや遅れて、遠くから音が帰って来た。

(そんなはずはない!)

はるか向こうの、右岸近くの欄干に

セーラー服姿が小さく見える。

私と同じように欄干に身体を預けている。


今度は少し、強く叩いてみた。

 かーん かーん かーん

 コーン コーン コーン

確かにそれは、返事に聞こえた。

(もう1度やってみよう。こっちを見るかな)


『おーい、帰るぞー』

突然、兄の呼ぶ声がした。

はっと、我にかえった。

自宅まで帰る車の中で、兄とは一言も口をきかなかった。


        -了-


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